十九生目 門番
こんばんは私です。
先日死の予知を受けたが……今の所飛来する門の影は現れない。
今日は病院に行ってきた。
ホルヴィロスが本格的にやりたいことがあるからと行っていて案内していた。
さすがに誰かわからんやつがいきなり言って「ワクチンを導入しないか」と言っても話聞いてくれないからね。
ワクチンは大事だからぜひ実装してほしい。
夜の2つの月はキレイだが今日片方は新月でもう片方はかなり欠けている。
あの月の片方は地獄と呼ばれる世界らしい。
はるか昔に閉じられた世界……うっかりこの世界に同化して広がりかけたがなんとか閉じれた。
私も大きな仕事たちはひと通り終わったし……
そろそろ本格的な冒険を再開しようかなあ。
やることはもちろん……というか実は国からの依頼であるけれどたまにははねを伸ばしたい。
皇国や帝国はアノニマルースやその関連した相手たちを倒し……
それを持って『魔王の残した呪い』と喧伝した内容の終息を宣言するつもりだ。
同時に世界中に在るはずの7つの剣……宝石剣を全てニンゲンの管理下に置くつもりだ。
魔王の処遇はやはり曖昧なままで。
多くのトップは魔王のことを信じることはできない。
ゆえに最終的に殺すとどうなるか……という点も含めてどうしようもないというのが現状。
本当に呪いでも配られたら冗談じゃない。
もちろん魔王を実際見る限りそんなことは考えてなさそうだし力もないだろうが。
だが創造神である彼自体完全に滅ぼせるものではないし……
する必要ないのならしないのは無難ということだ。
魔王自体にも実はガチガチの監視や定期的な話の聴取も行われている。
魔王の力の源である宝石剣はかなり重要視しているため絶対に隔離する必要があるというのも含め……
今後は魔王対策に追われそうだが……それでも。
皇国や帝国それにアノニマルースにとって情報を持ちつつも魔王自体を利用できるというのはあまりに大きなアドバンテージ。
最悪兵力そのものにもなりうるしね……
魔王の乗り物は勇者でしか倒せない存在なのだから。
こういう暗い日は星あかりがよく見える。
魔法を使わずにこうやって歩いて帰るのもいいよね。
そう……空を見ながら……空!?
あの影はなんだ!?
飛来する門の影……まさか!
あんな遠くにいるのに……速すぎる!
「わああぁーッ!?」
走りながら全力鎧展開!
魔法とか間に合わない!
秒あるかないかで遥か天空の影は……堕ちてきた。
「ッああッ!?」
凄まじい力が光と共に私に飛び込む!
回避もできず展開した鎧ごと貫くような一閃!
吹き飛ぶ……!
身体が空を舞い近くの建物へと叩きつけられその壁が壊れる。
そして中に転がり込んでやっと止まった。
あっぶない……生きている……なんとか……!
身体が突然の痛みに軋み砕けた鎧は役目を終えたため破棄。
これほどのパワー……それに今の光。
確実に私の命を狙いに来ていた。
部屋は無人。
小さい倉庫かな。
敵は……目の前にいた。
身構え新たに鎧展開。
魔法も全力詠唱。
補助と回復をしないと……死ぬ!
「なるほど仮にも今の不意打ちを受け切るか。完全に察知を掻い潜って攻めたと思ったが、ホルヴィロスに勝てたのは偶然ではないらしい」
黒い影の中に浮かぶ瞳。
その力強い光は……不意に害意が消える。
え……ええ……?
ただよわせていた力の気配がスッと消えて。
暗がりの中から私の方へと歩んでくる。
「おお、それほど身構えないでいただきたい。へびどももキルル様も貴女の敵ではありません、さように怯えないでいただきたい!」
「そう、われらは味方です! 最悪キルル様だけ怒られてくださいね、へびは怒られたくありませんから!」
さらに……影はひとりなのに道化じみた声がふたつする。
その正体はすぐに分かった。
……まず蹴り込んだ声の主は。
翼の生えた犬だった。
コウモリにしては刺々しい翼を持ち犬らしい茶色の毛皮に頭の横から生える巻角。
そして……犬とは思えない2つの尾は蛇の頭をしていた。
「突然攻撃をして済まない、お前の魂を知りたかったのだ。まああいつの伴侶ならば、高潔な魂と共に受け止めてくれるとは信じていた」
「えぇー、キルル様わりと私怨と業務が含まれていまブッ!?」
「ああっ!? くねねがキルル様の蹴りで死んだ! このヘビでなし!」
「うう……へびの亡骸は故郷の土に埋めてくだされ……ガクッ」
「今大事な所だから静かに」
なんだか……いきなりコントが始まったような。
くねねと呼ばれた蛇は大げさにガクリと倒れ込んだが平気そうだ。
えーと……"観察"。




