三十三生目 恐竜
メープルの案内どおりに来たら崖沿いに大岩があり祀られている場所に来た。
さすがに今までの流れからわかる。
この岩は……
「ここ、この先に洞窟があるるしいんです。けれど、どう開けるかは、良く考えたら私もわからなくて……」
「うーん……飛び出してきちゃったしね」
「そもそも、ジンコーがいるのならここが開いていると思っていました……」
確かに誰かがいるのなら表は本来開いているはずだ。
それなのに表が閉じているということは……
意図的に閉じこられているということだ。
かなり状況がまずいな……
うーん祀られた大岩とはいえサイズは私をこえる程度だし……
しかも特別な封印が施されいるわけでもなく本当にただ重いだけだ。
もしかしたらこれ押せるんじゃないかな。
横について。
「あ、あの……?」
「せーの!」
力を込めて押し込む!
すると岩は重い音を立てながら動いた!
あっこれ思ったより動くな!
「えっ……」
よしよし。
岩は完全に横へと押せた。
何か仕掛けが壊れたような音もしたが気のせいだということにしていくぞー!
「行こう!」
「は、はい!? はい!」
なんかぼーっとしていたようだけど疲れが見えるのかな。
とにかく急ごう。
中の洞窟は予想通りとても暗かった。
明かりや天然の光などはない。
一つだけある松明らしきものを立てかけるところはカラ。
光神術"ライト"を使ってまずは周囲を明るくする。
これで洞窟内も十分な視界をメープルも確保できる。
「こ、こんなに暗い所にジンコーが……! 急ぎましょう!」
「もちろん!」
ここからは特にメープルの身を気遣って動かねば。
歩くだけでも危険が多いし外界のわりに魔物が多い。
ここが閉じられた空間だからとはいえそれは変わらないはず。
よし……思っていたら早速だ。
「来るよ!」
「え? 何がですか?」
「今度の獲物はー! どいつだー!」
"観察"したところ血を吸って生きるコウモリたちらしい。
彼らは集団だから面倒なだけで……
「それっ」
「「わぁー!?」」
「炎ーー!?」
食欲旺盛な彼らからメープルを守るために先手を打たせてもらう。
火魔法"フレイムガード"!
大きな炎で出来た光の盾でコウモリたちの道を塞ぐ。
さらにそのまま突っ込み……
「「逃げろー!!」」
「ふぅ」
当然そんなものに突っこんでくるほど強くもなければ耐性があるわけでもない。
それはここで出血の跡のにおいがしないことからもわかる。
松明で普通に追い払って進んだのだ。
「炎!? こ、コウモリさん!? 脅かしちゃったかな……」
「大丈夫、脅しに来ていたから。ジンコーさんも多分まだ無事だから、急ごう」
「は、はい!」
とにかく洞窟を進んでいく。
先に行けばいくほど暗がりは深くなり思ったよりも広い。
水場もちょくちょくあって最悪喉を潤すには問題なさそう。
大きなトカゲ魔物なんかもウロウロしているが彼らはあまりこちらに興味を示さない。
身体をうまくぬめらせて保護し寝ている。
こういう気候もそのうちアノニマルースに作らなきゃなあ……
中は真っ暗な影響で誰も彼もほぼ目が発達していない様子。
つまり相手は暗闇で何らかの悪影響を受けない。
不意打ちにだけ気をつけて歩む。
「そこ、見た目より水場が深いのでこちらに」
「あ、はい! すごいですね、私は全然わかりませんでした……」
「正直知識と慣れですね。それと目には頼り切らないというのも。私も初めは――」
とにかく話を尽きないように回す。
どうしてもこういう場では不安が先行しやすい。
私は平気でもメープルの心が挫けたら動けなくなる。
だから……
「ウオォォ……!」
「ひゃっ!? 今度は!?」
「どうやらかなりご立腹らしいから、ちょっと鎮めるよ」
吠え声から少し遅れて。
"観察"……うんレベル30代。
そこまで強くはないかな。ここのヌシかもしれないけれど。
歩む姿が壁の向こう側から聞こえる。
私達よりもずっと大きく洞窟の天井にまで届くんじゃないかという大きさ。
6足の足を重々しく歩むのは……
まるで姿は恐竜。
しかし大枠としてはそこらへんにいるトカゲにしては大きな魔物たちの巨大版か。
「さっきのやつの分腹が減った、絶対食う……!」
「うーん、食欲がメインか……でもジンコーは無事なのはわかった」
「ひ、ひえぇ……!」
あまりに大きく鈍重そうな姿。
私達を丸呑みできそうな口を大きく開いて。
「グオオオオォ!! 食わせろ!!」
また大きく吠えるのだった。




