七十五生目 黒豆
プレゼンター・バリンティというバレンタインみたいなイベント。
だから私はチョコを作ることに。
もちろん解毒処理はする。
第一にオーカの実。
これはニンゲン界でもチョコレートの材料として使われている品だ。
薬品としての使われ方もあったようだが最近はあまりそちらの方はなくなったとか。
薬品になるのも納得な内容物で獣にとって猛毒になりうる成分も含んでいる。
それはホルヴィロスから貰った光る種で中和する予定だ。
さて……まずは。
キッチンを使いやすくするために姿を変えてホリハリー風の2足型になる。
こうなると身長が高くなり全体的に使いやすい。
キッチンに材料も並べて……と。
私の背中からイバラを生やす。
棘なしで繊細な動きをしやすいように"千の茨"で完全にコントロールを効きやすく。
まずは……もちろんこのイバラたちをキレイに洗う。
私単体ならそこまで気にしない。
何せ今生やしたしね。
ただ今回は贈り物なので念入りに。
本当に水道関係の工事で便利になった。
さすがにないと不便だから気合を入れただけある。
さて……と。
その後調理開始。
まずはきれいなフライパンをとって火にかけよう。
「……うん?」
「チチチッ」
すると換気のための窓からスッと飛んできた影。
それは実体があるようでないような鳥。
霊魔物のキトリだ。
キトリはアヅキに使役されているが……
たまに嫌になってかこちらに避難しにくる。
アヅキもそこまで縛る気がないのか放置するしなんならキトリもほとぼりが冷めたら帰っていく。
そしてキトリは火を付ける予定の場所にゆっくりと着地した。
「じゃあ、少し借りようかな。弱火でお願い」
「チッチ」
そしてキトリの特性として全身が炎のように熱を発している。
曖昧な肉体ながらその力は結構繊細なコントロールが利き普段は厨房で活躍だ。
そして今キトリは私の言うことを聞いてくれて弱い火を背中から放出してくれた。
フライパンを優しく置いてオーカの実を入れヘラで焦げ付かないようにいじり続ける。
ちなみに本来は発酵させたりなんだりやることがたくさんあるためそこらへんの加工は済んだものを入手している。
その間にココアバターをイバラ先鋭くし回転させながら……
ゴリゴリと切り裂いていく。
バターたちを細かく切り裂く。
こういうイバラの使い方はホルヴィロスから教わってからそんなにたっていないからまだ難しいんだよね……
こう……指先を開いて掴むような姿勢にしつつツメ先で手のひら大回転させるかのような?
少し例えが難しい。
同じような器官は普通ないし。
さらに別のイバラでこし器をとりその上に粉糖を乗せる。
そして揺すりつつ濾していく。
この次はスキムミルク……脱脂粉乳だ。
やはりというかなんというか時間はかかる。
この時点ですでにチョコ独特の香り。
色合い的にもいいかなと思ったところで。
「ありがとう、少し休んでて」
「ピピィ」
フライパンを火から上げる。
キトリも休みモードに入り目をつむった。
さてここからは。
このオーカの実をオーカマスにする。
簡単に言うと粒状にする。
まずは殻剥き。
殻剥き自体は熱に気をつけつつチマチマとむいていくだけ。
イバラならまあ楽かな。
胚芽は細くイバラ先をピンセットみたいにして抜く。
全部食感に影響あるせいで手を抜くわけにはいかない。
とりあえずここで一旦伸びしておくかあ。
んー! 慣れないことは疲れるね!
もちろん調理スキル持ちたちならば目の飛び出るほど難解な工程を超技術で素早く出来るのだが……
今回はそれでは意味が薄い。
私がガッツリ作るから意味があるのだ!
さてそろそろ……この光る種の加工だ。
オーカの実を解毒する効果があるのでオーカマスと混ぜる必要がある。
オーカの実を細く砕きながらこちらも加工する必要がある。
しかも砕き方がどっちも違う。
まずオーカの実は剥いた実をとにかく粉末になるまで砕く必要があるが……
そのためには粉砕させるのとすり潰すのを繰り返す。
そして光る種は慎重に草魔力を混ぜながらスローペースで潰す必要がある。
草魔力自体は私が捻出できないが幸いなことに草魔力石の砂がある。
うっかり直接混ぜて食感事故起こさないようにここから魔力を移していく。
とにかく何もかも時間がかかるものが多いのでトゲなしイバラを大量に出す。
身体はそんなに動かさなくともこれだけ多くの作業を同時進行するのは結構骨が折れる。
パワーで解決すれば楽だがそうもいかないしね。
そしてなにより量が結構ある。
プレゼント用だから……




