二十七生目 妨害
岩が転がって来たのを"無敵"でやりすごした。
思ったより便利……
「あ、危なかった〜」
「すごい大きさでしたね……当たったらと思うと……」
「だ、大丈夫でしたか!? ローズさん!?」
「ええ、メープルさんも無事で良かったです!」
ふう……
山は危険だ。
もっと気をつけて進まないと。
その後。
「木が!?」
私達に向かい大きな木がいきなり倒れてくる。
なんだ!?
シロアリでも巣食ったのかな"無敵"!
木は私達の方向からわずかにそれて倒れきる。
よしよし……
「危なかったですね……先程といい……」
「まあ危険地帯というのはどこでもつきものだもんねえ……」
「あれ……? 私の知る限り、今まで1度もこんなことは……」
「でも確か、ここらへんはあんまり来たこと無いんじゃなかったっけ? それなら整備自体があんまりされていないのもおかしくはないよ〜」
「そう……ですね……?」
なんだか少し違和感を覚えているようだが……
冒険としてはよくあることだ。
普段はみんななので何も言わず避けるだけで済むから特に記憶に残らないだけで……
さらにその後。
いきなり地面が崩れ。
斜面から土砂が降り注ぎかけ。
なぜかあちらこちらから木が折れてたくさんこちらに転がってきて。
いきなり岩が降ってきた。
…………
「「いくらなんでもおかしい!!」」
さすがに外界でこのおだやかな環境からの連続した自然破壊活動はおかしい。
というかさすがに私もにおいを嗅ぎつけた。
気の所為ではない……神の力があるにおい!
おそらくはサイコキネシス系の類と同時に自然現象化させギリギリのラインでこちらに違和感を感じさせない攻撃。
単なるサイコキネシスならすぐに気付けたのに……!
「私達明らかに攻撃されている!」
「私たちいくらなんでもさっきから幸運が続きすぎじゃないですか!?」
「「……ん?」」
あれ。
私の話とメープルの話が噛み合っていない。
「えっと、いつもギリギリなところで私達無傷で済んでますよね? 普段、さすがにここまで災害があったら、村のみんな総出であたらないと危険なのに……これって、もしかしてスイセン様の加護なんでしょうか? 私、スイセン様をもしかしたら危険な目に合わせるかもしれないのに……」
「え、いや、うーん……」
なんというか彼女の中でやはり小神スイセンの存在があまりにも大きい。
これ明らかにスイセンの妨害だろうに……
私が外しているだけだ。
果たして善神なのか悪神なのかはわからないが……
根本を成す信仰の前にして彼女が正常な判断が出来るのか。
それがすこし不安要素だ。
「これだけ荒れていると、スイセンさんのお屋敷もどうなっているか不安だね〜」
「これまで以上に気を引き締めましょう!」
「は、はい! 急がないと! ジンコーが土砂崩れに巻き込まれたのかもしれませんから!」
とりあえず急いで……うん?
私の耳が音を捉える。
こちらが気配を消していたとは言えさすがにあれこれ騒げば現地民は気づくよね……
みんなが身構えるのをメープルは不思議そうに見つめ……
茂みから魔物が飛び出してきた!
"観察"!
[ナッツリス Lv.10 比較:練習相手]
[ナッツリス 大きなしっぽは意外に脆く触られるのは嫌う。口にあるほおぶくろは常にきのみが詰まっている]
これらのような魔物たちがざわっと現れた。
……ふう良かった。
人里近くは平和だなあ。
「あ、これ大丈夫かも」
「ローズさん!」
「うん、任せて!」
「騒がしいよそ者たちめ!」
あちこちからげっ歯や爪が飛来してくる!
敵たちを心の中でロックオン……
"無敵"!
多少慣れないもののこの2足歩行でも楽に避けられるほど勢いの弱まる攻撃たち。
それらをステップで避けつつさらに"無敵"!
また私達に向かおうとして……彼らの興奮は一気に冷めた。
「あ、あれ……?」
「なんであんなに怒ってたんだ……?」
「まあいいや、あんまり荒らさないでよ」
「もちろんー!」
"言葉を越える教師"で素早く言葉を覚えそれぞれに光神術"サウンドウェーブ"で音を作ったり身振り手振りで返事する。
よしよし。
なんとかなった。
「あ、あれ? 魔物さんたち一体何が……?」
「どうやら脅しに来ただけみたいですよ。気をつけて進みましょう」
「は、はい……? やはり、スイセン様の御加護でしょうか……?」
うーんそうなんというか……
変に訂正して揉めるのも嫌だよなあ。
みんなもうまい返しが思いつかないのか黙っていた。




