七十九生目 紅茶
チョコが出来上がった。
私の前には冷え固まり型から外されたチョコたち。
みんなツヤツヤとしていてとても美味しそう。
しかもこれで解毒済みでみんな食べられる。
すごく色合いも安定している。
失敗するとまだらになったりそもそもボコボコになったりはするが……
見た限り均一。
「やったー……!」
「わー! これ食べていいのかい?」
「いや、私達は……こっちが先」
そして型から外されたチョコたちはキレイなものだけではない。
どうしても詰める過程で多少は上側に溢れた部分がある。
その端詰め合わせ。
「ローズがくれるものならなんでも! もらうよ!」
ホルヴィロスがツルでチョコを受け取る。
ひと口そのチョコかけらを食べると……
目を見開く。
「お……! おいしい! ローズの作ったもの、最高……!」
「はいはい……お、なかなかうまくできた」
ホルヴィロスが震えながら話すだけで明らかなオーバーリアクションなのがわかる。
私も自分で作ったチョコかけらを食べる。
なるほど……口の中に広がる甘み。
チョコの苦味と独特のかおりがベースなのにミルクな甘みが広がっていく。
これに想像以上の手間がかかってたくさんのものを溶かし込んだからなあ。
それを思うと心がおいしい……
すっと溶けてしみる。
「いやあ、ほんと、ローズのチョコ最高、ほんと」
「おいしいね。さて……ラッピングしなきゃ」
ホルヴィロスがやめられない止まらないと言った様子で食べているので……
しっかり作ったものたちまで食べられないようにしよう。
梱包作業だ。
「うんうん……うん? こっちのは……あ! 違う。これローズ……!」
「ああ、そっちの型のは確かに違うね」
ホルヴィロスが別の場所に有るチョコにも気づいたらしい。
そしてひと口食べてわかる。
その違いは……
〜〜〜〜
「ピピッ」
「よし、よくやった。主よ、影ながら応援させてもらいました。私が直接手をかさずとも良いと、信じていましたぞ……!」
〜〜〜〜
夜。
家では手狭なのでみんなを呼んで食堂に集まってもらった。
都合がついたのが……
ハックにたぬ吉。
イタ吉とユウレン。
ドラーグにアヅキ。
それとウロスさんにカムラさん。
ジャグナーにホルヴィロス。
コロロにナブシウそれとグルシム。
多数呼んだもののとりあえず都合がついたのはこんな感じだ。
蒼竜は呼んでいない。
「今日はみんなに、ハッピープレゼンター・バリンティということで、お菓子を作ってきてみたよ!」
「「やったー!」」
ワイワイと場が盛り上がっていく。
まあ何名か私と会っているしそもそも今日呼んだ時点で配布があるのはわかるよね。
ちゃんと期待通りだったらしい。
私はイバラをたくさん伸ばしつぎつぎと袋の中へ突っ込み……
中からキュートに飾り付けしたリボンつきプレゼント箱を取り出す。
そして……それぞれの相手へ送り届けた。
「はい、どうぞ! いつもおつかれー」
「おおっ」「よっと」「ありがたき」「あらどうも」
次々とトゲなしイバラでわたしていく。
渡す際に軽くスキンシップしたりもして。
これで全部……っと。
外ではガチガチなナブシウはホルヴィロスやグルシムに挟まれることにより一種の安全地帯を築いている。
まああれはそっとしておこう……
「どうすれば? これは」
「グルシム、別に作法とかはあんまりないから、適当に破いて中身を出してみると良いよ。まあ、私はしばらく鑑賞して写真撮ってからね!」
「これは我が主への捧げものとして、私が代わりに受け取っておくとしよう」
各々包みを破いていく。
ホルヴィロスはともかくとして。
丁寧にほどいていくタイプやビリビリにするタイプ……
箱ごと噛み砕き切ってるタイプもいるがそれは単純に説明が足りなかったな。
そうして開かれた中身には。
「おおー! チョコじゃん!」
「ふふ、わたくしには身に余るほどの物ですな」
「ふむふむ……ちゃんと出来ているじゃない。あら……? こっちのチョコのかおり……まさか! あの紅茶の葉を?」
いくつか形の違うチョコが並んでいる中でユウレンはひとつのチョコレートに気づいたらしい。
少しおしゃれな飾り付けがされているチョコだが……
かおりが紅茶。
使わせてもらったよー。
「どう? いい感じ?」
「うん、すごく良いわね……!」
「なあなあ、これ食べられるのか?」
「そうだよイタ吉ー、私が食べられるように加工したからね」
「どれ……」
そりゃあ多くの魔物たちはチョコなんて見たこともないしなんとなく嫌な感じがするかもしれないしね。
でもイタ吉たちは慎重ににおいをかいで……
口に放り込む。
何回か噛むと……
ピンと来たのかみんな感嘆符漏らしながら食べる。
よかったよかった……
「はー……うめぇ!!」




