千六十二生目 莫大
連続で切り裂かれさすがに敵はひるみ対応を変える。
超高速な移動をしてダカシを蹴り飛ばしてきた!
「よし!」
しかしそこは急に横から飛び出す金属塊に押し出される。
インカだ。
「ラキョウ……! そんなになる前に俺をちゃんと見ろ! 妹たちに償え! それから死ね!」
「妹や仲間たちを傷つけるというのなら、何度でも俺が立ちふさがる! お前はそういう相手、いないみたいだな!」
ダカシはインカが吹き飛ばした全ての破壊者に向かって跳びさらに追撃斬り。
インカもダッシュで駆け前方の鎧を大きく開閉する。
光をまといその形は……大きな牙を持つ獣。
すれ違いざまにその大きな顎で……
噛み引き裂いた!
「これで……! えっ!?」
相手は肉体の多くを今の攻撃で傷つきいつもなら身体を崩してダウンする。
しかし多くの肉体の形を失いながらも敵は私達から距離をとった。
こういうときが1番危険だ!
上半身しかなくなって片腕も落ち9割ほどたまっていた"天地消ゆ"のエネルギーもチャージ不可。
私達の方へと遠方で向き直る。
……攻撃予測!
これは……!
「みんな! 私が敵の攻撃を全力で抑える! その間に!」
「「ああ!」」
敵の周囲から突如大量のマグマが溢れ出す!
それが波のようにやってきて……
強烈な冷気に晒され冷えかたまり……砕けて消える。
これは魔法じゃない。
神の力だ!
敵が神の力をふんだんに使って概念をめちゃくちゃにしてきた!
こっちは逆に簡単だ。
本来の概念に訂正した。
外は特にほぼ宇宙なのだから熱を逃がす空間にはことかかない。
それらの概念を引っ張って防いだ。
……まだまだ来る!
凄まじい勢いの濁流!
これを本来の概念に訂正……!
うぐぐ……私自身の力を使うの意外に大変だ。
私の胸石がキュッとする苦しみがある。
それでも出力や残量も桁違い。
敵が強力且つ凶悪でも……
次々と直していける!
その間にも天変地異を必死にみんな避けつつ直進。
出来うる限り手前で止めないと!
暴風には無風の概念を!
雷雲には無縁の概念を!
雪崩には無積の概念を!
あらゆる方法あらゆる概念で私たちを押し戻し破壊しようとするがさせない!
ここが非常に安定した場所だからこそ向こうの概念には無理がある。
無理にはほころびが。ほころびがあれば無効化できる!
みんなが駆け敵の目の前まで来たところで敵は……
天井にたまった不完全な"天地消ゆ"を発動した!?
空から全てを無に返す破壊の概念が形になる!
空に渦巻く瘴気じみたパワーは1箇所に集まっていき……
まるで銀河の渦のように回りながら落ちてくる!
不完全ながらあの渦が地上まで落ちたら……おそらく何もかも……外側魔王すらも吹き飛ぶ!
けど無理やり概念で補ったんだ!
止める!
「うぐ、ぐ……!」
「ローズ!」
「ごめん、止めるのが限界……! そいつをひるませて……!」
「くそっ! 斬ってるのに!」
もともとほとんど完成していたこともあってこれは他と違って『重い』!
まるで私ひとりで天井が落ちるのを支えているかのよう!
無効化するにはパワー不足……
けれど!
私はひとりじゃない!
みんなが攻撃しているが根本的に生命力のないあいつは殺すことはできない……だけれども。
「あいつが嫌がっていたスキル……戦闘を鎮めるスキルだっけか?」
「"無敵"か……! みんな妹から借りて、こいつに冷や水浴びせてやるぞ!」
「「おお!!」」
ダカシが真っ先に私から"無敵"を借りて相手へ斬りかかる。
インカたちも次々と。
ダカシの2つの剣はほとんど敵を削れないが……
「ギャアアアッ!!」
「効いてる!」
更にインカやイタ吉たちそしてグレンくんが斬る度にさっきまでとは違って悲鳴を上げる!
ついには"天地消ゆ"がわずかに軽くなった!
そこだ! 今こそ消えて! 渦巻く破壊の概念はここは生きる安定の場によりいらない!
「ハアアァーッ!!」
渦が止まり……逆回転。
高速で天井へと戻っていくとどんどんと霧散していく。
あの莫大なエネルギーは概念に従いもとの所有者へと……外側魔王へと帰ってゆく。
よし。これで敵は打つ手がないはず!
「うわまぶしっ!」
「この光は……!」
敵全身に光が……また複数の箇所に集まっている!
例のあちこちにビームを放った凶悪技をしようと……まだ足掻くのか!
けれど! もう!
「遅いよ!」
イバラによる"縛り付け"!
そして"無敵"!
もう逃さないよう球のように巻いて鎧化して固める!




