十三生目 気温
事件は一旦リーダーや多くの用心棒たちの捕縛によって終わった。
闇市場も残党たちは次々狩られ……
急速に被害が縮小した。
しかしまだゼロではない。
なぜなら大本のボス……
そしてのこりひとりの幹部がいるからだ。
まさかカエリラスと繋がる組織すら出てくるとは。
そりゃあカエリラス規模の団体を維持するには大規模な金銭稼ぎは必要だろうが……
やはりそういうのを執り行う闇の商人団体がいたか……
きっと油断すればまたこっそり闇から手を伸ばしてくるのだろう。
だから……油断は出来ない。
それはともかくとして今日は蒼竜に協力代を支払いに来ていた。
「やっぱり違法じゃないアイスが1番だよね〜!」
「すっかりそーくんもアイスにハマったねぇ」
違法アイス屋から始まった話を普通のアイス屋で返す。
まあ蒼竜はアイス好きだからね。
食べられるならなんでも食べそうだが。
蒼竜は山積みされたアイスたちをニンゲンのような姿でもりもり食べている。
そういえば前蒼竜は冷たいのが好きというのは聞いたことがある。
ちょうどアイスは身体に良いのかな。
「いやー、やっぱり良いね、王道のバニラアイスも! 1周回るとここに戻ってきちゃうね!」
「私はきのみアイスとかも好きかなー」
「ああそうだ! 今度アヘンチンキアイスなんて」
「絶対ダメだから!!」
アノニマルースではそれらも違法です。
販売ダメ絶対。
こんにちは……私です……
早速疲労で気分はしにかけです……
私達がやっていたのは……
「気温調整魔法陣……3.0調整……」
「「終わったー……!」」
このアノニマルースを快適にしてくれる気温調整魔法陣。
たくさんの魔物やたくさんのニンゲンたち。
とにかく有識者やたくさんの手を借りてやっとここまでの改良ができた。
とりあえずできたといえるレベルだった1.0時代。
細かなアップデートをいくつもこなしたあと大型アップデートとして迎え実験的な調整も多く含めた2.0。
そして多数の誤動作や調整ミスを直しつつも身体の生理的な快適性を足してゆき……
ついに! 要望の多かったアップデートをいれた3.0をリリース出来た。
今まではいわゆる通常範囲内の気温に対してのサポートが基本だったが……
このたび極寒と酷暑に対応した。
今までも暑い気候がいいものや寒い気候がいいものにはある程度対処できたが……
集まればそこは多く気温が変化して周りで抑えられないしそもそも100度とかにはまるで足りない。
各々の気温をその日の体調に合わせマニュアルで変えられるという機能を途中で足していたのもあり無理やり上げ続ける魔物がいるのも問題になっていた。
そこで……今度は広い空き地だったエリアを利用してみたのだ。
「うわ、あっつ!」
「私の魔法で保護しないとまだまだ危ないから離れないでね」
火魔法"クールダウン"や聖魔法"クリアウェザー"で熱を奪いつつ天候から身を守るオーラをまとわないととてもじゃないが居られない場所。
一緒に調査に来た複数名やユウレンと共に現場に調査しに来ていた。
今回のアップデートは事前に都市計画に組み込んであったのでここらへんは今建設を多く行っている。
全部耐燃性の品で出来ていて自然に岩山みたいなのが多くなっている。
たまに特殊な耐燃木材もあるがそれはそれだ。
気温を測るために作ってもらった高温地用気温計は通常ではありえない124度を示していた。
いるだけで体中の水分が抜けきりそう。
私も舌からうまく熱を逃している。
「はあぁー、あっつい、ねえもう良いでしょう? 次行きましょうよ」
「いや、各地で調べないとだから……私達の担当行かないと」
「あ〜!」
ユウレンも不健康そうな身体で猫背になり溶けてそうに歩んでいる。
身体に付属する仮面も頭にずらしていた。
よほど暑いらしく言葉に濁点がつきまくっている様子。
それはともかくとして街の様子はまだ住んでいる魔物たちが少ないのに実に賑やかだった。
ここでしか生きにくい魔物たちがにぎやかに自分たちの居場所をつくりあげている。
あの大きな山を加工したもの……噂だと完成時はマグマをたれ流し続けるらしいけど本当かな……
他の地と比べて足元も植物たちはかなり少なく乾いた地肌が出ている。
代わりにあちこちで炎が吹き出てサボテンじみた植物が生えたまにある植物のツル先には赤いきのみが燃えるようになっている。
ひたすら熱いだけで水がないわけじゃないからね。
「水、水……」
外気温に影響を受けにくいように加工された水筒から直接水を飲む。
あっついな……
いやまあそれで正常なんだけど。