千八十二生目 過去
ダカシをなだめた。
少し落ち着いたところで
「ダカシ、キミがアカネちゃんを置いて死なないのであればそれで良いんだけれど、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「ん、なんだ?」
「キミのお父さんやお母さんから、アインキャクラ・ランという人の名前は聴いたことがある?」
アインキャクラ・ラン。
九尾博士の本名だ。
昔研究所を襲われ研究員たちは散り散りに逃げ九尾博士は迷宮の奥まで逃れた。
そこで魔物たちの街の原型を作り閉じているながらも良い街が作られている。
魔物たちにすら自身の出自を隠し私達に協力しているのだ。
「アインキャクラ・ラン? ……なんだったかな。あまり聞き馴染みはないな……誰なんだ?」
「そうかあ、いや、九尾博士の関係者が、その親御さんに関係あったのかもなあってちょっと思っただけで」
九尾博士は昔少し話をしたことがあった。
その時に出てきたこととダカシの年齢から逆算してほぼ時期があっているのだが……
だがダカシは突然何か気づいたらしく顔を向けてくる。
「博士……博士か……! 研究、博士、発明……少しだけだがこっそりと話している時があるの、アカネはともかく俺は知っている……!? そうか、名前はしらないが、そういう単語ならちょくちょく……!」
「本当!? 博士、もしかしたら……!」
私はダカシに九尾博士のことを細かく話した。
特に九尾博士が部下たちと別れた時期やその近辺のことを。
最初はよく分かっていなさそうだったダカシだがやがて深く考え込みだす。
「――かくかくしかじかというわけで。情報が少ないけれどもしかしてと思って」
「ううーむ、時間や父さんたちの出身自体はかなり近いな。直接本人に聞きたい。今はどこにいる?」
「ちょっと変わった場所に隠れていてね……でも私の紹介ならいけるとは思う」
「なら行くか。アカネと再度会うまでに、色々整理したい」
「うん」
ダカシの意見を肯定し早速空魔法"ファストトラベル"。
久々に小さな魔物たちの街へ行こう……
門番たちにゲストでダガシを通してもらい中に入る。
大きな屋敷は町外れになるためかなり目立つ。
ダカシは小さい魔物たちが生活している街の景色を楽しみつつ進み……
九尾博士の屋敷までやってきた。
直接ここまで飛んできても良かったのだがあんまりそういうズルをするとよくないし怒られちゃうからね。
呼び鈴をならして……
……
…………
「出てこないな」
「あれ……部屋の奥にいるのかな」
仕方ないので勝手に入ってしまおう。
扉は施錠してあるが空魔法"ミニワープ"で入れる。
「じゃ、入るよー」
「ん? わっ!?」
ダカシの足に前足を重ね共にワープ。
家自体は普通なので簡単に入れた。
少しダカシが驚いたがすぐに落ち着く。
「なるほど……中も結構広いな……不法侵入して良かったのか?」
「まあ、割とこっちは勝手に出入り良くするからね。こっちきて」
「そ、そうか」
とりあえず私達は奥へと進む。
上の住宅部分にいる時は呼び鈴がほとんど聞こえるから……
いるとしたら地下か少し離れた研究開発施設だ。
地下は出来るなら行かないほうが良いので研究開発施設へ移動だ。
施設中に行けば多くの骸骨たちがせわしなく動き回っていた。
また何か作っているらしくせわしくない。
そしてそれらに指示を出しているのは……
「博士!」
「ん? なんじゃ、オマエか! 少しまた変わったか?」
キュウビ博士が人型になり図面を持っている。
私に気づいてくれたようだ。
「そしてこちらが……」
「ども、ダカシです」
「ん? ……んん?」
九尾博士はダカシをしっかり見るやいなや態度が変わる。
急に顔を近づけダカシの目をぐっと見る。
「な、なにを……!?」
「彼、九尾博士が聞いていた逃げた先に近い地域出身で、年齢がちょうど時期に近かったんです」
「ほほう、まさか、まさかな……確かにその目……気配がどことなく奴らと……」
割と容赦なくダカシの顔を九尾博士はいじり回す。
ダカシはトランスをしたせいで昔とはそこそこ違うとは思うがそれでもどこか見える部分はあるのだろうか。
むしろ……成長みたいなもんだから親にちかくなったのかな。
何かを納得したらしくダカシは解放される。
ダカシは自分で自分の顔を触り直して何となく残る違和感を消していた。
「こいつを借りていいか」
「ええ、そのために連れてきたんですし……というか今度は何の開発を?」
博士が組んでいるのは大きなアンテナ……のようにも見える。
どちらかというと発信側のかな。
そこに繋がる機械も多数試行錯誤の跡が見られるが……はてさて。




