八十生目 写真
チョコが好評だった。
「そうだ、もらってばっかじゃだめでしたね」
「……うん、パパ」
「おっと、忘れるところだった!」
……うん?
みんながおもむろに自分の道具入れを探り出す。
そして……
「はい、プレゼント!」
「おーれも!」
「たくさんもってきたよーみんなのぶんもあるからねー」
……特に私中心へたくさんのプレゼントが集まってきた!
あわわっ!
こんなにたくさん!?
「あ、ありがと……」
驚きつつもうれしい。
だから受け取ろうとして……
脳裏によぎるのは歪んだ信仰の果て。
果たして私はこうで良いのだろうか。
ただの個人間じゃなくてもう神とのやり取りなのだ。
どこかで常に危機感を持っていなくてはならない。
「ローズ?」
「……私は、これらを受け取っても特別な返しとかはしない。みんなも私に変な話だけれど、祈りをかけたりせず、ただ個人として接してほしい。それだったら、受け取れるから」
「なるほど……」
「よくわかんないが、今までどおりでいいんだろ?」
イタ吉が笑いかけてくることにうなずく。
そう……
暴走した集団になることが最も恐れることなのだから。
「うん。私は神様だなんてたいそうな肩書を背負うことになっちゃっているけれど、それでみんなに変な教えとか壊れた宗教とかをしたくはない。ちゃんと仲間で……友達でいよう」
「あったりまえだろ!」
「ローズ様……うん、ローズ様に余計な心配かけないように、僕もはりきります。ね、クワァコロロ」
「ん」
みな各々好きなように返事しそしてイタ吉とかたぬ吉とかにいたっては体をギュッとくっつけてくる。
特に依存しがちなドラーグはあえて私と対等に向き合いそしてコロロと身を寄せる。
あたたかい……
みんながしっかりしていても私が持っていかれたらだめなのだ。
ただでさえ持ち上げられがちな私……
変なムーヴがアノニマルースで流行らないようにしっかりしないとね。
そしてプレゼントを受け取った。
「みんな、ありがとう!」
その後。
受け取ったプレゼントの中身は手作りのものや珍しい品だったり……
中には虫の脱け殻がはいっているのもあった。
誰だこれを入れたの……まあ単なる脱け殻ではなく塗料として加工できるが贈呈品としてはどうなんだこれ……
さらにホルヴィロスから何枚か写真が来ていた。
完成でめっちゃ喜んでいたところ撮られている……
むしろよくここまでタイミング合わせられるなと感心してしまう。
こんにちは私です。
今日は九尾博士家にいます。
もちろん理由があって……
「こりゃ、ガチモンじゃな」
「そうでしたか……」
共和国冒険者ギルドのピヤア対策や宝石剣を担当するおえらいさんと……
当のピヤア……つまりカエリラスのトップとも言える人物ラキョウ。
そのふたりが昔手を結んでいた写真の検査結果だ。
「もちろんワシは天才じゃから100と断じてもよいのじゃが、一般的に感性を合わせると99.98未加工じゃな。仕事柄昔から悪質な証拠で邪魔してこようとする奴は絶えなくてな、婆さんが頭来て設計したものをワシが作ってあったから、加工した写真なんぞほぼわかるからの」
「開発盗用とかスキャンダルでの陥れですか……」
九尾博士敵を作りやすそうだもんな……いろんな意味で。
まあおかげで助かったけれど。
「こんな写真をチェックしなくちゃならんとは、お前さんまた面倒な事に巻き込まれおるのか。まったく人間界は下手に関わるものではないぞ」
「九尾博士も外の世界はいろいろ物騒だから気をつけてね。多分ほとんど情報入ってきてはないと思うけれど……」
「ま、何かあってもよそのことは知らん。ワシの開発を邪魔しない限りな」
多分九尾博士は私が神になったり魔王関連のあれこれもほとんどしらないか覚えてないだろうな……
いかにも興味なさそうだし。
私が神になったという申告をしないのは実験材料にされそうだからだけど。
ダカシから復讐の話あたりは聞いているからわかっていてもなんかそういうことがあったという程度だろう。
「それにしても、どう見るかなこの写真……加工されていないと聞いて、余計迷うことになってしまった」
「なんじゃ、この写真にどんなあくどい意味があるかはしらんが、加工を疑うような状況の場合大事なのは、写真に写らない部分じゃろ」
写らない部分……?
写真を……握手している写真に写らない部分。
そうか。
「そう言えば、これは誰が撮っているんだろう……?」
「うむ、大事なのは、これは誰がとってなぜそいつが持っていたかということじゃな」
これを撮るメリットは共和国冒険者ギルド側はほぼない。
そもそも写真を提供してきた相手も敵対しているだろうし。
そして政府自体もこんなの撮ったら即反撃に出られる。
しかしそういう話は聞かないので……
つまりはピヤア側か……または得体の知れぬ第三者機関。
少し皇国冒険者ギルドのツテも考えてみるか……




