千七十一生目 内臓
ホリハリーの姿とは言え足の部分がニンゲンじみている。
もちろん髪の毛風たてがみ長く後ろに伸びていて……
あと全体的にホリハリーに比べ雰囲気がさっぱりしている。
身長すら伸びているので本来この服は合わないはず。
けれど……
とりあえずぱぱっと着込む。
まるで服が馴染む……
服自体が私に合わせてくれているのだ。
最後に風羽のスカーフで髪を結う。
よし。
うまく結べた。
「どうかな?」
「うわあローズほんとさいこうもはやペロペロした……ではなく! どう、気持ちは?」
「うーん……まだどうもスッキリはしない……」
「そうだね、じゃあもっと、自分がどの姿でも自身をわかるように意識してみて」
どの姿でもか……
私の姿は多種多様でその姿に同一性は結構少ない。
カラーリングは似ているがそれが共同性としては自分自身では弱い。
そう……このホリハリーの姿だけでは困る……
私が服を脱いだりしまったりするのは大事にしたいのもあるし服が常に体に合うわけではない。
だから……あ!
いつの間にか私の服が消えている!?
……私の姿をケンハリマ風にする。
そうしたら今度は私の姿に合わせて服が変化して光と共に現れた!?
次々姿を変えても服装がちゃんとついてくる。
そして風切のスカーフはちゃんと私の髪を結び続けていた。
これは……
「うひょお! お着替えタイム!! ちょっと写し絵の箱!! あ、違う! そのスカーフ、お気に入りみたいだね!」
「ホルヴィロス……うん、スカーフは特に、常に私のワンポイントアクセントになっていたからね。それにアノニマルースの立ち上げ周りとしてもとても思い出深くて……そうか、これが」
「うん、その服が貴方に馴染むのはともかく、そのスカーフは貴方を保つ!」
そうか……この風羽のスカーフや服たちそしておみとおしくんも私の一部であり……私以上に私を証明してくれる。
自身はちゃんとここにある。
……おや。
「なんだか、すごく体が落ち着いてきた気がする。そうか、これが神……」
ケンハリマの姿に戻り服や眼鏡は私に同化させる。
……うん。まるで見た目は何もなしになった。
けれど風切のスカーフはちゃんとたてがみの長い毛を結んでいる。
私とこの世をしっかり結んで確実にする結び。
肉体の不快感は消えて全身が確実なものになった。
なるほど……意外に大変だったけれどわかればなんでもないな。
「ふう……ありがとう、ホルヴィロス。なんとかなったみたい」
「よかったー! 良い? 神は不便が多いけれど、それ以上に凄いんだから、少しずつ覚えていってね!」
「う、うん。ところで……ホルヴィロスは何で自身を保っているの?」
ホルヴィロスが固まった。
あれ。
何か変な事言ったかな……
「あ……ああ、まあ、毒沼とかね、それと……」
「うん?」
「……私のこの形自体がひとつの自身というか……私はアレは逆に妨げになっているというか……」
「形が……? そういえばホルヴィロスの姿、それしかみたいことないなあ」
ナブシウやグルシムそれに蒼竜は自身の姿を大きく変えてみせた。
ホルヴィロスはツルを伸ばすだけで姿を大きく変えたことはない。
そこが何か関係あるのかな。
「さっき、自分を見失わないように大事にするものがあるって言ったけれど、逆に自分が成長する過程で自力で減らしたり変えたりするのも大事なんだ。普通の生物はそういうことは時間と共に勝手に行われるけれど……神は自力でやる必要があるんだよ」
「……ホルヴィロスは、それが行えていないっていうこと?」
ホルヴィロスは目線をそらしつつも肯定の意。
なるほど……
「貴方が攻撃して私を倒したほどにあるだけで単なる弱みである内臓……あれは私の捨てられないもので、本来はもういらないんだけれど、まだどうしても持ってて……」
「ああ、小さいころのおもちゃみたいに……」
それを自身の肉体であるというのが色々とすごいけれど。
ホルヴィロスは見た目の獣っぽさと違い実際は植物の集合体だ。
違和感はあったけれどそういうことだったのか。
「いやーさあ、本当は卒業予定だったんだけれどさ、その予定がおじゃんになったあげく私の命ごと撃ち抜かれてね……」
「え? ……ああー」
私か!
私をなんの扱いにしようとしているんだまったく。
「まあそれはともかくとして、ローズオーラ、貴方も多くの変化に晒されるだろうけれど、貴方の中身はどうなっても貴方なのだから、そこを覚えていてね」
「うん、まだちょっと初めての感覚すぎて不安だけれどなんとかやっていくよ」
「……良い? 私がこの姿をちゃんと見せるのは……ローズオーラが特別何だからね!」
ホルヴィロスは一体何を?




