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百一生目 観光

 一通りトランス後の確認を終えたらその日ゆっくり休んだ。

 やっと自由にゴロゴロして半日過ごして夜をこえて……

 翌日の朝。


「んじゃあ早速街へいこうぜ!」

「本当にいきなりだ!?」


 九尾の家で朝食を取った後にイタ吉にそう誘われた。

 とはいえ今はそう断る理由がないかな。

 アヅキとユウレンは連日の頑張りで疲れているから別で休むそうだ。


 既に第一報はアヅキが各地に伝えているそうだから急いであいさつ回りする必要もない。

 万能翻訳機は便利だ。

 私がいなくても会話が誰にも通るものね。


 出した依頼も終了済みで今日は働いてくれたイタ吉に付き合うのもいいだろう。

 というわけで早速街へと駆り出した。

 まず着いたのは街の中でも小動物たちの住む住宅街だった。


「ほら、オイラの仲間たちもココに住んでいるんだ。こんなにたくさんの生き物が集まって住んでるなんて面白いよなー!

 ナワバリとかどうなってるんだろー」

「おお、確かに」


 イタ吉は地下の疑似共有魂は知らないんだっけ。

 "読心"を通しても通さなくても感動して面白がっているのがストレートに伝わってくる。

 それに私に見せたがったのはその想いを共有したかったのかな。


 イタ吉はめちゃくちゃわかりやすい。

 こっちも自然と嬉しくなってくるほどに多分大したことは何も考えていない。

 ただ欲求に従って動いているだけだ。


「イタ吉はココに住んでるの?」

「いんや? お金が無いから野宿だな!」

「思ったより厳しい事情があった!?」

「まあ問題ないけどな! 前から外だったし!」


 まあそらそうか。

 実に屈託のない笑顔で楽しそうに話す。

 まだこの朝の時間だからかそこら中にのんびりとした小動物や虫が見られて面白い。


「でもおいらもいつかはココに家を持ってやるよ! そのぐらいはしないとな!」

「おう、ファイト」


 次に向かったところは商店街だった。

 いつものところとは逆位置の門付近ある商店街で冒険者向けにもかなり物が充実している。

 栄えているのはどちらかな?

 同じぐらいかも知れない。


 そこでイタ吉と目的もなくぶらつく。

 ウィンドウショッピングがてら街の観光だ。


「おお、おお! やっぱり森じゃ見たことないものが多くて面白いよなー!」

「ちょっとした服飾や……剣もあるんだね」

「剣!? 何それ!」

「振って爪みたいに攻撃するものだよー」


 イタ吉は文字がまだまだ読めないため私が翻訳する必要がある。

 うーん盾もある。

 私が作る土器たちよりもやはり作りがしっかりしているなぁ。


「あ、そうか! コレちょっと違うからわからなかったけれど、ローズが作るものに似てるんだな!」

「そうだね、こっちのほうが作りが良さそうだね」


「良いな! おいらのも何か作ってくれよ!」

「剣とか盾とか持てないじゃん!」

「そっか!」


 イタ吉には何か別のものが良いかな……

 ちなみに作る前提なのは、ふたりともお金がないからである。

 私脳内で勝手に円に直すと私が1万とちょっとでイタ吉が2万円ほどである。

 使い切って良いお金じゃないからね。


 アヅキとユウレンは竜討伐で大金持っているけれどあれは彼等のお金だししかも私のためにかなり使ってくれた。

 流石にこれ以上は頼れない。

 借りたものは返さねば。


 ブラブラ歩いて果物が並んでいる所に。

 この街は結構多くの果物が売られているんだよね。

 街自体も森と違って暖かいし果樹園もある。


 問題は私とイタ吉にとってそれらが結構キツいってことかな。

 ふたりとも思わず鼻をこする。

 慣れないと刺激臭が刺してくる!


「うーん、おいらまだこの酸っぱいにおい慣れないよ! みんななんで平気なんだろ」

「これは完全に慣れだね……」


 そんな感じでわいのわいの話しつつ結局はいくつか買ってみようという話に。

 それで並んでいる様々なフルーツたちからどちらかといえば甘い香りのするものを探そうとして……


「ひゃ!?」


 "鷹目"がたまたま背後にいた小動物が転ぶ瞬間をとらえた。

 抱えた袋の中に大量のフルーツ。

 何とかベリーだのオレンジ切り分けだの細かくいくつも入っている。

 それにこれは……


 "止眼"!

