八十四生目 錫杖
綿毛たちが猛毒のヘドロ魔法を放ってきた。
イバラを展開しちゃんと自身に毒を力として巡らせ"疲れ知らずの魔毒獣"として発動。
"千の茨"で毒たちに向かってイバラを伸ばしていく。
(片っ端から落とすぞ!)
細かい調整はドライに任せ魔法たちをイバラで受ける。
意外に重い……!
けれど受けきれないほどじゃない。
「ウッ……よし!」
「行きます」「おらーっ!」
「備えます!」
[みんなすごい。準備する]
アヅキとジャグナーが前に出てバローくんが魔法を唱える。
魔王は応援で踊りつつも道具をあれこれと選んでいるようだ。
今の弱体化した魔王に出来る事……あれかな。
私は毒を受けたイバラがやけに重いのに気づく。
これは……もしや単なる毒だけじゃなく行動阻害の重りのようだ!
危なかった。剣ゼロエネミーあたりで受けなくて。
イバラを自切している間にも綿毛たちをふたりは光をつけた攻撃で蹴散らしていく。
体重がすごく軽そうな見た目どおり吹き飛んでいく……が。
「ちっ、手応えがねえ」
ジャグナーが空高く飛んだ綿毛を見上げる。
その張り付いた顔は驚いているようにも見えたものの明らかに平気そう。
そして……小さなゴミみたいに見える弾丸をいくつも魔法で生み出し。
アヅキに向かって発射してきた!
「頼んだ」
「オラッ!」
しかしジャグナーが恐ろしい速さで移動し弾丸たちを全て受け止める。
岩の厚い鎧が身体から生えているジャグナーにとってこの程度の攻撃は身体に響きすら無い。
これがさっき使われた武技の力だ。
魔法弾が魔王の方やバローくんへと飛んでも一切合切ジャグナーが跳んでゆき受ける。
オーラが消えるまで任意の対象……つまり味方への攻撃を引き受けるのだ。
さっき私が弾いたヘドロは私から攻撃相殺に持ち込んだので例外。
アヅキがガントレットでひとつずつ潰そうとしているがなんだか実体がひとつの固体ではないらしくぐにゃりと変化し潰れてもちぎれてもまたすぐ再生する。
他の魔物も近づいているからあまり時間かけていたくはないな……
アヅキは背から錫杖みたいな杖を取り出す。
あれはアヅキの力そのもの。
同時に風の魔力で出来た扇を生み出し……
「散れ!」
大きく仰げば暴風が。
光の乗った風は綿毛たちどころか近づこうとしていた敵たちも巻き上げようとしていく。
これだけでかなりの痛手だろうが……
さらに錫杖で鳴らすようにすると雷撃が風に乗り一気に巻き上げる!
突然の雷撃が一体に広がり私達は避けて周囲に光と共に広がる。
私たち味方はちゃんと影響がないから魔法の回避指定してあるのか。
雷撃と風圧により一気に綿毛たちが吹き飛んでいく。
よし。たくさんいたがいまので一気に生命力が削れたはずだ。
風が止んでみんな地面へ落ちて来る。
「そこお!」
けれど数が多い。
そのために削りきれている相手ばかりではないから……
バローくんによる追撃魔法。
杖から空に向かって光が放たれ……
空に光の玉が出来る。
さらに光の玉が崩れだし……
空から極光の輝きがいくつものビーム降り注ぐ!
あたりにいた魔物……特に白綿毛たちに大きくあたりそのたびに軽く爆発していく。
よし。数が減った。もちろん死にはしていない。
「その杖の使い心地はどう?」
「最高ですよ!」
バローくんは多くのカスタムを得てまるでおニューになったかのような杖を誇らしげに掲げる。
私の昔ロゼハリー時胸にある石……
それを杖のコアに使っていた。
使っているのは欠片で全体を使わなかったのはクセが強すぎるかららしい。
私自身のコアみたいなものだから他者への適応力が低い。
さらに杖のコアには単純よりも組み合わせたほうが強力らしく私のコア効果がなるべく増幅するように配合した合成石らしい。
「それはよかった……よ!」
風が収まったのを見て他の魔物たちが突っ込んできた。
悪い妖精とリビングアーマー達による挟撃。
正面はふたりが抑えてくれるから私は背後へと跳ぶ。
「とにかく順応反応がすごく手に馴染むというか、今みたいな混合魔法を使用したさいに拒絶性の反応事故爆発や、魔力回路の効率性がよくて、前よりも強烈な出力を引き出してくれます」
「よかったー、使用拒絶弄呪や加速性漏洩魔力が起きてしまうか不安だったよ」
「な、何語だ……?」
ジャグナーはまあ……気にしなくて良いことだよ。
簡単に言うとちゃんと使えてよかったってことだし。
背後に回り込んできた悪妖精たちにイバラを振るう。
イバラは鋭いトゲの生えたムチのようにしなり光をまとって相手をうちはらう。
相手たちは予測困難な動きに翻弄されて吹き飛ばされていた!




