二十九生目 美醜
休憩を終えスイセン邸前にもどってきた。
さすがにインパクトが強すぎて簡単に脳内にインプットできたからな……
空魔法"ファストトラベル"は正確な記憶が大事だからね。
「元気、戻りました! 休ませてもらってすみません、もういけます!」
「はい!」「うん!」
「行こうか!」
さあ……スイセン邸に足を踏み入れよう。
まずはこの花垣たちか……
さてまずは1歩。
足元の草から一気に神力の流れがほとばしる!
周りからしたらいきなり私が止まっただけだが……
相手の結界……テリトリーに踏み込んだ!
「ごめん、走る!」
「えっ!? ヒャッ!?」
さっとメープルを抱きかかえたぬ吉
とハックに"以心伝心"!
目の前……花の中から1つ急激に大きくなり……
ツルや茎を踊らせ葉を構えてきた。
魔物だ!
わざわざ根を張っているやつを相手にするか!
ダッシュで抜ける。
ハックたちは速攻でその場から土偶を生み出し……
たぬ吉は草ゴーレムを展開しだす。
駆け出すとすぐに仕掛けてきた!
「わっと!」
勢いよくつけたツル先の大きな葉が光と共に振り下ろされ地面が響くほどの衝撃。
大丈夫全員避けた!
「うわぁ、次々来るよー!」
「わざわざ付き合う必要はないから、行こう!」
「ゴーレム出来ました! 大変なので乗っちゃってください!」
いきなり地面がうねるほどにあちらこちらから魔物植物たちが立ちあがり巨大化していく。
こんなにも潜んでいたのか!
道を完全に塞ぐほど大きくなり根が地面をうねらせるほどにでかい。
たぬ吉がたぬきっぽいゴーレム生成完了してハックが土偶たちに火を吐かせ時間稼ぎ。
みんなで草ゴーレムの肩まで乗ると。
「少し我慢してね!」
「えっ!? な、何が――」
「行きますよー!!」
私達やたぬ吉ハックもまとめて掴み……
ぶん投げた!
「――ぅあっギャーーー!?」
凄まじい絶叫と共に私たちは空を飛ぶ。
たぬ吉は投げ飛ばされている最中に草ゴーレムを操ったのか草ゴーレムの身体がバラバラになりたぬ吉に急速吸収されていく。
そうして……そろそろ地面!
「よいしょ!」「わあっ!?」
「ついたー!」
「っと、みなさん無事ですね!」
「あわわわ……」
メープルが目を回しているものの無事ではある。
このまま植物が来る前に中に入ろう。
扉は私達が来るからか植物が根をはってロックしてしまおうとしていたが……
「それっ!」
回転して尾ビンタ!
扉がバンと強く開いた。
よし突入だ。
そのまま進んでからメープルを降ろす。
そのうちにふたりが扉を閉じていてくれた。
「よし……あっ」
「あ、貴方様は……まさか!」
部屋の中は広いエントランスになっており階段が中央から上へと伸びている。
事前に視ておいたけれどエントランス内1階は誰も居ない。
しかし2階と1階の間にそれはいた。
そこには華奢なニンゲンらしきものがいた。
白い手袋をはめ細かな装飾のあった露出の少ない服を着ている。
そして顔に花が咲いている普通の男性だ。
"観察"!
[スイセン Lv.58 比較:少し弱い]
[スイセン 美の神。美しきものを自身の力として操り最も美しくあろうとする]
名前は……まんまのタイプだったか。
「小神スイセン……!」
「あ、あのスイセン様ですか!? 私の妹を知りませんか!?」
声をかけられたスイセンは顔の睡蓮をこちらに向けて咲かせ……
「うわ、本当にここまで来やがったよブス共が、ゴミカスはさっさと外で自害してくれる? 自分の顔がいくら残念だからといってもわざわざボクのところまで来ても、ボクの威光のせいでさらにブスが映えるだけ、二度と変わらない醜婦としての絶対的価値を物にしたところでさ、死ぬ準備出来ている?」
「えっ」「うわぁ」
ものすごく分かりやすい皇国語で開幕罵倒された。
こいつ……思っていた何倍も口が悪い!
「あーあ、後で掃除させなきゃなあ、土足で神のいる場所を踏み抜くとか、ブスは脳まで歪んでるんだね、可哀想に、お前らの汚れたブス足にボクの家床が汚されなくちゃならないだなんて、世界の損失だから世界というかボクに即謝罪して去ってほしいよね、もちろんこの世から」
「あ、あの! 聞いてくださいスイセン様! 私にそっくりの妹がいるはずなんです!」
「そう、今年ミューズとして選ばれ数日前にそっちに行っているはずだ!」
「ああ!? ブスが喋……んん? お前、いや君は……まさか……そうか……クク……」
何か……ひとりで納得しだしたな……
スイセンは話している最中も顔の花が頻繁に変わる。
花の種類ごと変わってひと通り話し終わると睡蓮に戻るらしい。
なんというか……賑やかな人だな……
「彼女の妹ジンコーさんが、彼女の身代わりになったんだよ」
「ジンコーさん含め、捧げられている人々が無事か確かめさせてもらいます!」
「なんだ……? そういえば男もいたか……男はどうでもいいな……それにしてもやはり、クク……!」
スイセンの顔はシロツメクサが咲いていた。




