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百三生目 斬爪

 幻の壁の向こうへとイタ吉が入る。

 私は後方に控えてイタ吉に観戦しろと言われた。

 大丈夫かな?


 中にいるのは数に含めない程度の実力な運び屋ネズミくん。

 トランスはしていないレベル18ほどがふたり。

 26がひとり。

 正直イタ吉単体では厳しい。


 ただイタ吉には私がバリバリ補助魔法かけているからかなり強化されている。

 いざという時は私が出れば不意打ちを決められるのも大きい。

 それに彼等が逃げたり隠し玉を出してきたりする可能性はある。

 こっちが深手を負って撤退するにしても退路は必要だ。

 なので私が控えること自体は賛成だ。


 イタ吉が前足の爪を種族魔法で大きくする。

 鋭利な爪がギラつき4体の注目を集めた。

 当然すぐに両者身構える。


「お前ひとりか?」

「だったらどうした!」

「フフンッ、だったら思い知らせてやれ!」


 イタ吉と"以心伝心"を使って耳の情報を私に受け取るように調整している。

 だから壁の中にいない私にも丸聞こえだ。

 以心伝心になって便利度がだいぶ増したのはレベルが上がったおかげもあるのかな。


 最も強い奴が指示を飛ばし2匹がイタ吉を囲む。

 両者ともイタ吉より大きい四足の魔物。

 プレッシャーがかかる。


「行け!」

「うおぉ!」


 牙がひん剥かれイタ吉に襲いかかる!

 イタ吉は冷静に"率いる者"の使用をした。

 私から行動力が引かれスキルが発動する。


 彼等が食いちぎるもの。

 それはただの空気となった。

 直前までいたと思わされていたイタ吉は走るように間をすり抜ける。


「"空蝉の術"からの……」


 そして一閃。

 伸びた爪がさらに光の線を描き彼等の横腹を裂いた。

 あれはかなり深いぞ!


「"気合斬り"!」

「ぐうっ!?」

「がっ!?」


 何が起きたのか一瞬判断が遅れた彼等は地面に崩れる。

 そしてイタ吉はまだ手を緩めない。

 おそらくレベル以上に差がある点としたらここだ。


「らぁ! "乱れ切り"」


 体制が崩れたのを良いことにマウントをとるように上から何度も引き裂く。

 ザクザクと虚をつかれた攻撃が面白いように入りあっという間に血だらけになってゆく。

 まるでレベル差がとてつもなくあるかのような動き。


 そして最後には彼等を強くタックルで吹き飛ばした。

 ほぼ一方的にイタ吉が勝った。


「う……ああ……」

「イタイ……もうムリ……」

「あ!? なっさけないなオマエラ!!」


 高みの見物をしていたリーダー格らしき相手が怒りを撒き散らす。

 まあ確かにレベル差を考えれば勝てる相手だったはずだ。

 それがかすり傷1つ負わせれていない。


 私も結構驚いている。

 イタ吉はかなり強くなっている。

 それはレベル以上の所でも。


 リーダー格の相手がついに前へ出てくる。

 その姿は……

 ネズミだった。


 運び屋のネズミくんと同じ種族のネズミ。

 たてがみがキマっているぐらいしか私には見分けがつかないがそれ以上に彼は強さが違う。

 レベル的にはイタ吉の格上で26。


 だけれどもイタ吉は引かない。

 静かに爪を構えるのみ。

 対する相手はげっ歯類特有の強靭な前歯を剥き出す。


「だったら俺がやってやるしかねえ……」


 踏み込んだ!

 早い!

 歯を……と見せかけての拳か!


「な!」


 イタ吉も反応しきれずに"防御"のエネルギー状の膜で身体を守る。

 それごと貫いた拳はイタ吉に入り後ろへと殴り飛ばした。

 ネズミらしくない、故に強い一撃。


 なんとかふんばって姿勢を立て直すイタ吉。

 『来いよ』といわんばかりにネズミが手招きする。

 イタ吉は地を駆けて複雑な進路で急接近し全身に光を纏ってそのまま強く当たった!


「"稲妻タックル"!」

「……ったくこんな奴に負けるなよ!」

「わっ!?」


 なんと正面からイタ吉の攻撃を受けて止めた。

 あれはまずい、おそらく私の"肉斬骨断"と似たような事をする。

 つまりカウンター!


「おらぁ!! "やり返し"!」

「ぎゃ!?」


 顎に向かって強烈な光を纏った蹴り。

 上へ吹き飛んでそのまま地面へと落ちる。

 震えながらも何とかイタ吉は立ち上がった。


 あれは頭へのダメージが心配だ。

 それでも立つあたりがイタ吉らしい。


「ほう、今の一撃を受けて立つとは、う……!?」

「……アイツ以外に負けるわけにはいかないからな!」


 ネズミが驚いたのは自身の顔に走った血筋。

 イタ吉ががむしゃらに放った攻撃が蹴り飛ばされた時に入っていた。

 面白くなさそうな顔をネズミがする。


 イタ吉と彼等の違いそれは野生かどうか。

 生きるために極限でも戦い生き抜いて殺し殺されをしつつも訓練を重ねたイタ吉は野生の嗅覚とも言える勘がある。

 私みたいに可視化出来なくともどこまで追い詰めれば戦闘不能かを見極められるし何より相手を傷つけるのに躊躇いがない。


 良いか悪いかとは言えない特徴だが……今回は良い方向に傾いている。

 さらには自身がどれだけ不調でも動く力がある。

 根性力というか限界を越えて動けてしまうというか。

 これも良し悪しある。


『イタ吉、今のが来そうになったら教えるから遠くから魔法を』

『おっけー、正直今のは痛かった』


 そうして互いの爪や牙や拳がかわされていった。

 スキルとスキルがかち合い走って跳んで魔法も炸裂した。

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