千六十六生目 庇護
外側の魔王……3司獣ナェウガィ。
それを魔王は椅子に座って? 操作をし星へ帰るとき。
グレンくんは魔王を見据えていた。
魔物たちの多くの死こそ魔王復活のキーだとはよく聞くが……
[今はそういわれているのか。正確には、星の悪化だ。この星が大きく乱れた時に何度でもやってくる]
「乱れる、というのは要領を得ないんだけれど……どういう基準で?」
[調和だ。自分が定めている基準から大きく逸脱し不可逆だと判断したら、直接手を出すために自分はこの世界に喚び出される。前回は人類種が星を無限の物だと、自らの種族以外は悪だと排斥を行ったため、自分が出た]
星の近くまで急速に降りだしている。
周囲が燃えている気がするが中はまるで平気。
揺れすらないの本当にすごいな……
魔王は文字しかないためそこからは感情がとても読みにくい。
ただそれとは別に身振り手振りにとってつけたような目の顔がとても目立つ。
においもわりとこまかく変動させていた。
平坦な文だけれどそれらのおかげでふざけているわけでも喜んでいるわけでもないことがとてもわかる。
悲しんでいる。
自分が必要とされることを。
そして星が傷つくことを。
「だけど魔王は負けた……世界に警告を残して。だから人々は自然との調和も意識しだしている。けれど魔王の定めた基準って……」
[自分が蘇り、そして勇者、そなたが人類種から出たということが世の狂いをまた示しているのは、頭が痛いが。前よりも厄介な事情があるのは何となく理解している。なので一方的裁定を行う気はない。それを踏まえた上で自分の定めた基準の話をしたい]
魔王が何となく察する理由。
それはラキョウに憑依されていたせいで少し情報が拾えているのだろう。
正直こっちも魔王と完全敵対しないで済むのはありがたい。
「……正直、魔王がどれほど凄いとは言え、勝手に決められた基準ですべてをどうこうされるのは良いとは思えない、その上で聞くよ」
[心得たよ。自分が決めた基準。分かりやすい点から話せば、たとえとしての話になるため実際に使用する値とは異なるが、人類種は約100万体と言ったたころか。世界に生存する理想値だ。それ以外の種も、特に魔物は数値管理を行っている]
「……なっ!? 大都市1つ分!? 生きている数を勝手に制御されるだなんて!」
私もさすがにつっかかりたくなったがグレンくんが先に強く出た。
ニンゲンの代表として語っているからかグレンくんもかなり真剣だ。
魔王も勇者の真摯さに応えようとしている。
魔王ラキョウとかいうのが完全に力だけの偽物だな……って脳裏をよぎった。
[すごいな。今や大都市1つに人類種が100万体もいるのか! もはや自分の設定は多く見直す必要がありそうだ。生きている数を制御、に関しては若干違うな。そこは主目的ではなく目的を達成するための基準値にすぎない。主目的は調和だ]
「また、調和……魔王、魔王の思う調和ってなんなんだ?」
[あらゆる生物の永続的繁殖。あらゆる種は自身の種を繁栄させる観点でしか物事を把握できないため、自分が俯瞰して行うしかない。前の勇者にもそこは理解してもらえなかったが]
「……管理社会だ」
私が治療を行いつつ言葉をこぼす。
魔王やグレンくんも私に目線を投げかけた。
魔王は肯定の意味を。グレンくんは納得の意味を。
「当たり前だ! 誰もが自分たちで生き残る権利がある! 管理社会だなんて調和……独りよがりだ!」
[そうだね。自分も考えを消去され時代の移り変わりで考え直す時期が来たのだろう。出来うるのなら自分が2度とこの世界で復活しなければ、よりそれが肯定できたのだが、管理者に管理されないことが良い、とはやはり考えづらい。多くの命と種族が失われ続ける淘汰の渦が正しいとは、思えない]
「……正しくはないのかもはしれない。けれど、お互いに手を伸ばし合えれば、こうして人と魔物だって組めて凄まじい力を発揮できるんだ。誰かもわからない魔王なんかに管理させるいわれはやっぱりない!」
そう。
私達がここまてやり遂げたのが魔王の否定でもある。
いつまでも親の庇護下に置かれることだけが良いわけじゃない。
かわいい子には冒険させろともいうしね。
[ん? 人類種も魔物だから、魔物と人類種が組むのは本来なら自然なのでは? 何故か勝手に対立をし自然や他魔物と共存を拒否したのは人類種だろう]
「「……え?」」
「魔王、ニンゲンと魔物はさすがに違うんじゃあ……」
魔王はさぞ不思議そうに返してきた。
どういうことだ?
魔王はなんか変な位置からみんなを見ているから常識が我々とは違うのか?
神様的生きてりゃだいたい同じ!
みたいな……?
[ふむ。まさか人類種がそこまで他魔物との共生関係が断絶していたとはな。人類種とは魔物の中の大枠1種であり、ゆえに魔王である自分の管理下なのだ]
ど……どういうことだ!?




