十八生目 占師
ニンゲンの鍛冶師カンタに胸の宝石部分をロックカットしてもらっている。
丁寧に工程を重ねてゆき……
そして丹念に磨かれ……
「よし……あとは余計な傷がつかないように……と。テテフフライトのクズ石たちも……よく馴染んだ。これでよし。お疲れさまでした」
「お……終わった? ありがとう……」
動かないようにしていたのもあってなんだか身体がこわばってしまっていた。
ふう……身体の緊張をほぐすために全身をよくのばす。
さて……あえてちゃんと見ていなかったのだが。
「私、どうなったかな……?」
"鷹目"で見てみると……
私の胸にある宝石は前せっかくの赤色がくすみ若干汚い色に変わっていた。
けれど今はどうだろうか。
光を美しく通すように丁寧なカットをされた宝石は透き通るかのように美しく赤く輝く。
なんというかこういっては何だが……
まるで本来の私に戻れたかのような満足感がある。
さらにまるで元気さがとても充実してきて身軽になったかのような気分。
これが自身の宝石加工……
すごくいい気分だ!
「どうでした? 結構自信はあるのですが……」
「凄い、これは完璧……! こんなに良くなるだなんて!」
「ありがとうございます! あ、これはもらっておきますね」
私が喜んでいたらそそくさとカンタが何かを片付けた。
あれは……
私の胸の宝石を削ったもの?
「それ、何にするの? 単なる削りカスとかじゃあ……」
「それを、これから調べるためにいるんですよ。それが『素材』ですからね」
なるほどなあ……
まあ私には不要になったものだ。
ぜひ回収してもらおう。
後々これを繰り返すことになり……
私の宝石素材がとんでもないことになるのだが。
それはまた別のお話。
こんにちは私です。
今日は少し怪しい雰囲気の場所。
「むむ……やはり視えます……あなたに新たなる試練、死の壁です。空から飛来する門の影がもたらすものです」
「なるほど……ありがとう……門の影……」
私の目の前にあるものは……首。
キリンの頭だ。
周囲は暗く怪しくポウと赤い光がともり。
そして奥にキリンの身体がある。
それと話したのはこの頭。
彼女はデュラフィラ。
高い死の予知能力を持つ頭と体が分離している魔物でキリンみたいな姿をしている。
彼女はこの地で自身の特徴を活かし生活費を稼ぎ出していた。
いかにもな雰囲気をつくりだし占いというものを学んだそうな。
不思議なあまいにおいが漂わされているのも雰囲気作りに一役かっている。
「ふぅ、やっぱり疲れる。口調を変えるのもやめたほうが良いのかな……でもなあ、やっぱり接客業だしなあ」
「あはは……とにかくこっちとしては知らせてもらえるだけでありがたいよ」
「仕事以上に、私の生きがいだからね!」
デュラフィラは今笑ってはいるが彼女は元々この能力を持て余していた。
だからこそそれを昇華出来てよかったのだろう。
占いの技術や能力を磨き今ではちょっとした相談から出張占いまでやっているらしい。
私自身は知りつつも特に占ってもらってはいなかったのだが……
突如死の予知が視えたとお知らせが飛んできた。
なので来てみたら……飛来する門の影かあ……
正直まるで意味がわからない。
門の影が飛んでくるって……
予知自体はいくらでも努力で変えられるらしいがちょっとわからないなあ。
おそらくは飛んでくる事自体は変えられないんだけれどそれで死ぬかどうかは私次第。
「うん。ところで、その予知ってどのくらいで成立しそう?」
「ローズさんのは、もともとかなり読みづらい中でいきなり読めたものだから、変わるのは一瞬だけれどその強度は結構ある……と思ってもらって良いかなって」
「なるほど……変わりやすくもあるけれど変わるラインまで踏み切る一瞬は大変と……」
なんだろう。凄まじい事故とかかな。
そろそろ帰って備えようかなと思ったら急にデュラフィアの頭が持ち上がり慌てだす。
「ちょ、ちょっとどいて!」
「う、うん?」
身体をそらすと頭が外へと飛び出ていく。
私も追おう。
外に出れば明るい空がお出迎え。
外では広い空き地で遊んでいる子どもたちの姿。
どうやらボールで遊んでいるようだが……
……うん!?
「弟がピンチの予感! ってああ!!」
ボール……違和感がある……というよりアレはボールじゃない!?
デュラフィアが叫ぶその先。
彼女には弟がいてデュランマという頭が分離する馬なのだか……
「あははは!」
「それー!」
「いったぞー!」
ポーンポーンと。
飛んでいるものは。
めっちゃ笑っているデュランマの頭だった!
「コラー!!」
「うわあお姉ちゃん!?」
その後突っ込んでいったデュラフィアの頭に弟たちが怒られたのは言うまでもない……




