九十二生目 棘地
夜があけたのかどうかもわからないが休息を終え……
ふたたび冒険を始めた。
"進化"のことは保留しておくとして……
魔王の言う通り"進化"に依存しない戦術をちゃんと練らなくては。
現状では例え爆発的な力を練り上げても私が耐えられない……か。
ネオハリーに"進化"するさいもよく考えると私自身の肉体を溶かし込むほどだったからなあ。
緑の植物園で採取しつつ。
そのまま別の建物へ。
何せ下への道が無かったからね……
泡の回廊を跳ねながら通り。
次のところは……
「ねじれのところに戻ってきたなあ」
「ここ、意外に降りるの大変なんだよね……」
「赤よりはマシって感じですよね……」
ジャグナーやバローくんと共にまた新たな地図をつくる準備をする。
外から入る部屋は当たり前だが正位置になる。
良い事にこの部屋に階段があるから下に行こう。
そうして探索と戦闘を繰りかえす。
とにかくパズルみたいに反転が大事な地形だから……
地形を把握して下に向かう。
さっきの進入位置からはいけなかったところに行けて……
階段をさらに降りて。
次の建物への道を見つける。
これを繰り返していくわけか……
泡の回廊を通って……
……うわ。
「「赤の遺跡だ!」」
[ついに来た]
私達が声を揃えてしまう程度に赤の遺跡に良いイメージはない。
当然相手たちもゆらりとその姿を表した。
笑顔の絶えない……つまりは牙をむき出している鉄塊じみた魔物。
細い腕が4本もある2足型の仏頂面な魔物。
老人のようなしわがれた顔を持ちながら目は黄色く染まり腕の先が杖のように石が埋まっている厚い服のような肉体を持つ魔物。
わざわざ聞くまでもないくらい害意を持っていた。
「来るぞ!」
「「ウオオオーッ!!」」
「また下への道だ! うおっ!?」
「もしかして、赤の遺跡は縦への移動がたくさん……!?」
「ハッ! それッ! もしそうだとしたら、効率良いのか悪いのか……!」
下へ行く通路から雷撃を放射してくるしわがれ顔の魔物。
ジャグナーが間一髪よけて私が剣ゼロエネミーを突っ込ませる。
続く他の魔物からの雷撃を吸収し……
突っ込んで回転し切り裂く!
刃をただ適当に回転させるのではなく……
的確に敵の急所や角度に振り込む!
「「ガハアッ!?」」
「みんな、今だよ!」
「逃げろっ!」
[急ごう]
「あわわっ」
「くっ」
アヅキが後尾を担当しとんでくる拳の光をガントレットでしのぐ。
痛いだろうなアレ……
とにもかくにもみんな急いで下へと降りた。
降りた先の部屋でももちろん魔物たちは敵として待ち構えている。
そしてやはり少し遠くに階段。
見える位置だ。
他の建物だと同じ部屋に上下への移動手段があることだなんてまずない。
快適な居住空間をガン無視した環境だが……
ここでは居住そのものは楽そう。
ただ激戦を広げてなければならないんだけれどね。
本当にこのままでは上からくるやつらから挟み撃ちだから……
イバラを階段がわに敷き詰めトゲを伸ばしておく。
さすがに敵もここまでされれば降りてこない。
目の前の敵に専念できる。
つまりこれを繰り返せば……?
この先もうまくいける保証はない。
それでも赤の遺跡で一気に下がれるのなら!
「これなら!」
補助をかけ終わったし地魔法だ!
[ランドホンス 広範囲の地面に地魔力の低い棘を生やす]
対象は部屋の床。
私の前から一気に床から床と同じ材質の棘が生える。
当然敵たちは串刺しにはならなくとも。
「ギャア!?」「ガッ!?」「ヌゥ!?」
「でかしたローズ!」
足を刺し崩れた身体を刺す。
威力が恐ろしく高いわけではないが十分。
トゲはすぐに引っ込みジャグナーが駆け近場から大きく振りかぶって殴る。
アヅキも後尾から前に出て指先を伸ばし……
「行け!」
「ピピッ」
アヅキの影から飛び出す存在は霊体。
キトリだ。
キトリは翼を広げまっすぐ飛んでゆき……
空気を取り込んでどんどん膨張。
そのまま相手が固まっているところに突っ込んで……
「げっ!?」
「ピピイ」
接触とともに爆発炎上。
「「ブアァ!?」」
まとめて吹き飛んだ!
あっちはあれで良いとして。
アヅキ自身も近場の相手と殴り合っている。
集中して行動力回復につとめているバローくんと魔王を運んで行かねば。
トゲなしイバラなら持てるから……と。
「いくよ!」
「あ、うわっ!? はいっ」
[これは楽]
こじ開けた道を通してもらう。
ふたりを運んでいけば……
すぐたどり着けるはずだ!




