六十六生目 灰掃
盾ゼロエネミーで大木たちの爆発を防いだ。
もう灰まみれは嫌である。
「え!? あんな守りも出来るの!?」
「うわすっご……盾の武技?」
「みんなー! これで進もう!」
「ん、うん」「あ、うん」
また灰を被ると思われていたビースターチやフラウには申し訳ないが天丼芸やっている場合ではない。
赤の灰を見つけないといけないのだから。
盾ゼロエネミーを大きくして3人分無事に防げるようにしつつ……
奥へと進んでいく。
時折またエンマカリとセコスイが起こす爆発を観測しつつ盾ゼロエネミーで防いでいく。
そうしてしばらく歩いた先に……
よし……この煙の向こうだ。
「あ、ほらふたりとも、あれじゃないかな!」
「あ……本当だ! 赤灰、こんなにあっさり見つかるだなんて!」
「よし!」
近寄って行けば意外に量がたくさんあるっぽい。
あたりが真っ赤で鮮やかに染まり灰の山を出来上がっていた。
街の前で見たものより多いかもしれない。
「本当に当てるだなんて……さすが、これぞ上級者!」
「良かった、ちゃんと見つけられて」
「ありがとうねローズ! しかもこれ、結構圧縮されていそう……雨も確か何度か降ったはずだし。早速回収しようか」
また聞き慣れない単語だ。
フラウはバックから何か取り出すと灰の上へと投げつける。
その衝撃で杭のような形だったそれは開いた形へと変化した。
「圧縮って? 雨と何か関係があることなんですか?」
「ああ、朱竜様が暴れたところは昔からなんやかんや雨がすごく降りやすくなるんだ。それで……お、噂をすれば」
花のように開いた杭は開かれた部分を高速回転させながら内部が明滅している……
いやなんだこのテクノロジー。
変わったところで高いテクノロジー力を見せてくるな!?
それはともかくとしてビースターチが天を見て手のひらを上に掲げた理由はすぐにわかった。
空からの水滴……
雨だ。
雨が急激に強く降り出す。
私の体の汚れごと何もかも洗い流すように。
あちこちで暴れていたエンマカリたちは水を受けると静かになった。
そして灰たちは急激に冷やされ水を含むため……
粘着質な土みたいなものへと変わっていく。
急速にふんわりしていた灰たちのかさが減りだしていた。
「あ、本当だ……灰のかさがどんどん減っていく。なるほど、これを繰り返して……」
「そう、大量の灰もそこまでないかのように固まっていくよ。街でちゃんと除灰をしないと大変なことになるんだよ……」
「灰は便利だけど、すげえ邪魔にもなるもんなあ」
なんだかすごく実感がこもった声だ。
まあこの大地に来て忘れがちだが……
普通に考えて灰は邪魔になるよね!
ここの利用対応力が異常なだけだ。
……うん?
エンマカリは今の土砂降り雨でおとなしくなったが……
セコスイたちが暴れている!?
なんでさっきまでゆっくりゆっくりだったセコスイたちは数倍の速度でダンシングしはじめているんだ?
それでもまだ遅いものの質量の大きさで揺れや迫力がすごい。
足ではなく根を揺らして叩きまくり周りを枝ではたきまくる。
さらには少しずつ移動もしている……
「いきなりああなられても困るんだよなあ、巻き込まれると大変な目に合うぜ」
「近づかないようにしよう……」
「あれ? そういえばさっきの盾ってどこへ?」
「盾? これだよ」
剣ゼロエネミーをもう一度抜きさらに盾へと変化させる。
もはや水のようにぬるりと変わるから面白いよね。
周りからは歓声の声が上がった。
「へえぇ! 剣が、盾に!?」
「オレが見たとおりやっぱ単なる剣じゃなかったのか……!」
「ふふ、良い剣だよね。ずっと私と一緒に冒険してきたんだよ」
「良いよなあ、やっぱそういうのは愛着湧くよなあ」
「アタシだって、ずっとこの骨棍と共に冒険してきたからね。そういう気持ちよく分かる」
私達は話しながら空を仰ぎ見る。
互いの武器に関することからどんどんと雑談になってゆき。
不意に空から何かが近づいてくる。
「うん……?」
「あ、きた!」
フラウが腕を振って誘導しようとするに敵ではないらしい。
そういえばあの投げた杭……
まるで何かを誘導する機械のようだったがまさか本当に……?
空からふわふわやってきたスカートじみた服をハイたニンゲンみたいなシルエット。
しかし近づいてくればそれはまるで違う存在と気づく。
体の下半分が大きなガラス状容器に覆われているように見える……魔物だ。
"観察"!
[ソンドレラLv.45]
[ソンドレラ 超長期自立稼働式半自動灰除去ゴーレム。打ち込まれたビーコンを目印に灰を回収して己の糧にする。たくさん灰をためこめば帰って放出をするのだ]




