二十八生目 探索
道なき道をゆく。
というより道があると他のニンゲンたちとの遭遇危険性をかんがえ回れ右。
さて……次はどこに行こうかな。
「ローズさん? あの……そっちはまた違うような……?」
「ああ、ごめんごめん。すこし探索しておきたくて。ちゃんと行くから焦らないで」
「お姉ちゃんは昔から割とそういうところあるよね〜」
うーむ。
"絶対感知"に光魔法"ディテクション"などによる脳内マッピングはついついたくさんやってしまう。
結構探索すると見つかるものも多く探知で引っかかった物はちょっとした……今すぐいらないものでも少し分けにいってもらいたくなる。
これは冒険者のサガ……何せ収益にも直結しがちだし。
それにしても見つかるものは基本的に汎用物であり同時にありふれているもの。
外界だから特別な品はまあないよね。
でもこういうのも経験だし将来に繋がるから。
「ローズさん、何か拾えました?」
「うん、花がね。ここらへんの地域は確かに花が多いみたい。スイセンを花に例えて崇めていると言っていたし、移動先も自然に似たような感じになるのかも」
「へぇ〜、そういう理解にもつながるんだねえ」
「あと、花自体染色や薬膳にも使えるしね」
「ええ! もちろん飾っても良しです!」
あとメープル自体が村から出てもう既に何日もたっている。
彼女には悪いが対神の警戒をしつつトラップを避け接近するにはこうしたほうが良い。
救援時に1番やってはいけないのはミイラ取りがミイラになるになることなのだから。
それに焦っていて自己管理がやや危ないメープル。
実は見ているかぎり結構疲れやすい。
慣れない攻撃に晒されながらの徒歩に焦燥感は確実に体力を奪われている。
だからペース合わせという意味でも結構大事なのだ。
私自体の行動は高速だから問題ないしね!
「ヒャッ!? また草むらが揺れた!?」
「気をつけて、さっきよりも強そう!」
出来るならこのままこちらの手をスイセンに見せず近づきたい……
またお帰り願おう!
ふう……何度も戦闘を繰り返していてるわけでもなく1度もまともな戦闘もないのに。
なんかすごく疲れた気分だ。
明らかに妨害されていてメープルを守るために気を張り巡らすというのは割と普段と違う神経を使う。
まあまだ大丈夫だ。
例えさっきみたいにいきなり四方の崖が崩れてもなんとか対処できるはず……
それに。
「みなさん、見えました! あれが話の通りならば……!」
「スイセン邸……! ついた……!」
「やっとあとひと息〜」
「なんだか傷ひとつもないのに疲れましたね……」
みなさすがにお疲れの様子。
いきなり乗り込むのは危険だよなあ……
幸いこの屋敷の見た目からしてすぐに覚えれた。
まず迎えてくれるのはむせ返るような花のにおい。
それもそのはずまず庭には1面の花。
大量の植物たちが自然に道を塞いでおる。
さらに建物も特徴的だ。
ひと目見た時の印象としては……まるで生きている。
草木が壁を覆いつくしそこからも花が咲き乱れている。
なんというかいくらなんでも私でもわかる。
これは異常だ。
生物の花がこんなに季節外れだろうとおかまいなく咲き乱れているだなんて……
そして注意深く思考を張り巡らせたからこそ気づけた。
この地は……神力が張り巡らされている!
「それじゃあ、行こう――」
「待った! おそらくここから1歩でも進むと完全に感知される! 今までのは小手調べでも……おそらくこの先は容赦がない!」
「え? 小手調べ? 容赦がない?」
メープルはちょっと分かってなさそうなので少し待ってもらって。
3匹寄り集まって作戦会議。
「どうする?」
「さすがにこのまま無策で乗り込むのは、少し怖くないですか?」
「いやあ、そろそろメープルさんのためにも、ジンコーさんを助けに行きたいかなぁ」
「うーん、悩むところだけれど……」
そうだなあ……
みんなでチラリとメープルのほうを見る。
こちらの方を不安げに見つつもその体は泥に汚れていた。
せっかくの服はほつれ皮膚には治したものの浅い傷跡が残っている。
無理をしていてかつ焦っているのは明らかに見てとれた。
「……よし。数分だけ休もう」
空魔法"ファストトラベル"でニンゲンの街へと帰る。
たぬ吉とハックはその場に残って警戒しつつ休憩。
私はメープルと共に宿に帰り……
彼女の着替えまちをすることにした。
今のうちに私も良く筋肉伸ばしておこう。
毛皮も整えて……と。
「すみませんっ! 時間かかっちゃって!」
「あ、いやむしろもう済んだんだ……気分は大丈夫?」
「あ、そこははい! むしろもっと妹に会いたい気持ちが高まりました!」
すぐに扉が開け放たれそこには違う服に着替えたメープルが。
あとは軽い傷は私が治癒する手伝いをしよう。
聖魔法"トリートメント"も時間をかけたらあまり痛み無く治せるはずだ。




