四十八生目 自立
コロロの新たなるステップ。
それは自身の可能性を開拓することだ。
それにより自分自身を改めてちゃんと見つけてもらう。
まだドラーグから離れるとまともな活動すら困難になったりするからね。
ひとりでも……むしろ一緒の時もさらに戦えるようにと槍術を覚える予定だ。
「……訓……練」
実はドラーグと共にもっとあれこれとしようと画策した過去はある。
しかし遊びから日常的活動それから勉学もドラーグがいる前ではがんばるそぶりを見せる。
しかしドラーグがいなくなれば……もはややることは息する程度。
ドラーグから自立する働きを促そうとすれば結果的にドラーグのためにがんばるだけで自分の為へまるで転化されない。
だからこそ。
「そう。ドラーグのために、ドラーグの上でやれることを広げておこうと思ってね。もっとドラーグと戦えるよ!」
「……! パパのために……やる……!」
自分のため……はどうでもよくて。
ドラーグのため……と言われれば食いつく。
ドラッグ中毒を起こしていた頃よりもずっとマシになったものの……まだ見ていて辛い部分もあるなあ。
彼女に通常の槍よりも遥かに長いもの……練習用なので軽くしてあるそれを渡す。
とても少女が振り回すとは思えないような馬上で使うための槍。
実際は大きなドラーグに乗りながらなのでさらに長くなる。
ドラーグのために……といってうまくやれる範囲を広げてドラーグという世界の中心に自分自身も形成してもらいたい。
「う……重……」
「大丈夫、少しずつ慣れていこう。それに力もつけなくちゃね。ドラーグにしがみつくにも、体力や力は大事だ!」
「う……うん……!」
コロロはやっとの思いで両手に長い槍を持つ。
槍使いならまだ他に探せばいるが……
彼女はまだまだドラーグの周囲にいる存在……私なんかじゃないと反応すら怪しい。
戦闘の時にしっかりしていたように見えるがあれはあくまで仮の状態。
普段があまりにも無気力で無反応。
まだまだ治療がいる……
ドラーグは忙しく前線に出る事は少なめ。
だからこそ彼女はただドラーグのそばにいるという事態になりがちで。
このままでは何もできないがただドラーグに飼われている存在になってしまう。
それはドラーグも私も困るという結論にはなっていた。
何よりもコロロそのものの人生だ。
これからのことに自分で幸せを勝ち取れるようになってほしい。
「私も槍は専属というわけじゃあないけれど、基本的な動きだけならなんとかなると思う。ドラーグのために! がんばろうね」
「う……うん、パパのため……!」
よし。
コロロが乗り気になってきた。
私も置いてある長い槍を拾う。
確かに構えると重いな……
いや筋力的には余裕だが感覚的なおもさがすごい。
それもそのはず先の刃部分を思いっきり突き抜くので重心は前で持ち手は後ろ。
このアンバランスさがおもな重さの要因だよね……
よし。
「さあ、見てて。まず普段の持ち方をして。かなり重いのは、先がながーくて、その先が重たいからなんだ。だから、普段楽してドラーグの上に乗るために、あえて槍先近くを持とう。こうして……」
「……ん……ほー……ああー……」
コロロが私の動きを真似している。
そして何か得心が言っているようだ。
これはいい調子。
「うん、何か良いことに気がついたみたいだね!」
「……持ち方、大事」
「そうだね、ハナマル! さあ進めていこう。このままドラーグの上に乗るには――」
こころなしかコロロの目が輝いているようにも見える。
仮面でもつけたような表情をしている時と違ってこの時はかなり積極性が増し活動的になる。
つまり教える方向性としてこれはアリ!
「――そうそう、そうなって……イメージしてみて。自分がドラーグの上で風になっている時、ドラーグの背中の上側から敵が近づいてくる。ドラーグには下の敵を相手してもらいたい時……上へ放つ、ドラーグを守るために」
「……ん……!」
私は滑らせるように槍を上空へと放ち腕を伸ばして槍の下側を掴む。
これで勢いよく上につけた。
本来はこれに光もつける必要があるんだけれどね。
コロロのスキルふりもさせなくちゃなあ。
今の所スキル振りをほとんどしていないらしい。
中身はこの世界結構ニンゲンたちはあんまり公開しないというか……プライベートでセンシティブな部分。
なのでドラーグしか詳細は把握していない。
そこは踏まえて今日のはとにかく基礎の基礎だ。
「……うん!」
……そうだね。
まだ振り抜こうとした槍が地面に当たっていたね。
全然射出できていないしそのまま地面に落ちたが……
「そう、その心が大事」
「ん……!」
まだこれからだ。




