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二十四生目 双子

 クーランの銀猫という私の所属ギルドがある宿で私は依頼人と会う約束をしていた。

 少し早くついたのであれこれ整理したり久々にギルドマスタータイガと親睦を深めたり。

 他のみんなは出払っているのは残念だが全員仕事で動いているので仕方ない。


「すいません! っ遅くなりました!」

「いや、むしろ早いぐらいだ。今開ける」


 扉の向こう側から小さい子の声がした。

 タイガが太い銀尾を持ち上げながら歩み扉を開くと……

 そこにはひとりの少女が立っていた。


 私のホリハリー形態……2足時の今身長が伸びたのでより子どもって小さいなあって変な気分になる。

 私のケンハリマ形態だと見上げることになるのにね。

 それはともかく。


 おそらくは10代後半くらいの女性で見た目はまるで儚く美しい女性。

 なんというか偏見で言うならば清楚だとか教会に務めていそうといった感じで長く伸びた髪が特徴的か。

 毛皮やら耳長やらもなく"観察"した限りでもいわゆるニンゲンらしいニンゲンの見た目をしていた。


「メープルさんですね」

「はい」


 正面からどいて椅子に誘導されるのを見届けて……

 私も机をはさんだ正面に座る。

 タイガは事前に用意してあったお茶を注いでくれた。


「では、詳しい話は直接といったことでしたが……確か、妹さんの救出依頼だとか」

「はい。正確には……双子なんですが、私には大事な片割れがいます。妹は……私の代わりになったんです」

「妹さんは双子で……代わり……?」


 メモを走らせようと思った手がいきなり止まる程度にはなかなか重い話っぽく聞こえる。

 タイガは静かにうなずくのみ。

 なるほど……たしかに厄介だとして私に投げられた話みたいだ。


 こういうある程度ギルド側も聞いてはいるけれど込み入った部分は私が直接聞いたほうが良いという判断か。


「ええと……ここから少し話が難しくなるのですが……地方神というのはご存知ですか? 小さな神様のことなんですが……」

「え……まあ……少しは。そういう案件にも関わったことはあります」

「良かったあ、確実に信頼できる人を紹介しますって言われて、たまたますぐに案内できるって言われて、本当にそういうのに詳しい人が来てくれた……!」


 一応私今は小神らしいとは絶対いえないんだけどね!

 大人の女性と言うにはまだ遠いメープルは少しだけ緊張がとけたのか年相応な柔らかな顔を見せる。


「そういってもらえるとこちらも嬉しいですね……ええと小神が絡む案件なのですね?」

「あ、そうでした、説明の続きを! 私達は奥まった村で暮らしているのですが、生まれてこの歳近くになるまで、なぜそこの村がやたら……えーっと、ちょっと裕福な方が発生したり、全然そうじゃない私達みたいな家があったりするのか、全然分かっていなかったんです。1年に1回裕福な方が発生して、私達にも少し分けられて……なんて、それまでは当然のことだと思っていましたし、大人たちも私達子どもには複雑な事は伏せていたんです……ふう……」


 ふむ……

 メープルが話しそしてお茶を飲む。

 まくしたてるように早口で話した分落ち着いている。

 私は適度に相槌をうちつつなだけなせいでメモが捗る。


 どんどんメモを足していく。

 小神が絡む……年に1度裕福な家庭が発生する……不自然……

 そして……双子妹が身代わり……うわ。


 うわ。


「もしかして、年に1度人が小神に捧げられる……?」

「はい……いいえ、『ミューズ』になるんです。私はそう聞いています……しかし、実は必ず裕福な家庭が生まれるわけではなく、違う年もあったんです。私はまだ、詳しくはわかりませんが……今までに生きていた中で1度、そして今回……」

「妹が身代わりになった年に……つまり前も似たようなことが?」

「それでも、私と妹は私達でない限りバレ無いほどにそっくりなんです! いや、そもそも、妹が身代わりに『ミューズ』へなってしまったこと自体がとても大変で、妹があんなこと言い出して私をかばわなくちゃ……!」

「落ち着いて、お茶を飲んで」

「…………ふはぁ………すいません」


 どんどん必死になっていくと自分の世界に入って話しちゃうタイプか……

 いやまあ普段はそうでもないのかもしれないがパニックになった者だなんてだいたいこうかもしれない。

 ええと……とりあえず。


「話をまとめると、メープルさんの双子の妹が姉であるあなたとそっくりなのを利用して、メープルさんの代わりに身代わりになり、小神へ身を捧げ帰ってこないから助けて欲しい、と」

「そ、そうですそうです! 他のことはともかく、そこをお願いしたかったんです!」


 なるほど……これもしや人柱かあ……

 そういうタイプの相手だとどうすれば良いのか。

 また新たなタイプの神だ……

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