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千六十五生目 椅子

 イタ吉やインカはもう頭にはてながいっぱい。

 でもまあ私達も似たようなものだが……

 戦う力がないにせよ聞いていた世界を終わらせる存在とは結構遠いようにも思える。


 それに引っかかっていたこと。

 大昔は魔王も信仰をうけていた。

 あれは畏れがほとんどだと思っていたが……そうではないのか?


「魔王……魔王!?」


 今度は魔王が体を崩して座り込むようなカタチになった。

 ええと今度は何なんだ……?


[つ、疲れが……限界……]


 あ……うん。本当に貧弱だ。

 とはいえ……私も落ち着いてきたら体中が本当に痛いんだけれど。

 見た目をあれこれ変えれても大本の傷をなくせるわけじゃないから。


 "神魔行進"も私が気を抜いたせいかオフになる。

 みんなが包んでいた(エフェクト)が消えて……


「「うわあっ!?」」


 私以外の全員派手に寝転んだ。

 そしてまともに立ち上がることすらできないらしい。


「い……痛え……めっちゃ痛え……」「死ぬ……!」「光がなくなったと思ったら体が動かないんだが!」

「お、おええ……! 何も出ないけど、うええ……!」

「……こういうときは何も考えず寝るんだ。修行の後で散々学んだ」

「消すなら先に言え……!」

「ごめん……思ったよりみんな限界で……私も限界……」


 思わずヒザをつく。

 正直とてもからだがしんどい。

 トランス後にこんな緊張感最大の戦闘なんてするもんじゃない。


[色々話したいけれど、まずは地上に帰ろう。自分を殺すかどうか決めるのはその後でも遅くないはずだよ]

「ちっ、余計な真似はするなよ……操作できるんなら、この生物を地上に戻せ……」

[ありがとう、人類や、勇者も、魔物の者たちも。過去の話は後で。今は……すまないけれど、誰かあの椅子まで運んで欲しい。もう自分1歩動くのも気持ちが悪くて無理……]

「え、椅子に? う、うん。乗って」


 私がロゼハリーのような姿になればちいさい魔王程度騎乗させるのはかんたんだ。

 少し私もふらつくが歩く程度ならば問題ない。

 背からとげなしイバラを伸ばしそっと掴んで背に運び……乗せる。


 そしてシートベルトイバラ固定。

 さあ歩こう。

 ……実際は腰がないため全部位浮いているんだけどこれでいいのかな……







 重い体を引きずるように移動し魔王の椅子までは空を浮かびなんとか届ける。

 なんでこの椅子に戻りたがったのかな……


[よし、ありがとう。自分がここまでくれば。うまく行ってくれよ]


 ログに文字が送られるの……私達がキュウビ博士の開発でたまに文字会話をする感覚に似ている。

 ただあれとは違って個人名の指示もないし会話というログから浮いた枠というより……

 まるでログに直接書き込んでいるかのような……微妙な違いがある。

 なにせ書き込んでいる途中がまず見えるという時点で色々おかしいのだから。


 魔王は椅子に座るとわずかな(エフェクト)をまといだした。

 少しすると……神の領域に踏み込まねばわからないだろう情報の渦が発生しだした。

 空間にデータが蓄積していく……言うのはかんたんだがやってることめちゃくちゃだぞ!?


[ふう。初期化と再設定終了。随分無理な運用をさせちゃったみたいだね。これで、問題なく動くはず]


 魔王が指示したとおり動き出したのか周囲の宇宙が映し出されている景色が変わりだす。

 これが外側の魔王が見ている景色だったはずだからそれがさっきまでと天地逆に……


 つまり地上の方へ向いたということは。


「……これで帰れる!?」

「おお、すげーじゃん! それ乗れば俺でも操作出来るのか!?」

[いいえ。残念だけれど3司獣ナ・ェ・ウ・ガ・ィは自分がいないと操作できない。まさか体ごと乗っ取られるとは予想外だったけれど、そうでなければ誰も操作は出来ない]

「なぇうがぃウエアエ? よくわからん名前だなあ、操作出来ないのはつまんねーの」


 前私が"観察"したとき外側の存在……3司獣ナェウガィは魔王と表示された。

 私はちゃんと観られなかったのだ。

 阻害というかもはや格が違うため自由に認識を操れてしまうといった段階か……


 とにかくこれは本来魔王にしか操作できないらしい。

 帰るまで時間がある。

 こっちの傷治療しつつ話を聞こう。


「それで魔王、キミはなぜ復活を? また世界を追いやるために?」

[その話をしよう。復活したのは、時が来たからだ。自分は世界から削除を受けた。けれど意思とは関係なく、自分は必要な時に再度喚び出される設定になっているんだ]

「必要……それが言われている、魔物たちの死?」


 グレンくんが満身創痍といった様子で歩き魔王の前に歩み出る。

 グレンくんは勇者として何か魔王に通じるものがあるのかもしれない。

 その瞳だけは魔王をしっかり捉え続けていた。

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