五十二生目 豪邸
市役所で外から来る人向けの説明を受けた。
本人が話し好きだったらしくガンガン教えてもらえたものの……
ものすごい内容にクラクラ来てしまった。
朱の大地がある共和国に関するデータはあえて事前にそこまで仕入れていなかった。
現地で見て聞いて楽しみたかったし……
何より行ったことのある他冒険者からの評価が高く行けばわかると念押されていた。
そしてわかったのが以下の事。
まず今までの常識がまるで通じない。
都市は年1で建て替えるものでほぼ年1で朱竜により壊される。
朱竜は常にあちこちを破壊しており破壊と再生を促している。
もちろん本竜の意思はわからないせれど……
それでもここに住む者たちはなんら朱竜の行いを悪く言っていない。
スイセンは年1で人柱要求してなんか恵みを与えるタイプだがこっちはニンゲンや魔物たちがもう朱竜そのものに対応しちゃって破壊の副産物がすごく便利。
タイプがまるで違う神と信者の関係……
しかも大荒れパターン。
それなのに普通な感じで生活が送れているのはすごいな……
そして蒼竜が何も語らなかった理由がなんとなくわかった。
氷と炎……全ての命に喜ぶタイプと全ての命は塵にしようとするタイプ。
あまりに水と油。
どう考えても仲良しこよしではないだろう。
……あれ私の命大丈夫か?
限界ギリギリまで神力解放はやめよう。
さらなる話は冒険者ギルドで聞くとして場所を教えてもらった。
ただ「冒険者ギルドよりこっち先に来るだなんで、見つける順番が逆じゃねぇです?」と言われた。
冒険者ギルドは市役所なんかよりも目立つらしい……
なんというか皇国では大きくはないもののそんな大きなところではなかったし帝国に至ってはもはやくすんで隅ので潰れかけていたし。
大きく立派な冒険者ギルドって全然想像できない……
「ほんと、みんな平気なんだな……」
灰が降る中みんなごく普通に歩いている。
服も当然のように防火性らしくまた皮膚に触れてもまるで熱が効いていないしあまり汚れている様子もない。
さっきの役所の人によると「朱竜様が起こす灰の風でやけどしやがんのは、朱の大地では赤ん坊くらいです」って言っていたな……
毒沼に住む魔物たちみたいにこんなところで住む彼らだからこそ完全に適応しちゃっているんだなあ。
たくましいというかこれは良いのかというか。
生命の神秘を感じる。
それはともかく教えてもらった場所はそろそろ……
……
……?
「……え、あれ、これ?」
私の目の前にあったものは。
3階はある豪華絢爛な飾り付けされたガラスブロックたち。
違いは良くわからないが黄色いガラスブロックが入り口に使われており……
広大な敷地が冒険者ギルドの庭となっていて建物自体も役所より大きい。
何……え……これ看板なかったら全然そんなこと思わなかったぞ。
私は単に豪邸かと思って見過ごしかけた。
えー……入って良いのかな。
悩むが悩んでも仕方ない。
思いっきり冒険者ギルドと書いてあるし。
中に入ると広い範囲で灰を落とすための玄関がありタオルなどもあってさっきの市役所より色々と豪華。
結構毛の間に入り込んだ灰は落としにくいね……
魔法を使えばいいという話ではあるんだけれどあれは発音魔法だから変に目立ちたくない。
なにせ豪華絢爛で中にいる冒険者たちも明らかに装備が充実している。
皇国よりも何段階か上の平均だし何より強そう。
これが朱の大地冒険者!
「ほらこれ、どうよ?」
「うわ、良いエンチャント! 高かったでしょ」
「ずっと、欲しかったからいーんだよ!」
公共の場での抜剣は基本的によろしくないが冒険者ギルド内なら話は別だ。
よくある武具の見せあいもここだと段階が違う。
剣が炎の光を纏っていてなおかつ"観察"してみると通常より複雑に魔力増強加工されている……
あれは破壊力が足されたまに相手の行動力を奪えそうだ。
私の剣ゼロエネミーほどではないが本来はなかなかお目にかかれないが……
あちこちのテーブルで似たぐらい強い武具を見かける。
だとすると今の私……この服装だと……
実行性能はともかく見劣りして映るだろうなあ。
実はすごいんですと言っても他者からみてわかるようなものはないし。
実際のところ私が気配を抑えているのもありまるで注目されない。
玄関閉じ忘れ良し。
ゆったりと歩いていく。
みんなが談笑している横をすりぬけ受付入り口にたどり着いた。
「いらっしゃい、一体どういったご用件で?」
「あの、ローズといいますが、連絡が行っているはずで、この国での活動許可をもらいたいんですが……」
冒険者証明書を取り出し渡した。




