千七十生目 姿揃
ナブシウが性格が姿によりまるで変わったこと……
それと私の体がどうも不調なのとつながる?
「グルシムは確かに姿の変化でまるで別人かのようなテンションになっていたけれど、グルシム自身ではあると感じられたけれど……そこが何か私につながりが?」
「うん。自身という物の話になる。私が診てきた限り多くの生物の自身というものは、生まれ、成長していく過程でどんどん身につけてゆき、ひねくれるにせよ立派になるにせよそこには意識せずとも確立された自身が出来上がり成立する。だいたいあってるよね?」
「う、うん。さすがに虫や細菌なんかはよくわからないけれどだいたいそうだと思う」
むしろ機械的に生きる術を選んだり個ではなく全体として機能すること自体も流れるように自身を得るということなのかな。
ただそこに疑問をホルヴィロスが持った?
一体どういう……
「神は、違う。少なくとも私が知る範囲では。神は自身というのがあり、それが形を成している。そして多くの変化を常に受けやすく、自分が自身を保ち続けなくてはならない。私は、私達は自身の精神や魂が正気であると証明し続けなくちゃいけないんだ」
「……ううん? あんまり普通の生き物と変わらないような……」
でもまるでこの言い回しだとまるで根本が違うような……
つまりどういうことだ?
「そうだなあ……グルシムでいうなら、グルシムは全身に纏う装飾品がいくらかあるよね?」
「う、うん。ひっついているようだけれど」
頭の飾り羽や背負う鳥……自分の死がいなんかがそうだ。
生者の姿になればそれらの骸が見た目蘇る。
「姿と共にあれらも変化したのを見たよね」
「うん、でも進化でも身につけているものが変化することはままあるから、気にしてはなかったけれど……」
「だいぶ違うんだよ! 体に合わせて装飾品が変化するのとは別で、装飾品が変わることで肉体ごと精神も変わるんだよ。グルシムの事情は……だいたい私も聞いたけれど、ああやって自身の定義すら変わってしまう……良くも悪くも。元の自分が自身すら忘れてしまったら二度と取り戻せないかもしれない。それぐらい、神とは変わりやすいものなんだ」
「そんな……!」
「ローズも覚えがない? 神たちが姿が変わったとしても、どこか共通した姿を取り続けるとか……同じものに執着するとか」
自分自身すら変えれてしまうというのが神なのか……!
自分を忘却してしまうかもしれないとは……胸がざわつく。
あの時……つながりの力でちゃんと勢いを相殺しないと奔流に飲まれそうになっていたアレ。
神というのは常にあそこに晒されるようなものなのか……?
私は……耐えられるのか。
それと神たちの姿によらない共通した姿や執着か……ものすごい覚えがある。
「ナブシウは恐ろしいほど自分の神というものを執着していて……アラザドという廃れた神も世界を狂乱に落とすことへかじりついていた。蒼竜は帽子と角が常にセットで……あと信徒たちの作った自身の像にすごく執着心があったね。グルシムも、自身の骸と融解するほどに強く維持していたし、ある意味自身の迷宮に深く熱心だった……」
「貴方も、自分が何なのか常に思い出せるようにしたほうが良い。それがこの胸の石1つじゃあ、少し頼りないよね。貴方のことは私が絶っっっ対! ちゃんと覚えているけれど、それだけだと貴方の不調は収まらないからね! 自分で自身を定める何かを決めなくちゃ!」
なんというかまったく考えたことなかったな……
私が私自身である証明品か……
「うーん……」
「ああ、そう難しく考えるものじゃないんだよ! パッと自分が自分であるものを思いつくものでいい……いや、そっちのほうが良いんだよ!」
パッとか……あ!
そうだ!
私と馴染むことで私自身と共にあったあれならば!
素早く空魔法"ストレージ"から私の服を取り出す。
ニンゲンに変装する時に使った1セットだ。
さらに……首周りに意識。
すると私の首周りにまるで前からあるように風羽のスカーフが出てきた。
ネオハリーだとマントになっている部分だ。
おみとおしくんこと眼鏡も"ストレージ"から出しておく。
"無敵"が通りやすくなる効果のために常につけたいんだけれど戦闘中は危険なんだよね……
私の身につけているものワンセット。
コレがぱっと思いついたものだ。
「特に私のにおいが常にあるから、これらなら私は私を忘れない」
「だったら、少し意識して身につけてみようよ!」
ホルヴィロスに促され……ええと。
姿をホリハリー風にする。
そうだ。この時感じたのはあまりにも何もないから強い違和感があったのか。
私は姿を変えるのにあんなに実体感があったのに……
まるで楽に姿を変えられてしまうから。




