千七十二生目 植物
ホルヴィロスが特別に何かを見せてくれるらしいが……
「姿って何を……? うわっ!?」
ホルヴィロスかが白い犬の姿なのが……崩れた。
形がふくれあがりほぐれホルヴィロスとしての形が消えてゆく。
それは1本1本がうごめく同じ白い植物の塊。
先程まで楽しく話していた存在がまるで化けの皮が剥がれたような。
草花の魔物でありそこには血の通いがあるわけでも意思の通いが見られるわけでもない。
生物としての確たる差。
対話すら困難な物。
もはや異質でしかない存在が目の前に……
いたと思ったらすぐに戻った。
「とまあ、こんな感じで意外になんとかなるんだよ! 中身とか外身とか私や他のみんなの違いに比べれば些細なものだよ、ああなっていても私はちゃんと生きているんだから、ね? あ、さっきの姿は本当に秘密だからね! あれはあんまり美しいわけじゃないから!」
「な、なるほど……本当、ありがとうホルヴィロス、無理させちゃったみたいで……」
「なあに! ローズオーラのためならなんだってしちゃう! そう! なんだって!!」
ものすごい強調されどや顔をされるとなんとも言えない。
ホルヴィロスなりの励ましだろう。
受け取っておこう。
確かになんだか気持ちは晴れやかになった。
あとは少しずつ慣れていけば良い。
そう思える程度に。
「それで……その、治療をしてくれるとありがたいんだけれど」
「あっ」
……傷はやっぱり痛むが。
私の場合姿が変わるため正確には傷に見えない部分も多い。
だが中に傷としてうずいている。
そのためホルヴィロスによるちゃんとした処置が必要とした。
とはいえ私は結構軽くで済んだ。
みんなはどこへ行ったか……その間に教えてもらえた。
入った反対側のテント出入り口にそっと向こう側を"見透す眼"で見る。
その向こう側には大きな花弁が待ち構えていた。
ただ咲いているとは言えない。
目の前でまるで大口を開くかのように花開かせていたのだ。
ニンゲンより大きい花弁の管は外側周囲の植物へと合流。
そしてそこからあちこちへと送られる……らしい。
最終的に兵士たちみたいに液体漬けで膜の中に入れられ寝かされる。
どうやら通る過程や最終処置がかなり違うらしくそこらへんの調整はホルヴィロスが気合を入れて行っているらしい。
私はここにしまわれなく済んだ……
「ところでなんで不意打ち気味にのみ込むように……?」
「それが、不思議と治療をみんな受けてくれなくて、ニンゲンたちはわりとそれどころじゃない傷を負った人もいたから詰めるように流れ作業でやっていたら、いつの間にかこんな感じになっていてね……」
なるほど……最適化を踏んでいったらこうなったと。
というかそりゃ最初あれを見たら嫌がるよね。
私も嫌だ。
「これでおしまい……まあ、あとは自然回復だね! 今のローズオーラならそのぐらいは割と大丈夫だよ! はい、これは食後に1粒ずつ飲んでね」
「ああ、処方までありが……なにこれ」
私の全身至るところに不思議張り物をされた。
植物らしいがまるで白いノリみたいだ……
そして渡された品が薬品……と思いきや。
なんだか種っぽい。
……いやこれやっぱり種だよね!?
「それかい? ふふふ、その中には大量の回復栄養素と全体的に痛みを取る成分が含まれているんだ。確実に腸から吸収されるためそこまでは耐える優秀なモノだよ! もちろん私が薬液含め作ったんだよ!」
「す、凄いというか、そこまでやれるだなんて……!」
「えへへ、もっと褒めても良いんだよ!」
いやまあ本当にすごい。
照れるホルヴィロスは全体的に整っているのも含めてキュートさを感じるが……
過剰に褒めると調子に乗って大変なことになりかねないのでやめとこう。
「そうそう、このあと皇帝のところに顔を出すんだよね?」
「あ、そうだったね。最後の患者かー気合入れてがんばるぞー! ローズの頼みだし!!」
やる気なのは嬉しいが方向性どうにかならないのかな……
場所を移動し皇帝のいる拠点へ。
もはやここはしばらく使わなくなるためかみんなバタバタしていた。
戦いは終わったからね。
皇帝は誰から見てもちゃんとした治療を受けなくてはならない。
ただ皇帝自身がまだ保つ判断したのと現場の兵士たちが最悪死体で送られてくるためホルヴィロスはそちらを優先していた。
中に許可を得て入る……前に私はホリハリー風の人型になって服を眼鏡以外顕にさせておく。
それから――
「――報告は聞いた。よくぞやってくれたな」
もろもろ細かい儀式めいた前にもやったようなやり取りのあと皇帝はそうした。
相変わらず寝床から体を起こすのだけでも限度っぽい。
まさにギリギリ。
「ありがたき御言葉です」
「して、そちの用向きは、ホルヴィロス殿」
さて……どう診察結果が出るか