七十六生目 猛毒
チョコを作っている。
オーカの実をひたすら剝いて。
そして胚芽を取り除き……
それらの実をとにかく砕く。
砕くさいは重みが大事なためイバラでは単純に軽い。
ここで取り出したるわ剣ゼロエネミー!
こんなことに使うのもどうかなと思ったんだけれどゼロエネミー自体が割と押してきた。
おそらく単なる戦いの道具としてじゃなくて身近にいたいんだな……って。
というわけで。
剣の形を変えギュッと押しつぶせるような塊に。
ある意味槌……戦闘で使う形としては少し使い心地どうかなとは思うけれど。
これを念じてオーカの身にゆっくり振り下ろす。
載せている器が砕けたら困るからね。
幸いそんな心配は必要なくオーカの実が砕けた音。
どんどんやっていこう。
オーカの実……光る種……どっちの加工も同時進行。
光る種は軽くやっていく必要がある。
草魔力を混ぜ込む過程こそが重要でパワー任せだと繊細な種の力が壊れてしまう。
この2つの違いはなかなか大変だ。
でも……私ならやれる。
集中しろ……私。
「うわっ、油が……」
だがここで問題発生。
話には聞いていたもののオーカの実から大量の油がでて剣ゼロエネミーがネトネトする。
これここからさらに刃つきイバラで粉砕加工するんだけれど……
うーむ……こうなったのは仕方ない。
器を移し替え出来る限りキレイにする。
ゼロエネミーには我慢してもらいさらなる作業へ。
移し替えたオーカの実はまだまだ大きい。
これを刃つきイバラで囲んで。
激しい回転により切り刻んでいく!
…………うっ。
なんなんだこの重さは。
私としては大丈夫ながら普通のニンゲン程度ではあまりにしんどいめにあいそうな重さ。
原因はやはり油か!
さっきも出た油だが細砕するたびにどんどん出てくる……
あんまり刃がギトギトのまんま砕こうとするのもなんなのでたまに払っておく。
こっちはパワフルだが光る種は繊細に。
力の強さをバラけさせるというのはなかなかに難しい。
そしてこの間ひたすら地味にやっていくだけだが……
盗撮の気配を感じたらホルヴィロスに警戒する必要がある。
なにせ……
「こらっ!」
「うわっ! 撤収!」
ホルヴィロスがニンゲンたちのカメラというものを学んでしまった。
おかげで家にホルヴィロスがいるのに静かな時は背後を気にしろというのが身についてしまっている。
撮りたいなら言えばいいのに『自然体を撮りたい』とか言い出している。
ぶっちゃけ互いに話しているので犯罪としての盗撮というより身内で遊んでいるだけではあるが……
私が怒れば自然体じゃない証拠なので撤収するという状況になっている。
ちなみに本当に嫌な写真は言っていいらしいのでそこはしっかりするつもりだ。
今の所割といい写真が多いんだよねえ……
あと他者にやれば犯罪なのでそこはしっかり言い聞かせてある。
まあなんやかんや私以外には分別があるからそこは大丈夫だろうとは思っているけれどね。
さてとにかくひたすら砕いていこう。
「はあ……つかれた……」
主に慣れないことをしているということで疲労感が強い。
でも新鮮な労働なので悪い気はしなかった。
そろそろいいかな。
つきつぎとまさしく形も感触もなくなってボロボロになるまでつよくすり潰し砕いたもの。
自然に出た油が輝いている。
これこそオーカマスのはずだ。
通常手を使うより遥かに楽したはずなのに量もあって1時間近くやっていた気がする。
キメ細かいオーカマスというのかどれだけ大変か味わってしまった。
買えはしたんだけれどせっかくならば実からやってみたかったんだよね。
調理器具が限られているけれどイバラならいくつも操れるから常に焼きつつ剥きつつ潰しつつ砕いていた。
ひとりでやる作業じゃないな!
まあそのかいあってついにはオーカマスができたしヨシとしよう。
途中で保冷庫にしまっていた他の食品も取り出す。
氷の魔石により良く冷えていた。
まだ高い仕組みだけれど便利だからアノニマルースでもちゃんと普及させたい……
においはチョコレートながらこのまま食べればとても苦いうえ普通の魔獣なら毒でもだえ苦しむ。
そこで他の材料を加えてゆき調合してゆく。
「ちわー、ローズに用があるんだが?」
「おや? 確か……ジャグナー! ローズは奥だよ」
「うん?」
ホルヴィロスが接客している。
一体誰かと思ったら……
どうやらジャグナーのようだった。
岩の鎧を纏う熊の魔物。
彼のかざりつけはどうなっているのだろうか。
「ってなんだ!? 恐ろしい魔女の実験か!?」
「恐ろしくはない……」
今解毒しようとしているからね。