 勢い良くフルーツが飛び出す瞬間に空間が止まったかのように見える。

 引き伸ばせる時間は数秒。

 あちこちみて対策を考えないと。


 ここはやや坂なのでよくある例のごとく転がっていってしまうだろう。

 坂下には残念ながら今すぐ動けそうな小動物たちは少ない。

 ならばこうすれば……時間切れ!


 伸ばされた体感時間が戻り頭を使った影響で痛みが走る。

 大丈夫だ動ける。

 ここでやるのはひとつ。


 私は地を蹴った。

 一瞬で加速した身体は空を跳び坂下のフルーツが転がってくる付近に着地。


「うわっローズ!?」


 身体が軽く思い通りに動く。

 これのなんと嬉しいことか。

 私はフルーツが来る前にスキルを使う。


 地面はただの固められた土。

 ならば可能だ。

 範囲は目の前から横に広く。


 "空蝉の術"で畳返し!

 地面がストンとめくり上がり転がってきたフルーツが加速する前に止められる。

 なんとか『転がるフルーツを涙目で追いかける』という前世でお決まりの展開は避けれたらしい。


「あ、ありがとうございました!」

「いえ」


 追いかけてきた転んだ相手と一緒にフルーツを回収して渡した。

 何度もお礼をされているとイタ吉が追いついてきた。


「びっくりした! いきなりジャンプするんだもんなー」

「ごめん急ぎだったから」

「にしても良く気づいたなーおいら全然わからなかったよ!」


 イタ吉と言葉を交わしつつ落とした方の様子を見る。

 ええと……ネズミ系統だけどちょっと大きくて40センチほどの魔物だ。

 だいだいカラーがオレンジを思い出す。


 しかも二足立ちしている。

 おっと怪我が。

 "ヒーリング"と。


「ちょっと治しますね……はい大丈夫」

「ああ、本当に何から何までありがとうございました! あ、そうだ急がなきゃ!」

「はーい今度は気をつけて!」


 彼が駆けて角を曲がるまで見送って……

 私は気持ちを切り替えた。

 これは偶然見つけたとは言えただ事じゃない。


「イタ吉、追うよ」

「え、なんで?」


 こっそりとふたりで追尾しつつ事情を説明する。

 さっきフルーツの入った紙袋をちらりと透視した。

 特に意味があったわけじゃないんだけれど……


 いや正確に言えば"読心"で場に合わない怯えの感情が伝わった。

 さらに何かを心の奥に隠している事にも気づけたからか。

 "透視"して驚いた。


 わざわざ底が二重になっていて底と底の間に葉のようなものが見えた。

 杞憂なら良いけれど多少弱い相手なら看破出来ない隠蔽魔法も使われていたみたいだし。

 まあ私は力を込めたら見えたけどね。

 とは言っても暗所でかつ魔法効果ではっきり見えないから"観察"で調べれない。


 何かよろしくない事があるかもしれない旨をイタ吉に伝えたら協力してくれるそうだ。

 そうこなくっちゃね!

 私は"鷹目"を使って彼を監視している。


 ちなみに"鷹目"はスキルを使っていても物理的にそこに何かは発生していない。

 視界だけを繋ぐ穴のようなものを通して見ている。

 逆探知されるスキル使われると見つかるだろうが今のところは大丈夫だ。


 二足で走っていくネズミは徐々に徐々に誰もいない裏通りへと足を踏み込んでいく。

 何度も周りを確認しながらさらに暗く細い奥へ。


「おいらこんな所初めてきたよ」


 イタ吉も小声でそう言うほどに活気がない。

 そうして繰り返し道を進んで行くと……

 袋小路か。


 いや……壁の中に入っていった!?

 そうか、これは幻の壁!

 イタ吉にストップをかけて"鷹目"で視界だけ先に行かせる。


 するとその中は乱雑に灯りをつけた空間が広がっていた。

 運んできたネズミが何かを話し複数匹いるうちの一匹に手渡す。

 あ、殴られた!?


 雑にフルーツをそこにいるやつらで分けて底を漁る。

 紙袋の底紙を破って本当の底から取り出したのは……

 紫色をした葉だ。

 あれは一体……

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