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百八生目 別旅

 今度はニンゲンたちの場所へとやってきた。

 木の家がひとつ建っていて煙突から煙が出ている。

 ミニオーク(ガラハ)とその子分たちの家だ。

 扉を叩いて声をかける。


「こんにちわー」


 中から物音が聴こえてすぐに扉が開いた。

 ガラハ……あれ、ガラハか?


「おお、姐さんきやしたか!」

「う、うん、ガラハ……?」

「ああ、姐さんもトランスしたと聴いたけれど俺様も負けてはいませんぜ!」


 そこにいたガラハは前のほぼ人であるミニオークとは一風変わった見た目をしていた。

 肉体はさらに引き締まり全体的に皮膚が黒っぽくなった。

 耳が長くなってさらに特徴的なのは……

 服を着ているからわかりにくいが首周りから猪のような剛毛が見える。

 髪の毛の質も同じく剛毛化していて人のそれとは明確に違う。


「もしかして、トランスした?」

「ニュー俺様! ですぜ!」


[オークLv.1]

[オーク(♀) 個体名:ガラハ

 人間がミニオークになってさらにトランスした種族。強大なパワーをふるい肉体そのものが鎧のようだとも言われる]


 おー、トランスしている。

 私が見ていないところでもちゃんとやれてるんだなあ。


「いやあ張り切って姐さんの手伝いをしたらメキメキ鍛えれてトランスできましたぜ! おっと立ち話もなんだから、ささ中へ」


 促されるままに中の居間まで入る。

 暖炉に火が入ってて暖かい。

 中にはガラハの子分たち4人がいた。


 ってなんだこの書類の山は。

 子分のうち一番読み書きがうまかった子を中心に書類作業に追われているようだった。

 そうこう見ている間に向こうがこちらに気づいた。


「あ、姐さんですよね! トランスおめでとうございます!」

「おめでとうございます!!」

「こちらこそ手伝ってくれてありがとう! ……と、この書類の束は?」

「それは俺様から説明しやすぜ」


 ガラハが説明してくれた。

 ニンゲンの町の方に一通り申請をするさいにようは彼等は請け負う会社という形にしなくてはならなかったという。

 そこでガラハ大工と名前をつけて申請が通ったまでは良かったのだが……


「そのさいになんか色々補助制度あったじゃないですか?」

「あ、覚えてたんだね」

「まあ思い出したという感じなんですが……そこでちょうどいいし片っ端から申請したら、そんなかに国補助の新規事業の広告をしてくれるというのがあって……」


 特定期間だけ冒険者ギルドなどにちょっと特別枠で広告を載っけてもらえる制度だ。

 ちなみに申請しないと誰も何も言ってくれないし特に何も案内がなかったらしい。

 ガラハがキレてたが割愛。


「まあともかくこっちの特徴を書いて出してその後に姐さんの手伝いをしていてすっかり忘れたころにたくさんの『仕事依頼』が届きましてですね……」


 ちらりと見てみる。

 [冒険者の中継所に賭博場も設置してほしい][こんな椅子が欲しい][森の魔木を使って屋根を改築して]などなど。

 ずらりとたくさん。


「ということはこれら全部依頼?」

「そう、やれそうなもんと、いくらなんでも無理そうなもんを分けてとりかかっている所なんで、とっちらかってるんです」

「それは凄いな……」


 これなら、良いかな。

 かくかくしかじかと伝えておこう。


「……というわけで私は森を出るよ」

「おお、なら俺様たちも」

「それはダメ、最初にいったじゃないか。独り立ちするまでだって。それにこの依頼の山をどうするの?」


 うぐっとガラハたちが怯む。


「もう見るからに自分たちでやれている。盗んだ分の返金と慰謝料上乗せ分ももう殆どおわっている。もうルールを守ってみんなで楽しく遊ぶことも出来る」

「あ、姐さん……」

「けれどももしちゃんと仕事やり遂げて私のほうもどこかで場所を作れて、その時には私から今度は依頼させてもらうよ」

「あ、姐さん……!」


 男4人女1人がウオオオンと大声で泣いた。

