二章 八生目 運勢
違法アイス屋は捕まえた。
犯罪はグローバル……アノニマルース内の治安力も高めないとなあ。
「手品の種はわかったけれど、イタ吉はなんで気づいたの?」
「俺昔向こうに住んでたろ? そのころのにおいがしたんだよ」
「ああ……なるほど」
イタ吉が直感で気づいたのはにおいだったか。
私はニオイ消しのにおいに気を取られていたからなあ……
「うぐぐ……おまえたちにはわからないんだ……! よわいぼくらが、どうやってでも強くならなくちゃって……! 思う気持ちが……!」
「あっ……ビラビリリ」
連行されている中でまとめて移動させられている集団。
彼らには枷をつけられていない……実質的な保護枠。
つまり詐欺に騙されたあげく違法物購入してしまったためにこれからあれこれしなくちゃいけない者たちだ。
その中のビラビリリが私とイタ吉を見つけ食いかかる。
言葉だけで身体は震えているが。
「うう、いいよなぁ、どんどん強くなれて……! ぼくはだめで、もうこれにすがるしかなかったのに……! なんでこんなことをするんだよう……!」
「でも、あれで強くはなれないよ!」
「だったらどうやったら、あなたみたいに強くなれるんだよ……!」
つ……強くなれる方法か……
うーん……
「……運だよ! 運があたるまで地道なことをやりつづけるしかない!」
「そんな! そんなどうしようもなく酷いことをしなくちゃならないの!?」
「……そうだよ!? 私が強くなったのは、正直多くは運だよ。なんかこう、ぱっと取ればいきなり強くなるとかないから、みんななかなか強くなれないんだよ……私もね」
「いや、もうちょいあるだろ言い方お前……」
イタ吉が私を下がらせさせた。
なんかダメだったらしい。私もちょっとそう思う。
尾刃イタ吉はビラビリリの前に出て顔同士近づける。
「な、なにを……!?」
「良いか? 強くなるには方法もやり方も多数あってそれぞれに合うものがある。少なくともこれは違う。だからちゃんと俺みたいなのに聞けよ! 運だって振り向かせ方があるんだからな! お前だって、まだまだ発展途上なんだぜ!」
「え、ぼ、ぼくは……」
「お前達みんなもな! 特に心の強さは鍛えられる! どっちも強くなってもっとよくなろうぜー! 困ったら俺のところに……冒険者ギルドに来い! まとめて面倒見てやる!!」
イタ吉の叫びと共に場がざわつく。
なんというか……イタ吉からあそこまであれこれ考えていそうな言葉が出るとは思わなかった。
結局連行を中断させるわけにはいかなかったのでそのまままとめて移動させられていたが……
彼らももどってきたら運を掴めるのだろうか。
それは別の話で……
蒼竜が何食わぬ顔で背後にいた。
なぜか尾刃イタ吉になっているがツノや帽子でバレバレだ。
「うわっ!?」
「俺が増えた!?」
「これ以上増えるのか!?」
「大丈夫大丈夫、これ、そーくんだよ。化けているだけ」
「ハハハ、驚いてもらえてありがたいね! そういう素直なリアクション好きだよ」
蒼竜が帽子を構え直しわらう。
イタ吉の方はわかったようなわからないような。
お互いの顔を見あってキョトンとしていた。
「「ほーん?」」
「で、どうなの?」
「バッチリ! 逃げられたよ」
「っておい! 逃げられたのかよ!」
蒼竜がドヤ顔で言うから思わず同じ姿のイタ吉がツッコム。
まあ気持ちはわかるんだけれどね。
「いやいや、そもそも僕は力仕事なんてしないのさ。縄をもってひとりひとりふん縛るのは正直メジャーな神としてはどうかと思うし?」
「おいおい! こいつぜんぜん役にたたないじゃねぇか!」
「そーくん、煽るのはそのぐらいにして。アレは出来たってことなんだよね?」
蒼竜が爪を1本上に伸ばし前足はかっこつける。
肯定ということか。
「もちろん! きっちりくっつけてきたさ。相手は全く気づかないと思うよ」
「くっつけてきた……ってなにをだ?」
「その……子機だよ」
私が指したのはイタ吉も身につけているリング。
これは送受信機で本機がある九尾博士の研究所と常に情報をやりとりしている。
そして言葉の翻訳すら行われる便利装置だ。
そして……あのとき蒼竜の口内にしこみ蒼竜がさりげなく『リーダー』にくっつけたものは。
ひとつの薄い小石みたいなこれだ。
「んえ? このリング? こんなのくっつけてくるにはデカすぎないか?」
「正確には色々機能をオミットしたうえ小型化したものだけどね。常に音を拾って無線で送信し続けている、防犯用に作ってもらったものなんだ」
元々は大量に出入りしている人員たちをのチェックするためリング貸し出しが間に合わずまた回収もしわすれが多発したため急遽求められ開発された試作品だ。
本来は街に入るさいに説明して渡すもの。
エネルギーが枯渇するまで行い続けるらしい。
「うーん……ようは、どこに逃げたかわかる……ってことか!?」
「正解!」




