四十七生目 決意
メープルは……いやメープルとジンコーふたりとも親と離別することとなった。
もう村には明らかにいられないのはわかっていたが……
思ったよりも親がかける言葉は冷酷で……かつスイセンのほうを選んだ。
おそらくメープル家は家族の中でも比較的平和な方だったはず。
それでもここまで狂わせるのも統一させるのもどちらも宗教としての力か……
小神だしなんの教えとかとかなくてもそこにカタチが出来てしまう恐ろしさというのを味わった。
私も他人事ではないのだ。
とりあえずメープルはアノニマルース病棟へ行きジンコーと再開。
ふたりしてアノニマルースの説明を受けた。
ジンコーにとって何重にもたたきこまれるハメになって申し訳なかったが本人はメープルと共に静かに泣き耐える。
とりあえずジンコーはしばらく様子見ながら栄養さえ戻れば身体に問題はないらしい。
メープルもあれこれと回復措置やメンタルケアを受けることになるが通院で済むそうだ。
「私……これで良かったのかなって、ずっと思っているんです」
メープルはアノニマルースで一時的に保護することとなった。
ニンゲン側や冒険者ギルドの方にも申請出しておかなくちゃだが……
このままだと家なき子だからね。
だから仮住まいへ徒歩でアノニマルース観光がてら行っている最中メープルがふとこぼした。
「そうだね……私も、今回はなんというか、苦い結果に終わってしまって本当に申し訳ないよ」
「いえ! ジンコーは依頼通り助けてもらえましたし、それに私は少なくとも……救われました。あのミューズというものをちゃんと見た今、余計にそう思います」
ミューズ……メープルもされかけていたもんなぁ。
あんな冷凍死体にされたらたまったものじゃない。
魂ないだけで生きてはいるけれど。
ただあんなの生きているって言われてもなあって感じもある。
「そう言ってくれると少し助かるけれど……メープルは大丈夫?」
「私……何も知らず、何もできなくって、結果的にジンコー以外を失ってしまって……思ったんです、もっと自分で出来ることを増やさないと、間に合わないこともあるって……」
「メープル……」
正直生まれの時点であまりに不利すぎた。
メープルが下を向いて小石を蹴りながら歩く。
そして……グッと顔を力強く上げる。
「私も強くなれますか? いや、なります! 私も、ローズさんやハックさんみたい! それで、たぬ吉さんみたいに不安なところに寄り添える人になりたい!」
「メープル……! それなら少しでも力になれるかも」
「あ、ありがとうございます!」
帰りの夕日が私達を照らす。
そのまま新たな決意を祝福するように。
彼女がイタ吉やハックそれに私から少しずつでも確かに自分で立ち上がる力を手にしだし……
ジンコーと共に育っていくのはまた別のお話。
こんにちは私です。
コロロの定期検診に付き合っている。
今日はコロロのパートナーであるドラーグは別行動だ。
「……はい、いい感じですね。症状が安定してきたのと、ドラーグさん以外でも認識しだしたのはいい傾向ですね、また薬を出しておくのでもらってくださいね」
「はい、ありがとうコル」
「……ん……」
医者コボルトのコルに別れを告げ病院から出ていく。
うーん確かにコロロはかなり元気にはなったと思う。
しかしいまは……
「くぁ……」
ものすごいぐでんとしているが。
ドラーグと共に過ごしているときは結構キリッと乗りこなしているが今の所それ以上にはいかない。
本人は教育も鍛えもまだ何もせず特に興味がとにかく薄い。
世界の中心にドラーグだけがいてそれ以外は世界の外側で回っている。
遠くにある星として見えるがそこに何かを見出すには遠い。
そして自分すらも遠くに……
もちろんそれでも改善はされているのだが。
やはりそろそろ自分の力をみつけていくのも良いかもしれない。
自分からドラーグという世界の中心に自分も近づける力があれば……
なので実は今回ドラーグと共に色々と考えている。
「それじゃあコロロ……少し寄り道しようか」
「……ん……ん……?」
コロロを連れてきたのは。
槍術を訓練するために荒野の迷宮内にある奥地に設置された訓練所。
特殊訓練所だ。
アノニマルース外にあるため隔離された環境で鍛えられることで集中できると中級者以上に好評だ。
囲まれた隆起する土地……暗い洞穴……整地されていない岩肌……
本格的な訓練が可能だ。
「……なんで……?」
「ドラーグがね、キミをさらにドラーグと共に強くなれる、秘密の特訓をさ」
そうここで……
コロロの新たな方向性開拓をしようという考えだ。




