千六十七生目 調和
魔王はニンゲンは魔物だと語った。
どういうことだ……?
外の景色は暗さが減り青空になっている。
「人が魔物って……どういうことなんだ?」
[もしや人類種は動物に属すると思っているのか。または人類種が人類という特殊形態だと思っているのか。それは、違う。そもそも魔物と動物は本来根本が違うものだ。混在はしてしまったが]
まさか魔王から生物学の話を聞くことになるとは……
もしかしたらガチガチに調べたらわかることなのかもしれないけれどそういうところまでは調べたことがない。
そもそも生物学上の違いがなんの話につながるのだろう。
「……さっぱり話が見えないぞ!? なんの話をしているんだ……?」
[結論から言えば、動物とは別の要因で発生した生物で、魔物とは根の部分は自分が生み出したる存在だ。動物型や植物型それに無生物型もあり、そこから自己で大きく変化していったが、魔物の共通点はログやスキルだよ]
「魔王が……魔物を!?」
ここでログやスキルが出てくるか……!
ログもスキルも確かに地球にはなかったはずの能力。
しかしこの世界では広く一般的だった。
そう。ニンゲンたちにも。
[キミたち人類種も元々は自分が原型を作った。ここまで変わって創造主たる自分を弑するとは思わなかったけれどね]
「魔王、キミは一体……!?」
私は思わず聞かずにはおられなかった。
これまでの話を組み立てれば自ずと見えては来る。
それでも正解を直接聞くのとはまるで違う。
魔王は私の方を向き直りゆっくりとログに書き込む。
[自分はこの世界の創造主だ。少なくとも、昔は]
この言葉には倒れているみんなも含めて全員が驚愕した。
創造主……そんな大物だったのか魔王って!?
「そ……そんなに弱いのに……」
[それは言わないでくれ。造り手が戦いが得意なわけじゃないし、かなり弱体化をされているんだ]
インカのこぼした言葉はかなり気にしている部分だったらしく見るからにテンションが落ち込んでいる。
それはともかくとして。
「……おい、敵の言うことを鵜呑みにするな。文字通り創造主であり管理者だと自称するやつにロクなやつはいない」
[信じてもらえるとは思っていない。ただそう嘘をつくメリットもないということは覚えていほしい。自分が過去この地に多くを作り、他の神たちとともに世界を起こした。その中でも自分は、魔物たちを多く創り込んだんだ。だからついた名前が魔王。魔を生み出したる者]
創世神か……今の口ぶりだと複数いそうだが。
それに魔王は明らかに今は力が堕ちている。
だからこその昔はということか。
「なるほど……真偽はともかくやっと目的や行動理由がわかった気がする。魔王はニンゲンを含む魔物を管理しきろうと……親が子を守り縛るように」
[もはや、十分おとななんだと前思い知らされたがね。そして今回はまた別の形で。まさか人類種が大都市100万人って単位で増えているとは思わなかったけれど。本当に大丈夫かな、地上を見たら多くの魔物が虐げられていないかな]
椅子の上でオロオロする様子を見せる魔王はまるでそんな上位者っぽさはわからない。
ただログに書き込まれる言葉は個ではなく全体を見据えていてやはり私達より高いところから見ていると実感する。
「さあな、少なくとも俺たち魔物……おっと、ニンゲンじゃない魔物にとっても住みやすくはあるぞ、ここの妹のおかげで少なくとも俺たちはな」
「えっ、いきなりなんのフリを!?」
[下まで落ちるにはまだ時間がある。ぜひ聞かせてくれない?]
ものすっごく魔王がワクワクポーズをとっている……
外の景色は遥か下に雲海が広がっている。
まだ地上までは遠い。
仕方ない。
アノニマルースのことでも話そうか……
[それはすごい。本当、ローズオーラ個がそんな場所を作り上げているとは。自分が救われたのも偶然じゃないって思えるね]
地上付近に来る頃になると魔王はすっかり大泣き感動していた。
なんというか光であふれる涙が再現されている……
なんというか器用だな……
「まだできたばかりで、魔物の理想郷からは遠いんだけれどね」
[それでも、自分が出来なかった調和の形だよ。それを自分から離れた者たちが作り上げるということにすごく感動した。自分が削除されていた価値はあったよ。願わくは直接見てみたい]
調和の形……か。
あまりそういう深いところまでは考えていなかったが。
3司獣ナェウガィがついには帝都平原の陸へと降り立つ。
同時に地面の黒々とした色と地形が溶けてゆきおそらくは本来の地である帝都が復活していく。
あの坂に埋まった住宅たちも。
山に埋まった道も。
地獄が消えその場には平和な環境が戻った!