三十一生目 確認
スイセンとメープル……
どちらを私が担当する……?
今優先すべきは……!
「ふたりはスイセンを見張ってて!」
「はい!」「了解しました!」
「あっ、ボクのミューズ! ……っもう、まあ、待つけどさ。もどってくるって言ってくれたからね。そうそうブス、お前小神だな? しかも多分、誰かの神使でもあるだろ」
「えっ、まあ……蒼竜のね」
私は腕のところに輝かせた雪山の紋章を輝かせる。
蒼竜の【住所】だ。
それを見た途端露骨にスイセンは顔の花を萎えさせる。
「うわ、蒼竜とかないわー……キッモ、マジか! 一応言っておくが正面切って戦う気なんてサラサラないからなこっちは! ブスと戦って傷がついたら世界の終わりだぞそんなの!? ハァ〜、良いか、こっちはこっちでこれまでちゃんと成立させているんだ、文句を言いに来る前に、ちゃんと村を見てこい。逃げも隠れもしないからな。そのかわり攻撃したら全力で逃げてやるからな!! 分かったかブス!!」
「あ、ああ……なんというかもう、うん」
どこからか取り出した爪磨きで手袋を外しつつ爪を磨いている……らしい。
わざわざ隠しながらやっている……
"鷹目"で見られるが変な逆鱗に触れそうなのでやめておこう。
まったく封印してあるから小神としてバレないといっていたのはなんだったのか。
いざやりあってしまえば割とバレる……
「何かあっても、全力で抑えておきます!」
「う、うん、頼んだ!」
「僕もちょっと個人的に聞きたいこともあるしね〜」
「う、うん……?」
ちょっとハックの考えていることはわからないが……
彼らに任せるのならやることがある。
まずは神力の開放を!
「ハァッ!」
「んなっ」
鱗と宝石で出来た飾りにヒモを通して首から下げている。
単なるヒモじゃないので普通の戦いで壊れる心配はないほどのものだが……
それを掴み胸の宝石に寄せて……発動!
胸に埋められている美しく磨かれた赤い宝石から光が溢れ私を包み……
全身に不可思議な力が溢れ出す!
髪のようなたてがみが大きく揺れるほどの風が生まれ……少しして落ち着く。
「キモすぎ、どんだけ奥の手を……!」
「ふたりとも、受け取って!」
「んなっ、まだあるのか!?」
ここで"神魔行進"!
私の胸宝石前に腕をかざすと神力の輝きが集っていく。
そしてその集まった輝きビーム状に放ってたぬ吉とハックに当てる。
そして凄まじい力がふたりを包み込んだ!
これで安心だ。
存在や格が違う程度では負けはしない!
「おおー! す、すごいです!」
「力が溢れてくる……今なら誰にも負けないかも! 特に、芸術で!」
「ブスがブスを重ねるようなことをしやがってほんの美しさのカケラもない――」
「後は頼んだよ!」
いちいち中身のない話を最後まで聞く意味は無い。
とにかく急いで外に追おう。
扉から出ると先程の荒れ具合が嘘のように元の生垣にもどっていた。
メープルは……いたいた。
少し先に走っている。
すぐに追いついて……と。
「私も一緒に行くよ!」
「あ、ありがとうごさいます!」
「村でいろいろ確認しないといけないみたいだけれど……どうなるかわからない。何があっても、最悪アナタは守ります」
「……はい! ありがとうございます! 早速で悪いのですが……」
メープルは走り疲れたのかみるみる速度が落ちていく。
そして私を見る目。
よし。
再びメープルを抱きかかえて……
ダッシュだ!
本当はとげなしイバラを使いたいんだけれどアレはやるとニンゲンなのかどうかさえ見られる目が怪しくなっちゃうからね!
村へは割とすぐについた。
何せ今度は道を使えたし気配とか気にせずメープルが指差すまま走ったからね。
肝心のメープルは今ぐったりしているが。
それでも村に入ればさすがに向こう側も仕事をしている者たちがこちらを見て気づく。
結構人数はいるもののやはり小さくまとまった場所。
おそらくは噂もすぐに流れているはず。
「う、うう……」
「おんや? お前さんは確か今年スイレン様に選ばれたところのジンコー? あれ? いや、何か言っていたような……どうして誰かさんと共に? 急にいなくなって、探していたヨ」
「あ、こんにちは」
「うう、ごめん、おじさん、少し急ぐから……」
メープルはおじさんの話を聞きつつもふらふら駆けながら家の方へと急ぐ。
高速で移動して酔っただけだからまあ大丈夫だろう。
おじさんからも敵意は感じられない。
「そうかぁ……おっと、こんにちは、オマエさん誰かはしらんが、具合悪そうなジンコーを送ってやってくれい」
「はい、もちろん」
まずはメープルの家へ急ごう。
細かい話の聞き出しは後だ。




