八十八生目 天地
天井に降りるという初めて体験することをした。
天井側は当然本来誰かが乗ることは想定されていない。
装飾も多くまた光源である魔光石も置いてある。
魔力反応で部屋内を明るくしていてくれるから気をつけないと。
とりあえず上を見上げとげなしイバラを伸ばす。
廊下とつなぐ扉まで伸ばし……
さらにある程度絡ませ頑丈にする。
ピンと張って安全チェック。
向こう側はジャグナーが抑えている。
「どんどん降りてきてー!」
「僕も行きますー」
[自分も行こう]
「主の手を煩わすまでもない、そちらに飛んでゆきますとも」
バローくんは翼があるものの飛ぶと疲労しやすいらしいのでイバラを伝って軽々降りてくる。
魔王はゆっくりと順に降りてきていた。
……今更ではあるけれど四肢が離れているのになんで身体を支えられるんだろう。
アヅキは自分で飛んで来た。
さてあとはジャグナーだが。
向こうに何か引っ掛けておける場所なかったんだよなあ。
「大丈夫ー? そっち行こうか?」
「いや、大丈夫だ! こういう時のやり方があるんだ」
ジャグナーのほうを"鷹目"で見てみよう。
ジャグナーは肩を回し……
イバラを床に置き。
「そらよっ!」
腕の鎧が盛り上がった!
さらに分離をして……
イバラの上に飛んでいった。
鈍く重い音とともにもイバラを潰すかのようにそれが乗る。
明らかにとても重そう。
何度かジャグナーが引っ張るがびくともしない。
そうしてジャグナーは壁に足を向けつつイバラを持ち……
滑り落ちつつ落下していった。
そのままきっちり床にまで降りる。
「うし」
「おお、すごい」
「主、行きましょう……む?」
イバラを回収して……と。
だがアヅキも気づいたらしい。
天井に住まう先住民に。
コウモリ魔物たちがそこに立っていた。
しかも私達は騒がしくするからか次々と飛び始める。
しかし向きは私達と真逆。
それもそうだよねコウモリは天井にぶらさがるし……
というより明るめの部屋なのになぜいるんだ。
「キキッ、うまそうだ!」
「新鮮な血だ!」
「ああもう、上下反転しててよりうっとうしい!」
相手が思ったような軌道にこないせいでジャグナーもアヅキも追い払う腕が空振る。
ここは私がなんとかしたほうが良さそう。
別につよくはないが非常に邪魔という立ち位置だしね。
光魔法"ターゲット"で当てる相手をしっかり見定める。
当たる対象とそうでないものを魔法でわけるのだ。
そこからの……"針操作"。
全身から針を生やしてから飛ばす!
針たちは一斉に飛散し……
あらゆる方向にいるコウモリたちを串刺しにする。
「ギッ!?」「ビャッ!」
「痛あ!?」「ヒエッ」
「うーん」
やはり数が多い。
針ってバンバン出せるけれど火力はそんなにないんだよね。
まあ使いやすいから本来はもっと使っていった方が良いのだが。
というわけでさらに生やしていく。
針が複数本刺さったぐらいでは怯むだけのはず――
「「ウアーッ!」」
「――あれ」
刺さったコウモリたちが軒並み倒れた。
……コウモリって結構脆いのか!?
いやでも魔物だから結構大きめのサイズだし……
それとも遠隔攻撃にスキルによるダメージ加算が出来るようになり……
その影響ですごい火力がでるようになったのか。
どちらにせよこれはありがたい。
そうれもう一回発射!
数が減って絡んできたのは一通り落としたので……
遠くから迫ろうとする相手に放っていく。
「いやあっ!」
「ぐわあっ!?」
「は、早い……!?」
一通り針が刺さり……
上に落ちていく。
まあ私たちが逆さなだけなんだけれども。
「なんというか……」
「えげつないほど強いですね……」
[もうそれだけで良いんじゃないか]
「いや、さすがにそこまでは……」
なんというか……
うん。
針ひっこめても大丈夫そう。
結構針がつよく扱えることがわかったので。
相手を散らしつつ扉をくぐり……
またねじり廊下を通る。
そうすれば今度は天地が合っている部屋に通じた。
なるほど私達のむきがまた変わったからか……
「少しずつ理解はしてきたな……仕組みはともかくだが」
「主、そういえば先程の部屋は外に出れそうな壁がありませんでしたか?」
「うん。けれどね、反転したままでは外に出られないんだ」
「そんな面倒な仕様があるのか……」
まあ逆さまのまま別のところに行ったら……
重力とかどうなっちゃうかわからないからね。
反対のママになるのは困る。




