章 美しく新しい朱の大地よ 四十九生目 朱竜
こんばんは私です。
今日はついに本格的な冒険。
その先は……
「見えた! あれが……」
「「共和国だー!!」」
……あらたなる大陸に船でやってきた。
私達アノニマルース冒険団は皇国の西にある帝国西端まで行ってから船に乗り……
長い時間を駆けて船旅を終えついには別大陸までやってきた。
ちなみに船旅と言えど魔法で自由に出入りしていたので意外に楽だった。
とりあえず私はホリハリーに近いニンゲン風の姿でちゃんと扮している。
魔物たちやオウカたちそれに私というメンバーで冒険者たちがたくさん出入りし……
私も実は船上にいたのはわずかな間。
海の魔物たちが周囲を守ってくれていたため実はかなり楽な船旅だった。
船員たちにも感謝されつつ船上から降り港町に。
たくさんの魔物たちがここから別れ探索に行く。
前の魔王討伐周りの話でアノニマルースはアノニマルースの証である受信リングが見えていれば結構信頼されるようになっており……港町みたいな噂がすぐ流れるところならほぼ大丈夫なのだ。
ここの大陸は多くの国に別れているがそのうちのひとつ[ガンダ共和国]。
ここに私の解決すべき事案がいくつかある……
その中で大きいのは。
カエリラスの1派がこの国で大きくいるらしいということ。
そして宝石剣が1つ眠っているということだ。
もちろん私個人的な冒険をこなすという依頼もある。
この大陸はこれまで以上に未開だ。
今は港町だからまだマシだけれど……
少し進めばあるのは都会と田舎で激しい文明格差や……
まさに手つかずの大量な土地。
そして今だたくさん眠るとされる冒険者ギルドに登録されていないまだ見ぬ迷宮たち。
未発達な土地に冒険者たちは必須!
冒険者ギルドはここではかなり勢力を伸ばしている途中らしく……
私も含め多くの者たちがぜひ行ってほしいとのことだったので。
アノニマルース支部や皇国冒険者ギルドの者たちで一斉に来たわけだ。
私の魔法なら色々効率よくできたしね。
アノニマルースと出入りして好きなときに来るだけの生活……仕事処理の面含めても楽だった……!
そしてこの大陸はもちろん蒼竜大陸からは離れる。
ここにいるのは……
朱竜だ。
朱竜について蒼竜に訪ねたところなぜか一切のノーコメントを貫かれたので。
私が独自に調べた。
朱竜とは5大竜の1体でとにかくニンゲンたちの文献に出てくる数が多い。
最もニンゲンたちに近く触れ合った神の1柱とも言えるが……
……それは破壊神。
……それは魔竜王。
……それは魔界の主。
とにかく散々な語り口と共に記されているのが朱竜だ。
それもそのはず共和国を含むこの大陸では長年に渡るニンゲンや魔物たちとの戦いの歴史が綴られている。
その息吹は地上を焼き払い。
その叫びは聴いたものの息の根を止める。
暴力という言葉が朱竜を指す国もあり実は現在も活動が続いていたり。
幸いなのは大陸を超えないこととここで暮らす者たちは非常にタフだということだ。
どこの場所でも『なんでわざわざここまで過酷な土地で……』というところに生き物たちは住む者だ。
迷宮なんかは良い例である。
そう……過酷以上に益が大きいからだ。
実は細かい記録はあまり外に出ず罵詈雑言書き連ねてあるのは大陸外の記事。
なぜなら豊かで新鮮な土地と資材を植民地支配……としか思えないがなんとか得ようと遠征しに来た者たちは歴史上たくさんいる。
しかしオチは全て同じで朱竜にお尻を焼かれてとんぼ返りか骨まで溶かされている。
同時に異様なほど豊富な土壌だ。
ここで育つ野菜は1つとっても特権層にしか口に出来ずまた流通量が根本的に少ないが……
それは鮮度の問題だ。
大量に運ぶには船を用いるしかないがそれだとこの大陸産の野菜はたいていだめになるらしい。
代わりに魔術師を雇ってワープしてきてもらうことで少しの量だけ流通している。
まあもちろんそれもそんなレアな魔術師を格安で雇えれば……の話だが。
非常に美味な上魔力がありまた観測値以上に神秘的な力を身につけられる……という眉唾な話も。
とにかくまだまだ外から見ればわからない土地だがニンゲンたちや魔物たちは確かに息づいている。
「ようこそ共和国へ」
「ありがとう!」
言語も"言葉を超える教師"の力で覚えて……
全員分の入国申請も通った。
さあ行こう……港から近い都市へ!
「ない!?」
とりあえず危険もないし気楽なひとり旅。
意外にただ新鮮な風を切って駆け抜けるというのも気持ちが良くて好きだ……とか思っていたら。
街があるはずの場所に何もなかった。