 ひとしきり吼えた後にやっと落ち着いて納得してもらえた。

 年齢的には高校生程度でまだまだ親が欲しいだろうがきっと大丈夫だろう。


 次は……

 と思っていたら入り口から誰か入ってきた足音。

 この足音は冒険者3人組だ。


 彼等は客間へ行ったようなので私も向かう。

 彼等にも御世話になったから伝えないとね。

 顔を覗かせると……


 そこには見慣れた顔の見慣れない姿。

 レッサーエルフだったエリは肌が白っぽくなり耳がすらりと長く先が尖っている。

 髪の毛が人のそれよりも絵に描いた美しい質に仕上がっていた。

 エルフにトランスしたんだ。


 プチオーガだったアマネは皮膚がサイかなにかのように硬質になり赤く染まっていて尾もあるのが見える。

 髪はまるで私の棘のように鋭く見え身長も伸びて180ほどになったんじゃないかな?

 オーガへトランスしたのだ。


 プラスヒューマンだったソーヤは見た目の変化は乏しい。

 だが右手の甲にある丸いあざのような模様が一段階強くなったことを表していた。

 ダブルヒューマンへとトランスしている。


「みんな! 手伝ってくれてありがとう! それとみんなもトランスしたんだ! おめでとう!」

「あ、ローズさん!? 思ったよりちょっとした姿の変化でしたね」


 ソーヤが立ち上がってお辞儀してくれた。

 続けてエリ。


「ええ、こっちも負けてられないと思って、トランスしました!」

「私達はこれからもガンガンやっていくからね! あ、その目見えてるの? 背中針ないんだ、撫でていい?」


 アマネがそういいつつもガンガン撫でてきた。

 もはや遠慮なしである。

 しかし人に撫でられるとなんとも言えない気持ちよさがあって嫌いじゃない。


「今は針ないけれど、出そうと思えば出せるよ」

「ひゃー! 間違えて出さないでね!」

「出さないよ」


 私は撫でられつつこれまでの経緯を話した。

 うーん眠くなってくる。


「……というわけで、これまで本当にありがとうね!」

「うわー! そうと決まったらしばらく分のモフモフチャージしとかないと!」

「そうですか…でも職業柄また会える気がしますね」

「こちらこそ、ありがとうございました!」


 冒険者たちはさすがに慣れているのか実にさっぱりとしたお別れになった。

 ただこのあともめちゃくちゃ撫でられまくった。

 限度がある、限度が。




 家を出てささっと走って辿り着いたのはオジサンの隠れ家だ。

 ここではインカとハックがオジサンに指導してもらっているはずだ。

 私がいない間の送迎はハートペアがかわりにやってくれていた。


 練習場に顔を覗かせるとちょうど兄弟たちがオジサンによって吹き飛んだところだった。

 泥だらけで地面に伏している。

 立っているのはオジサンのみ。

 しかも進化してミリハリ状態だ。


「あ、お疲れ様です」

「どうも。ちょうど、今一息ついた」


 オジサンが進化をといてホエハリに戻る。

 ちょうど訓練の終わりだったようだ。


「おつかれー」

「あ、お姉ちゃん……!」

「つ、つかれて、妹の目がみっつに見える……」

「3つだよー」

「……えっ!?」


 その場でくつろぎつつもからのこれまでの話をした。

 私のトランス姿を見て、


「僕もこうなりたい」

「俺は父さんのほうが良いかな」


 など感想をもらった。

 そして旅立つ話も。


「……ということ」

「う、うん、なんとか基礎は伝わったし、あとはそれぞれの部分で何とかなる様にはしたよ。

 そ、それとやっぱりキミの兄はかなり筋が良いね。弟くんもなかなかだけど、兄はとびきりって感じかな」

「まだまだだけど俺、頑張って強くなったんだ!」

「僕も!」


 彼等は私についてくるために強くなろうとしていると聴いた。

 それで努力をしたのならば私はこう言うしかなかった。


「インカ兄さん、ハックくん、一緒に来てくれる?」

「ああ!」

「もちろん!」


 こうして一通り挨拶をし終えた。

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