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四十生目 価値

 勝負に勝ったら何を要求するか……か。


「あの……みなさん」


 場が静寂に包まれた瞬間をずっと狙っていたのかメープルが声を上げる。

 みんなに注目され不安げになりながらも前に出て改め話し出す。


「私……スイセン様……スイセンのミューズになるのを、断ろうと思います」

「……何? そんなことを言うのかい? 君を、愛しているのに!?」

「はい……けれど……家族に呪いをかけるのも……やめてもらいたくて……」


 スイセンの態度がメープルに対してもだんだんと威圧的になってくる。

 しかしメープルはさらに畳み掛け……

 スイセンの顔に咲く花が爆発的に散らばり怒り吹き出す。


「な……な……なんだと!? お前、お前、お前、誰がミューズに選んでやったと、そんなブスのことなどこちらこら願い下げだ!! 呪い、呪いってあの念り……村人への力か……ボクが被害者なのにそれはおかしいだろう?」

「お前がめちゃくちゃな要求をして、多くの犠牲を出そうとするのが大前提で間違っているだろう! ……そうだ、こっちが勝ったらメープルたちへの呪いを止めてもらう!」

「な……ブスが、安っぽい顔面ぶら下げて何を言い……いや、そうだ、勝てば良いだけの話だからな……フフフ、そう熱くさせて本番の調子を崩そうとしてもそうはいかない、ボクはお前たちをボクの周りから出禁にするために勝つ。当然お前もだ、メープル!」

「ヒッ……は、はい……!」


 すごい勢いでスイセンの顔の花も声の調子も変わって行き美しい花々が散ってはサンゴシトウ等の赤い花々が咲き乱れる。

 それだけなら良いのだがスイセン自身の感情があまりにも表れすぎていて色々見ているのもつらいな……

 それにうごくたびに濃い花のかおりもするし。


「これは、責任重大だねえ〜……」

「というか……ハックは何しているの……?」

「うーん、今の力、お姉ちゃんを通してみんなと繋がっている気がして、それを込めてさらに上のものを作れないかなって考えているんだけど〜……」


 ハックはたくさんの材料らしきものを並べてはどかしまた新たな材料を並べて……とやっている。

 材料自体はアノニマルースに1度帰ったのかたくさんある。

 今作るのか……


「ボクは……この場を黙らせるのにふさわしい過去のミューズを思いついたのさ」

「えー……本当にミューズ(あれ)を出すんですか……」

「ボクの最高傑作である至高のミューズ、それを見せ、ボクが語り尽くせば貴様ら凡才もそこのブスどもも、それと審査員とやらもひれ伏すだろうさ」


 スイセンはかなり自信があるらしい。

 余裕の表情……というか花加減でゆったりとハックを待っている。


「そもそも、末恐ろしいだのなんだのと言われるのはさっぱり感覚が分からないな……そもそも何からの命を消費する娯楽みたいに言われているのがオカシイ。それらは確かに恐るべきとか悪趣味とか言われるだろう。見たか? 信者の金持ちたちの家……村長の家でも良いか、モンスターの剥製をこれ見よがしに置いたり、柔らかの獣の毛皮を敷いたりとしていただろう?」

「いや、奥の部屋には行ってないから……」

「え、あ、でも昔……見たことはあります……本当にあるだけだったんですが……」


 私は見てないけれどメープルは知っていたか。

 というか今全然違う話が紛れ込んだな……


「古今東西ああいうのはある……あれはあまりイイ趣味とは言えないね、まあ男の趣味だなんてどうだっていい、いいかい、ボクはそれらと違って傷1つ与えていない、生きてさえいるんだ……まさに崇高な芸術、他と比べ物にならない! それだというのにさあ、醜い顔寄せ集めて団結気分でいるなら、こいつ、ソウリュウサマのことちゃんと知ってるか? ヤクを買い、ヤクの経済力を持たせてはあの年に大量の被害が出ているマーケットの一端を担ってるんだぞ? 一時期違法化が進んださいに合法に傾けさせたのは聞いたところソウリュウサマが噛んでいるって噂話だ、最悪だろう? まずこいつをとっちめるのが先なんじゃないのか?」

「え? 帝国で違法化されそうだったの? 知らないよ、そもそも司法に噛んでないし」

「めちゃくちゃだ……しかもさらっと自分の罪を他者になすりつけようとしている……」


 蒼竜はかなりの難癖をつけられているがそもそもアヘンチンキは飲んでいたしな……

 まあ当者がケロッとしているから良いけれど。

 ここまでむちゃくちゃだと色々と呆れてしまうが雰囲気だけはなんかまっとうなこと言っているように思えてしまうからちゃんとじっくり聞かないといけないのがつらい。


「うーん……そうだ、妹さんは無事だったの〜?」

「あ、はい、おかげさまで。なんとか助かりました」

「それは良かった〜」

「双子さんで姿がそっくりなんですっけ? 元気になったら会いたいですね」

「それはぜひ! ジンコーも話すわんちゃんやたぬちゃんに会いたいとおもうので! あ、でも……今はあんなにやつれていて……ちゃんと元気になってくれるかな……」


 たわいないような会話だが……

 何かよいことに気づいたのかハックの尾が揺れた。

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