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四十二生目 棺桶

 3柱の暇……ではなくやる気のある神たちが審査員らしい。

 この摩訶不思議な空間は彼らと空間共有するためのものか。


「あ、光が……!」


 メープルが驚いている間に3つの光はポンと姿を変える。

 ひとつは……招き猫の置物?

 もうひとつは黒いカッコ良さのある剣だ。


 最後のひとつは厄除け御守みたいなもので複雑な紋様が織り込まれ作られている。


「えっと……?」

「まあ彼らの代用見た目だよ。光の玉ってのも味気ないしね」

「あーあー、念話通っている? 見た目どう見えてるにゃーかなあ? 仮想五感共有化は大丈夫だにゃあよー!」


 招き猫がにゃあにゃあ言い出した……

 蒼竜以外はだいたい同じ感想らしく顔にかいてある。

 言葉はそれぞれ理解ができる言葉に置き換えられるらしく全員無理なく理解できている。


「大丈夫だよーこっちからは猫の置物に見えているね!」

「なるほどそれはかわいらしいにゃんなあ」

「おや、美術関係の神はいないのか」


 今話した落ち着いた声は厄除けか。


()れは、時の運。戦場(いくさば)が必ずこちらに合わせることなど、有りもせぬ」


 重厚な声が剣からした。

 なんというか直接会ってないのに色々と重いメンツだな……


「先行はスイセンで良かったね。それじゃあやってくれる?」

「どれ、凡才に見せるには勿体ないとびきりの品というのを見せてやろう。ミューズマリア!」


 マリアと呼ばれた作品(ミューズ)がスイセンの力でテレポートしてきた。

 それは私達がみたものよりさらに奥にあったのだろう。

 私も初めてみたものだった。


 棺にあたる透明部分とフレーム金色を保っていて私達が見たのとは別に美しい宝石が輝いている。

 そして中にいるミューズマリア本人自体もどこかの国にあるおそらくは……かなり古い豪華絢爛な服を見事着こなし。

 天を仰ぐようなその腕は指先ひとつとってもあまりに繊細で。


 そして開かれた瞳はまさに今でも生きていると輝きがあり2つの宝石みたいだ。

 黒肌はこの凍てつく棺の中でもまるで輝く磨き抜かれた金属のごとく輝く。

 正直こうなる前……ちゃんと生きていた時。

 1時代は絶世の美女だったんじゃないかと思う。

 もちろん今この国とはまた少し感覚は違うだろうが審査をするのはそもそも神だ。


「ほほう……生き人形とはな、これは実に興味深い……」

「これはボクが考えた中でもっとも凡才にも理解しやすくかつ高度なミューズだ」


 スイセンは正面に回り込んでそっと棺の金縁をなでる。

 優しく撫でる指先は本当に大切にしているかのようだが……

 もうなんというかとてつもなく気持ちが悪いな。


「魂を、わざと抜いてあるか……変わった趣向だね」

「わたくしこういうニンゲンちゃんの業を煮詰めたようなものを見るの割と好きにゃんよ〜!」

「そう、魂はボクがちゃんと抜いてある。そのエネルギーを利用して権能を使い恵みを生んで……まあそれはどうでもいいか。魂を抜くことでミューズから余計な情報を削ぎ落とし、研ぎ澄まされたひとつの美しさが永遠に保たれるのサ。そもそも無駄に他者を苦しめたりずっと魂や意識を眠らせるのは、こう美しくないんだよね……無駄に他人を嫌がらせする意味ないし良くないよね」


 なんなんだ……こいつ。

 変なところでまともっぽいことを言う。

 まったくもってマトモではないはずなんだけれど。


 スイセンはさらに指を擦り合わせるように動かし念力でミューズマリアを持ち上げていく。

 ゆっくりと横回転させ全体像がよく見えるようにした。


「さあ、説明していこう。ミューズマリアは見ての通り、私のミューズにしては初めから異様なほどに裕福で、まあどこぞの王族らしいが、ソコは価値としては今回関係ない。むしろ身なりが肉体そのものの美しさに反映されているのがみどころだね。毛先や指先の角度までこだわっているんだ、順に話すと――」


 ううむ。

 他者へはものすごい豊富な罵倒をするが自分の物に対しては豊富な解説するなあ。

 これが魂を抜いた意識のないニンゲンを固めたものでなければもっと褒められるのだろうが。

 まあそこは神たちは気にしている様子ないけれど。


 話は長々と続いてゆきさすが普段聞いてもいない罵倒をずっと続けるだけあって自分の作品語りもずっと続く。

 どのように卓越しどのように意匠(いしょう)があって執念のように新たな魂を吹き込んだことをこれでもかと解説してくる。


 これらをみな熱情的ではなく当然なことのように話し続ける。

 まさに自分の腕ならばこの程度できて当然という態度で。

 いや本当にそう思っているんだろうけれど。


「――とツヤの――

――宝石は――

――爪先の――

――工程で――

――とまあまだ語れることはあるが、あまり専門的な分野に踏み込んでも、凡才の君らでは理解できないから、このぐらいにしよう」


 ううむ……なんか思っていたよりも強いぞ……

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