二十生目 騒々
謎の犬を……"観察"!
[ケルベロスLv.85 比較:とてもつよい 状態:分神 異常化攻撃:煉獄炎 危険行動:門の焔鍵]
[ケルベロス 個人名:キルル 個人名2:くねね 個人名3:にょろろ
月に所属する大神の一柱。現在は3頭のうち1体が分離している。魂の質を見極め地獄から出さないか地獄に入れないかを判断しているという]
あ……2つの蛇頭は含まずケルベロス……
くねねではないほうはにょろろと言うのか。
……ケルベロス!?
すっかり忘れていたがケルベロスって……
いやというかショックで流していたが「あいつの伴侶」ってもしかして!
「……ホルヴィロスのお母さん?」
「その……私はホルヴィロスの伯母にあたる……」
えぇ……
なんか事前に聞いていた情報と違う。
どういうことなんだ……? というか痛いから早く治そう……
「ほら、いきなり殴りかかった挙げ句そんなことを言うから混乱しているではないですか! くねね、起きてください」
「致し方ないのでこのへびめが説明して差し上げましょう。キルル様の姉妹にペロ様がおられるのです。その方がホルヴィロス様の母君でいらっしゃれます」
「姉妹……なるほど、もしかして違う頭が……?」
なんとなくさっきの"観察"からその可能性を察して告げるとキルルはより複雑な面持ちをした。
そういえば当然のように会話していておかしいなと思ったらみんなわざわざホルヴィロスと同じ言葉を使っているのか。
「まあ……そんな感じの事情がある。そこはまあ良いじゃないか。とにかく傷はどうだ?」
「あ、えっと……回復しているので大丈夫です」
「そうか……ああ、ここ、派手に壊れてしまったな……後でホルヴィロスにでもやらせようか」
「およよ……ホルヴィロス様、伯母君にいきなり仕事を押し付けられておかわいそうに……」
「完全なる巻き込まれ事故に、へびどもは涙が止まりませぬ……」
1滴も涙こぼれているようにみえないんだけれどね……
改めて帰り道に説明を受けた。
彼女は地獄の門番ことケルベロスのキルル。
ケルベロスといえば頭が3つだが彼女はその中の1つ。
残り2頭とは別行動しているらしい。
そんなことも出来るんだなあ……
そして私に殴りかかった理由は……
「前多くの者が地獄に足を踏み入れたな。それで私としては業務怠慢と言われてな……」
「前……? あっ! 魔王が……というより魔王の力を利用した者が広げた、地上に広がった地獄……?」
「そうだ。肝心のやつは既に死に絶えてしまったようだが……」
「ああ……それは……確かに私達が倒しました。それにしても足を踏み入れたとは言っても、地獄側から来ているんじゃあ」
そうか……業務というのはそこに繋がるのか。
……あれ。キルルが私の話を聞いた時に表情を変えた?
「な、斃したのはお前だったのか!?」
「え、あ、はい。ひとりではありませんが」
「お前か、私の仕事を奪ったのは! まあ、助かったが……そうか……先程の攻撃によって私は仕事を終えられたということにしておける。私側もアレコレとあってな、ひとまずは上も納得する分は出せるはずだ」
「は、はあ……」
知らなかったのか……
ものすごい顔を詰められた。
言わなければよかった方の情報だったか……?
まあとりあえず彼女の仕事が終わったということはこれ以上何かしでかすつもりないのだろう。
とりあえず彼女と共に自宅へとたどり着いた。
……ん?
「そういえば私怨もあると言っていませんでしたか? そこのくねねさんが」
「そ、それは……何でもない」
「空気の読めるへびどもがお教えしましょう! どうぞくねね!」
「そう、キルル様はホルヴィロス様の意思は尊重しつつもそれはそれとしてかわいい姪甥が殺された事に後々に腹が改めて煮え、悪い虫だったら許さないとアダダダ!!」
「あのな、これ私も痛いんだ、わかるよな?」
自分の尾である蛇頭……確かくねねがキルルによって頭を抑えつけられさらに首を変に曲げ伸ばしている……
キルルが無言で私に視線を送ってきた。
私は……否定の意思をホルヴィロスの扱う言語身振りで伝える。
そこでようやくくねねは解放され伸び切っていた。
……これ以上の追求はしないでおこう。
互いに気まずくなる。
自宅の中に入ってももう誰もいない。
本日の業務は終わりでホルヴィロスは病院に行っているからだ。
「中で待っていてください、少ししたら帰ってくるはずだから」
「お邪魔するよ」
「おお、ここがホルヴィロス様とローズオーラ様の愛の巣!」
「へびめらも恐れ多くも入らせていただきますとも……あれ? 愛の巣にしては些か木片だらけなような」
さて……
どうやって私とホルヴィロスがくっついたと思わされたのかと聞き出そうか。