五十一生目 再生
異文化の洗礼を受けた。
都市と田舎で文化ギャップがすごいとは聞いていたが確かに文化力が低いとは聞いていない。
まさかここまですごい技術があるとは。
おそらくは天気予報に……
天気予報を伝える石……多分管がつながっているから拡声器。
ゆっくりと繰り返し言葉を話しているけど中身が驚きだ。
『――です。そして、明日の天気は、1日中快晴ですが、灰が10時間辺り、2ミリほど積もり、洗濯物は内側の方が良いでしょう。風は南風から東南に変わり、気持ちのいい、そよ風になる予定です』
単位は脳内で変換しているものの恐ろしく的確に報道している。
この通りだったらずば抜けた精度だな……
どこかに気象台もあるのだろうか。
「あっ」
私の上に何か積もっていたので払ったら手に黒灰がついていた。
空を見上げればキラキラと輝くいろんな色の灰たちが降ってくる。
……ここ大丈夫? 迷宮じゃないよね?
驚きなのはこの灰たちはもちろん熱を持っているのに……
みんな素肌が出る格好でウロウロしている。
私は元々火の耐性が無効なのでこのぐらいでは怪我もなにもしないが……
みんなもそのぐらい耐性あるのだろうか。
そんなこと思いつつしばらく歩けばやっと見つける。
市役所だ。
ここでいろんな案内を見られるはず。
建物は他と同じ様に赤いレンガガラスがブロックとして積まれ1つになっている。
看板に大きく[市役所]と書かれているので間違いない。
ドアの部分はガラスで出来ていて触るとほのかにあたたかい気がする。
扉を開ければそこはまさに異世界。
なにせ一面がレンガガラスで出来ていて絨毯は引かれているもののまるで落ち着かない。
もう全面がきれいだし当然新築。
「おいおい早くしめてください! 灰が入りやがります」
「あ、ごめんなさい」
私が入り口ですでに気圧されていると中から声がかかる。
そりゃあそうか。
灰の掃除は大変だものね。
入り口を閉めてそれからおそらく灰を落とすための玄関で私の灰を払う。
ちゃんとある水場で手も清めて……
やっと中に入れる。
中にはほどほどニンゲンたちがいるものの『扉閉め忘れる奴が来た』ということですごい見られて気まずい。
改めておずおずと総合窓口っぽいところへ向かう。
「いやああんた、身なりや灰が入るのを避けるキッズでも知っていることをわかってないあたり、違う国から来たんですね?」
「あ、はい」
「それで、どうだったですか? この国は」
「まだあまり見回れていませんが……それでも圧倒されっぱなしです。まず街が消えていたと思ったら移っていたのがすごく……」
「そいつぁ良かったですな、俺はここで初めての奴らの顔を見るのが好きなんです! ようこそ共和国へ」
受付の人がラフというかなんというか独特だ……
ニカッと笑って手元からいくつか資料を出してくれた。
というかなるほどね……それほどまでに灰に関して生活と密着している国なのか。
「そんじゃ、順に説明をします。この街……いやこの国は年がら年中あちこちで灰が降りやがり、まあもちろんそれを利用しまくって成り立っているんです。でまあ、この建物のガラスブロックも灰、野菜育てるのにも灰、エネルギー品にも灰を使ってやがります」
「この灰って……どこから……? 火山は無いような……」
この辺の地理に明るいわけではないが近くで噴火した形跡らしきものなどは見当たらない。
すると受付の人は資料をかきわけひとつの絵を指した。
これは……
「朱竜様ですあられやがります。朱竜様は常に暴れており、各地で灰やマグマをまいてくださりがやって、それで先日は古いここの街がぶっ壊れやがったんですが、まあおかげでこうしていい感じの役所になりやがりました。前のところは日照が最悪でありやがったんですがな」
「朱……朱竜! ええ……それって、こう、大丈夫なんですか!? 色々ととんでもないことを言っている気もしますが」
やっぱり前の街朱竜に破壊されてたーっ!
あそこまでのことが出来ると思っていなかったから前は聞き逃しがちだったけれど……
現在進行系でめちゃくちゃ迷惑な神じゃないか。
と……おもったのだが向こうの反応は薄い。
「ん? ああ、そういえば外の人たちはそんなことねぇんであられやがりましたな。ここでは年1程度で街が壊れやがるのは普通です。頻繁に壊れ、頻繁に新たに建てて、何もかも常に新しく、今度の新しさは前の分さらに良く。これが朱竜様のお教えとされてやがって、何もかもが常に新しい、飽きることのないのがこの国が持つ特徴でやがりますがね、まあ朱竜教の範囲ならだいたい同じでいやがりますがね」
「ええ……そうなんですか……なんだかめまいがしてきた……」
「ハハハ! まあ、そんな感じのまさに熱いこの場所でいやがるココこそが、朱竜教の場所、朱の大地です!」
激しい文化と生活のギャップに酔いそうだ……




