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五十三生目 秘匿

 私は冒険者ギルドにきて受付に冒険者証明書を渡した。

 受付は外国からの訪問と知って少し微笑んでそれを受け取り……読む。

 すると。


「……ランクT!? ローズさんって、あのアノニマ――」

「――わーっ! 受付さん!?」


 ランクまではまだ良いとして。

 アノニマルース関連の話題はまずいよ!

 今結構有名になっているし私が魔物だとここでバレるとトラブルのもとになるからこうして扮してきておるんだから。


 冒険者というのはそういう噂に敏感だからヒヤヒヤものだ。

 周りは……


「……え、T?」

「嘘だろ、あの貧相そうなやつがT……?」

「Tだって!? 何が?」


 いきなり周りがざわつきだす。

 う……アノニマルースだということはバレてなければ良いんだけれど。

 とりあえずみんなTランクに食いついている。


「ご、ごめんなさい……ええと、上で担当とお話ください……」

「Tランクってぇと……嘘だろ、後半代!? あの若さで!?」

「聞き間違えじゃないのか?」


 受付の方が申し訳無さそうに謝り上へ案内してくれる。

 まあ……アノニマルースが漏れてなさそうだから大丈夫かな……

 冒険者証明書を受け取り階段を登る。


 こういうところは絨毯がひいてあったりするが基本は赤いガラスブロックなのでとても落ち着かない。

 慣れなんだろうなあ……


「あ、上に行く! 本当に高ランクなのか!? 見たことないのに」

「もしや外国人か……? Tランクとかこのへんにいなさそうだしな……」

「ふむ……」


 よし。この扉が応接室か。

 入ろっと。


「……アノニマルースね……」


 ん? 誰かのつぶやきが騒動の中に消えたが……

 いやまさかアノニマルースバレしていないよね?









「いやあ! おまたせしました! 私が担当です」

「こんにちは」


 少しの間椅子で待っていれば恰幅の良い人がやってきた。

 彼がどうやら対カエリラスをしている担当でもあるのだろう。

 この国でも確かに裏で暗躍しているだろうしな……


 私の正面に彼が座った。


「いやあ、こうしてみると確かに人間のようですな。あ、この部屋は特別性で、例え壁に耳を埋め込んでも外から聴いたり見たりすることは不可能なので、おかまいなく」

「あ、なるほど……ではこちらのことも知っているってことですね」

「もちろん」


 なるほど……それなら安心だ。

 相手はこちらがアノニマルースだと知っていると。

 そして私が魔物なのも。


 それならば問題なし。


「ええと、とりあえず許可の方は……」

「もちろん、すでにこのように」


 私が何か言う前にパパッと相手がこちらに配布する。

 ええと特別滞在許可証に特殊冒険者活動認可証……

 さらに逮捕一時権に国認1級調査手続免除書!?


「えっ、これかなり凄いのでは?」

「がんばらせてもらいましたよ〜、それはもう。何せこう見えて結構手こずっていましてね……」


 担当さんが人の良さそうな顔に苦労をにじませる。

 あれ……でも……


「冒険者ギルドがここまで大きいのに、なんでここまでの苦労を? あれほどの強さや規模がある面々ならば、皇国や帝国よりもかなり力を入れられるのでは……」

「そのせいなのです。大きすぎる力と規模……それに歴史的に、政府と対立しつづけているのが共和国の冒険者ギルドでして……」

「ええ……」


 思ったよりも深刻なことになっていた。

 冒険者ギルドというのは半公営……つまり国の力が入っている。

 しかしそれ以上に国をまたいでの活躍がしやすいようにできうる限り横のつながりと世界規模化して依存率を下げようとしている。


 だが現状そううまく行っているところは少ない。

 そもそもの人材中抜きが激しい帝国……

 比較的バランスは取れているものの国に頭を抑えられている皇国。


 そして独自に活躍できるほどに力……つまり武力含むパワーが大きい共和国の冒険者ギルドはどうやら昔から政府と対立していると。

 確かに武力や資金が下手な国よりあるとこは目をつけられるかもなあと思ったことはあるけれど。

 まさかのここがそうだった。


「いやまあお恥ずかしいところ、そのせいでこちらも政府からかなり妨害を喰らっていましてね……いや! ローズさんは無関係なので大丈夫だとは思いますが」

「いや、まあ、私の事はなんとか私がしますけれど……そちらは政府とやりあっていて大丈夫なんですか?」


 何せ国の中で国とやりあうって下手したら内戦だ。

 国に逆らうなという話ではないがおそらくロクに資金もおろしてもらえずいろんな融資も受けられない。

 ある日来たらここが政府の軍隊が囲んでいたとかならないのかしら。


「ええ、そこはそこは。長年やりあっているのは伊達ではないということです」


 自信があるのかこの時はいい笑顔で言ってくれた。

 何か……何枚も秘策とか用意して牽制しているんだろうなぁ。

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