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千六十四生目 最弱

 ラキョウは斃れた。

 もはや2度と帰ってくることはできない。

 死霊術でも魔法でも神業ですら無いものを戻すことはできないだろう。


 怨霊と化したその魂は消え残った玉が変質していく。

 ゲル状の物質だったのがどちらかというと生体に近い外皮に変化して転がり色も白く。

 少し離れたところでその球体が止まり……


 いきなり空中に手と足が出た。


「「え」」


 本当にそうとしか表現できない。

 球体と繋がっているわけでもなく靴を履いたような肉球足に薄い手袋でもしているかのようで生体な手。

 その中間である手首足首どころか腕や脚部が存在しない。


 それがいきなりゴロンと現れ落ちた。


 まずは足が立ち上がりその上に球体。

 そしてよこに手がきて形そのものは人型っぽく見えるがあまりにデタラメ。

 そして今度は突如頭らしき位置に大きくツバが広い帽子が現れ球体にかぶさる。


 帽子が少し浮き上がるとそこには深い影。

 そして浮かび上がるのはとってつけたようなくりっとした目。

 ス……スライム!? ではないか。さすがに。少し違う気がする。逆に言えばだいたい同じ。


 目は光輝き影しか見えない帽子の中で唯一見える。

 いや……なんというか……

 視覚だけじゃく他の感覚でもそれ以外の情報が読み取れない。


 なんなんだアレは……


「て……敵か!?」

「殺意も悪意も敵意もにおいがしないんだが……」

「なんというか完全に寝起きっぽい……」


 その目? を半目にしていてそこからパチクリとまばたきらしき記号的動き。

 つまりは発光する部分が半丸や横棒になったりまた半丸になったりしている。

 2度3度まばたきを繰り返し……

 

 急に驚くように手を大きく上に上げ後ろへと跳んだ!

 そしてそのまま足も繋がってないのに転ぶ。

 ……うん? おかしい。私の予想ではラキョウが取り除かれた先は……


 ……"観察"!


[魔王 Lv.1 脅威項目一覧なし 比較:練習相手にもならない]

[魔王 外部の巨神獣を乗りこなす本来の魔王。あらゆる力がはるか昔に喪失してしまい魔王としての能力は見る影もない]


「あー……」

「こういうのは先手必勝だ! そら!」

「あ、待ってイタ吉!」


 小イタ吉が1匹先に仕掛けた!

 いつもの攻撃誘導だが……

 相手は起き上がろうと必死になっている。


 すると。


[待って! 攻撃の意思はないから!!]


「「えっ!?」」

「あえ?」


 ログに言葉が直接書き込まれた!?

 まさか……魔王!?

 みんなも同じらしくみんながみんな自身に不思議と理解できる言語に直されたはず。


 だが小イタ吉は爪が若干振っていてた。

 爪自体は引っ込んでそれたが……

 拳は軽くだが当たる。


 (エフェクト)すらないインパクト位置がずれている1発。

 それがすごくいい音をして魔王の体にあたり……

 そのままふっとばされた。


「あっ」


 あげく転がって壁まで行きぶつかって目を回しそのまま倒れた。

 え……ええと。

 魔王を倒したぞー?


[うわああああ! ギャフン!!]


 ほらログのほうに魔王の悲鳴っぽいのが書かれている……

 なんだこの……

 なんだこれ。


「なあローズ、こいつなんなんだ……?」

「……魔王。外のは乗り物? みたい。ただしすべての力を取り上げられた……」

「力を取り戻す前に殺ってしまったほうが良いのか? それとも……うーん」


 ダカシやインカが悩んでいるが私としてはさっきの言葉が気になる。

 力の源も宝石剣だと割れているし……

 もしかしたらさっきの"無敵"で。


 とりあえず警戒しつつ接近。

 "観察"……生命力が半分近く飛んでる。

 よ……弱い……


 私はとりあえず光魔法"ヒーリング"を魔王に。

 周りは何か言いたげだがとりあえず見守ってくれるらしい。

 私もいろいろこいつに聞きたいしね……


 生命力はあっさり癒やされ軽くゆすると飛び起きる。

 肉体としてのパーツは生命体にまったく見えない構成で不思議だ……


「改めて……キミは敵? それとも……」

[聞こえていたよ。多くの声、それに君等の暖かな光。戦う気はない、むしろ、助けてくれてありがとう]

「ならばだいたい事情はわかっているだろう? 俺たちはお前を殺しに来た」

[降伏する。正直もうこうなったら勝ち目がない。それに、自分はこういう事をするのは目的ではない。これ以上の戦争に意味はない]


 ダカシはあくまで油断せず刃を向ける。

 しかし魔王は何もせずただ刃を向けられた。

 無抵抗を示した。


「なんだ? 魔王ってよ、大昔世界をぶっ壊そうとしたヤベー奴じゃなかったのかよ?」

[見方によってはそうかもしれない。自分は世界をある程度『整地』しようとした。自分の存在ゆえに。でも世界を殺そうとしたわけじゃない]

「……何が言いたい? 何が目的なんだ?」


 イタ吉やインカとともにみんなで頭にはてなが浮かぶ。

 この魔王……なんなんだ。

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