六十二生目 魔境
ムーの群れに接近してから。
(武技"回転斬り"!)
「「ワアッ!?」」
おー。
光を薄く伸ばして広範囲引き裂くというのがおもったよりうまくいった。
一気に吹き飛んでくれたようだ。
こういう技術方面ももっと鍛えないとなあ。
何せ全然わかっていないし。
剣ゼロエネミー任せで空中にいるのを念じて振り回すの強いけど明らかにワンパターンになって強者に順当に負けるようになっていたしね……
開けた道を駆ける。
この先にいるのはもちろん……
「ローズ!?」
「今いくよ!」
「こっちは危な……」
(今あいつらムーは全員背後向いている。そして振り向くには細いから時間かかる。つまり……)
全力で駆けながら刃を構える!
この足を止めないで剣を振るう技術って意外に難しいんだよなあって今やっていても思う!
全力疾走しながらやる武器使いプロたちどうやっているんだか。
とにかく目の前の相手はほぼカカシ。
もちろん気付き次第後ろ蹴りを噛ましてこようとはするものの……
「はい、はい、はい!」
「ちょっ!」
「なっ!?」
「嘘っ?」
ただそれも私の速度でゴリ押し。
蹴りのとんでくる速度はだいたい読めるのでそれより早く剣ゼロエネミーを前に突き出しながら突っ込んでいく。
本当は武技"地魔牙砕"で突っこんだ方がいいんだろうけれど……
あれ剣技じゃなくて顎技だ。
もはや剣ゼロエネミーの突きの光で跳ね飛ばすかのように進んでいく。
普通にやると刺さっちゃうから適度に揺らしてずらすのがコツのようだ。
あくまで跳ね飛ばして崖から落とすのが目的なので。
跳ね飛ばしていけばすぐにフラウまで追いつく。
「よし、間に合った!」
「う、うん……」
フラウが何かあっけに取られている……
まあドライが意外なほどに剣を使えたからなあ。
ほぼ素の能力でごまかしているのだが。
それはそれとしてまだムーたちはいるか……
「もう少し、踏ん張れる?」
「ああ、うん、もちろん、ここで踏ん張らなきゃほぼローズ任せになっちゃうし……」
「それにしてもこれだけ壊滅したら退くと思ったんだけれど……」
ムーたちは退くどころかより闘志を燃やしている様子で今もガンガンこちらへ駆けようとしている。
ムーの撤退に関してはフラウが首を横に振り否定。
「いや……ムーはそういう魔物じゃないんだよ。特にこういう朱竜様の跡地にいるのはいろんな魔物たちは気がたっていて、すごく攻撃的なんだ……!」
「ええ……大変だなあ……」
何がそこまで彼らを駆り立てるのか後で聞いてみたい。
ええと……向こうの会話は。
「叔父貴も倒られた! 奴らとんでもないけ!」
「だったらここで退くんか!」
「なわけなかろう! ムーの家族が倒られて撤退するわけないじゃろが!」
「「殺れー!!」」
うわあ。
こんなにも血気盛んだとは。
なんか勝手に残ったのがエリートたちみたいな雰囲気になっている。
それでもまだ100はいるから恐ろしい。
ムーが移動時に成すという万の群れとはどうなるんだ。
この大陸……魔境だなあ。
「よし、行こう!」
最後の1体。
3名に囲まれても蹄を鳴らして威嚇している。
この気合はどこから……
「おんどりゃー!! こうなったら、刺し違えてでも命取ったるわぁあ!」
「わっ!」
この距離から急加速!?
全身に炎をまとった強烈な1発!
私の方に来たから腕でツノを掴む。
凄まじい炎が私ごと包んで……
「今だよ!」
「はあぁっ!」「そらあっ!」
私が食い止めている間にフラウは竜の腕を振るいビースターチは黒い光の玉を発射する。
フラウはきりもみ回転しながら武技で飛び上がりそのまま勢いよく縦に振り下ろす!
ビースターチの放った黒い玉は段階的に大きくなってムーに襲いかかる!
ほぼ同時に光が当たり凄まじいエネルギーの奔流が生まれる。
つまりは風の爆発が起きた!
土煙が晴れたあと手を離せば。
そこにはノビて目を回しているムーが倒れ伏していた。
「た……倒した……全員……!」
「小規模だけれどムーの群れをたった3人でやったなんて、伝説だ……!」
「あ、やっばりあれで小規模なんだ……」
「ま、ほぼローズのおかげだったけれどね」
ビースターチたちは疲れが一気に来たのかへたれて座り込んだ。
竜の腕も単なる骨の塊に戻る。
結構ギリギリな戦いではあったなあ……
「あ! 燃えていたけれど大丈夫!?」
「ええ、アレだけ短時間ならば」
私があっけらんとして答え引火してすらないのも見るとふたりから驚きまじりで呆れられた。
手のひらもやけどしていないよ〜。
ひらひらと見せるとなんだか感心された。




