千五十三生目 攻防
今こそ! "神魔行進"!
「行くよ! やあーッ!!」
私から強い光が放たれみんなを包む。
それは彼らの身体を光で消し飛ばすかのように熱く激しく。
「う……なんて力だ……!」
「目が……回る!」
「あが……ぐ……!」
「この程度修行に比べたら!」
全員の身体が思わずがくりと崩れてしまう。
キツイのか……でももうスキルは完成する!
剣ゼロエネミーがしのぐにはそろそろ限度だがちょうど良い。
「これで、完成!」
光にヒビが入り大きく割れる。
そうして私にまとっていた光が消えるとともに……
みんなが再び目を開いて立ち上がる。
不思議な透明に近い光のオーラじみたものをまとっていた。
みんな瞳に光が宿っていて見るからにさっきまでと雰囲気が違う。
これが私の……いや。私達みんなの力!
まるでさっきまでのみんなとは別のような気配だ!
「なんだ……? うわ、あの中央の禍々しい力は!?」
「あれか……"同調化"で妹がなんかヤバいもんを見ているのはわかったが…鼻で感じられるようになるとまるで絶望感が違うな……!」
「身体が軽ぃ!」「うひょー!」「今なら100回勝てる!」
みんながみんな自身の力と目の前に浮かぶ力に打ちひしがれる。
やっと圧力を感じなくなったと思ったらさらに危ないものがこんにちは。
けれど……
「うん……この力ならいけるよ! まだたまるまで時間はあるみたいだよね! ヤツを倒そう……今度こそ!」
グレンくんは先に歩みその小さいはずの背中を見せる。
だがあまりにも今は大きく見える……
みんなその背中を見てグレンくんと並ぶ。
正直言ってまだ倒し方は未知数な部分がある。
けどやるしかない。
私は力のかわりにみんなから勇気を貰えたのだから。
根源的な強さが上がっただけで敵が強すぎるのは変わらない。
全力で挑もう!
「ッ! ゼロエネミーが!」
「ありがとうローズの剣! これからは俺たちが!」
ついにゼロエネミーが光を散らしながらバラバラに散らばったあと全て宝石を中心に集まり小さな球となってしまった。
私の手元近くに戻りふよふよ浮いている。
こうなったらしばらくは眠っていて戻らない。
でも十二分働いてくれた。
ありがとう。今はおやすみ。
「アイツをどうにかして怯ませて! そうしたらなんとかできないか探る!」
「ようはガンガンぶった斬りゃあ良いんだな! よし!」
イタ吉たちが相変わらず真っ先に飛び出る。
私も遅れずにロゼハリーのように4足かつ大型化して尾もイバラに変える。
背後に駆けつつイバラを素早く伸ばしイタ吉たちを越す。
鋭いイバラの猛撃を敵は身をひねり腕でこすり自身のからだを削りながら突っ込んできた!
敵は予測や痛みの回避だなんてほとんどしていないらしい。
そもそも思考があるのか怪しいのだ。
とにかく超反応を重ね効率よくこちらを破壊しに来る……!
「突っ込んでくるバカは……」
「大歓迎だ!」
だがイタ吉にとって真っ直ぐ突っ込むのは有利で真っ直ぐ突っ込まれるのも有利。
前までと違って威圧感も押し殺せて攻撃予測の情報処理も出来る。
つまりは敵が振り抜いた先にはもうイタ吉はいない。
まとった光の軌跡を小イタ吉は離脱。
相手を捉えて真っ直ぐ殺すタイプほどトリッキーなイタ吉の誘導にひっかかる。
尾刃イタ吉は華麗に足元へと転がっていた。
そのまま低い姿勢でコマ回転するように大きく全身を使って斬り裂き滑り走る!
ざっくりと裂く斬撃光が明らかに強烈な輝きを放つ。
だが痛みなどまったく感じていないのかほぼ怯みなしでイタ吉を狙う!
「っ!」
「させるかっ!」
もうひとりの小イタ吉が攻撃の誘導スキルを使い片腕3本の腕を中途半端な位置にからぶらせる。
だが……すぐ次が来る!
しかし尾刃イタ吉含め全員が体制を立て直すには十分。
凄まじい猛連撃に3匹で斬撃を返しながら避ける。
互いに無傷と言えない攻防。
当然私がイバラでそのスキを狙いたくさん叩きつける!
……しかし叩きつけた先に敵がいない。
「うわ卑怯だ!」
「俺もやりてえ!」
だが私のイバラは短距離ワープで回避された。
どうも行動の高度な予測が可能でもだからといって私達が対応しきれるかは別というのを見せつけられる……!
また両腕を上げてエネルギーが空にたまる……!
どうやらこの空間の天を埋めないといけないくらい必要な様だからまだ10分の1もいっていないとは思う。
溜めておいたとりあえずの火魔法。
"フレイムボール"!
うわ火炎球が音速を超えた弾丸のように飛んでいった!?