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千六十三生目 損失

 敵が光を放つ前にグルグルにして全て覆いさらに鎧化!

 "無敵"で戦意を削ぐ!

 奴は純粋なエネルギーで破壊の意思しかない……それを抑えてしまえば!


「ガアアアアアーーッ!!」


 凄まじい叫びとともに暴れるしどうやら光線も放っているらしい。

 だが少しすれば一気に勢いが落ちて……

 光線で焼かれたイバラが煙を上げる。

 

「どうだ……!?」

「これで大人しくなったかのか?」

「あっ、おい! 何かが!」


 ダカシやイタ吉たちそれにインカも見守る中イバラの球から何かが滴り落ちる。

 どろりとしたそれは……


「さっきまでの戦っていた、あの敵……!?」


 グレンくんは思わず剣を構え直す。

 みんなも……私も同じく。

 しかしこぼれた液体たちは再び凝固する気配を見せないどころかほとんどが蒸発しだす。


 ……イバラを慎重に解く。

 球体の中にあったものは。


「なんだ、これ……?」


 それはひとつの球体。

 まるで先程の敵がひとつの玉にまでなってしまって色を喪失したかのよう。

 そこから液が溢れていた。


 ……うわっ!?

 なんだ!?

 怨霊のような恨み顔が辺りに舞いたくさん浮かんでは消えていく。


「うへぇ、なんなんだ!?」

「「アアアアア、アアアアア、アアアアア……!!」」

「こいつ、こんなんになってるがこの声、ラキョウか!」


 ダカシが2つの剣を湧き上がる怨霊に向ける。

 切っ先は当然のようにすり抜けている……

 ということは。


「この取り憑いてる感じのが、ラキョウが死霊術を使って取り憑いた魂……!」

「「ウアアアア、アアアアア……!!」」

「この様子じゃあ、もうまともな意識もないだろうな……」

「……ローズ、解放してあげられる?」


 インカが言う通りもはやこれに理性は感じられない。

 先程までの破壊の意思すらない。

 むき出しになり最高に弱った魔王に取り憑いた力を絞り尽くしたその残りみたいなもの。


 おそらくはラキョウすらも賭けだったのだろう。

 自身が何らかで死んだりした場合の保険。

 それが正常に機能したがゆえに……魔王と争い私達と争い魂がここまで摩耗した。


 いくら私が死霊術師見習いでもわかる。

 これはもう助からない。

 彼は世へと帰るしかない。


 私の習ったという前提で……死霊術師たちは死後の世界はあると考えている。

 どんな魂も世……つまり世界そのものに還るとされている。

 大きな還った奔流と溶け合い眠る。


 また世界に1滴の魂として蘇るまで。

 もちろん大量の例外はあるしそもそも宗教的な話も多くなる。

 大事なのは魂が還るということだ。


 例え死んでも死霊術師なら魂を呼び出せるというのは前ウロスさんが話していた通り。

 それは世の奔流から還った魂の情報を引き出すのに近いらしい。

 ぶっちゃけまだよくわかっていない範囲だが。


 つまりはデータがいるのだ。

 問題は目の前のこれに残されたデータはほとんどない。

 浄化すればどうこうというラインを超えて本人を自失している。


 例え魂は砕け散ったとしても奔流に還るとされている。

 それはどんな死体も結局は土やら灰やらになるみたいなもの。

 時間軸を気にしなければ。


 だがそこに本人のデータはない。

 記憶喪失を超えて自我損失。

 魔王ラキョウだの全ての破壊者だのに意思が託されるというのはそういう点もあったのだろう。


 これを見てその話を思い出し……

 例え自分ではなくなっても。

 記憶が無くなっても。


 次に目覚める時(・・・・・・・)は必ずやってくると信じたくなる。

 それが私の聞いた死霊術師の考えで救いとされる原点。

 ……ラキョウは結局最後にこの世界に縋っていたのだろう。


 永遠の闇に思考すら閉ざされる未来などはない。

 そう考えなければ魂を賭けることなどはできないだろうから。

 そう……地球では魂の存在が……うん?


 なにか思い出しかけたような。

 まあいいや。

 とにかく目の前のことを。


「……行くよ」


 私が考えている間何もしていなかったわけじゃない。

 (くう)魔法"ストレージ"でいくらかの道具と聖魔法"レストンス"。

 "レストンス"の方向性は力ではなく……出来得る限り優しく。


「簡易式ながら……生にしがみつく怨霊よ、今、世に還れ……もはや全てを失いし魂にも、還る時が来ますように」


 特殊な産地から取れた魔力の込められた魔石を紐で包んで手から下げられるようにしたお守り。

 床に置く宗教的品。導きの火。清めの貝殻。世の奔流とつながるとされる地から作った木像。

 ……それらの総まとめセット。見習い用。


 大事なのは唱え死霊術を発し場の魔法を発動させること。

 魔石や器具が共鳴し淡い光を発しだす。

 そして……"レストンス"の光を彼に優しく降り注いだ。



https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/473009/blogkey/2436805/

活動報告を更新しました 新規絵つきです

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