千五十一生目 六腕
味方回復中。
枠が5つあるため一気に広域化せずとも治せる。
結果的に濃度が高まりぐんぐん生命力が治療されていく。
一方全てのエネルギー供給源を絶たれた魔王ラキョウはというと。
「何故だ……! 何故勝っていたのに、我の力が絶たれている……!! ウグ、アゴォ……!」
「諦めろ魔王ラキョウ! 後はお前を斬る!」
「お前の敗因は、全てのつながりを断って、予測外にあまりに脆かったからだ! そんな"無敵"は……あまりに脆弱過ぎる!」
「莫迦な莫迦な莫迦な……!! こんな、ガガ! 我の存在意義が……!」
激しく身悶えしだした魔王ラキョウ。
その固まった粘体じみた肉体を全身かかえるように動きさらには玉座から転げ落ちる。
これが王たるものの最期なのか……?
「オガガ……!」
「グレン! トドメをさせ……! さっきと同じことにはさせるな」
「ヌグ……き、消え……!」
「攻撃は防ぐ、走れー!」
「我が……使命も果たせぬまま……!」
「うおおぉー!!」
「そこだっ!」
みんなの掛け声の中そこそこ生命力は治ったグレンくんが輝く勇者の剣を掲げ駆けていく。
そうか……今ならなんとなく分かる。
あの剣の真なる力は。
「グレンくん! その剣は世界の概念を書き換えるんだ! 相手が同じ次元に来るまで引きずり込んじゃえ!」
「やあっ!!」
グレンくんが刃を振り下ろす。
転がっていた魔王ラキョウに強烈な一閃。
凄まじい光の火花と共に本来は届かない位置にある次元の向う側にいる魔王ラキョウに刺さり……
グレンくんが引き抜くように素早くスライドさせる。
それと共に魔王ラキョウの周囲が突如ひび割れ……
光を帯びて……割れた!
激しい破損音があったわりに見た目は何もかわらない。
しかし今の私ならわかる。
今ので次元の壁が破れた!
「みんな! 今だ!」
「やあっ!!」
グレンくんは返す刀で見えないけれど理解できるようになったその刀身でラキョウを切り裂く。
私が真っ先に飛びかかり回転しながらグラハリーのような姿で飛び高速で爪をえぐるように斬りかかる。
貫くように敵を吹き飛ばした!
「グハッ!? 莫迦な!?」
「「行くぜ!」」「ってな!」
「なるほど……死ね」
イタ吉3体が回りを取り囲み一瞬で通り過ぎたと思ったら鋭敏に引き裂き切り裂いていた。
さらにダカシが小剣を口に加え両手全力で復讐刀に力を込める。
悪魔の魔力が紋様とともに這い寄り満たされると共に振り抜く!
大きな斬撃が魔王ラキョウの身体に入りダカシが通り過ぎると共に吹き飛ばした!
「ググゥ! 止めろっ!」
「任された!」
「我の意思が消えてしまったら……!!」
インカは反対側から駆ける。
全身に光をまとったかと思うとそれが先端へと濃縮。
かなり高度な技術により輝く先端に……魔王ラキョウを受け止め刺す!
さらにテンポ良くほうり投げた!
「今のは、今までの中で1番手応えがあったぞ!」
インカが私のそばに駆け寄り鎧だらけの尾をそっと触れさせる。
私も軽くお返し。
十二分私達には心が伝わる。
「ググ、ガガ、アアアアアアァー!!!」
「な、なんだろう!?」
「狂ったのか!?」
突如またしても大きく苦しみだした。
こいつはこれが多いがだいたいこの後ロクなことにならない!
私は真っ先に距離を取りながらイバラを何本も伸ばし――
「ガアァッ!!!」
「「うわーっ!?」」
突如凄まじい圧力でイバラごと私の身体が吹き飛ばされ景色が白色に染まる。
今度は何なんだ……!
「み、みんな……!?」
「だ、大丈夫だ!」
「何が起きた?」
光はすぐに収まる。
見た目大きな変化があったわけではない。
ただ……魔王ラキョウの様子が確実におかしい。
先程までとは違い動きが固まっている。
代わりに全身の筋力が異常にうごめきところどころ筋肉以上にぼこりと膨らむ。
そして……
「ガアアアアァァ!!」
「うるせっ!」
「くっ」
まるで理性の感じられない叫び。
同時に体色が代わり赤く染まる。
そして……腕が膨らんだ部分から生えた!
計6本のただ相手を殺すために先端を固めただけの腕。
指なんて用意すらされておらずただ破壊の衝動のまま動く存在。
頭らしき部分に目を含む感覚器官などなく。
身体は赤く輝くだけで果たして内臓すらもあるか怪しい。
だがたしかに感じるのは激しい殺意。
圧倒的な破壊の心。
理性的な感情からの怒りですらなく。
その踏みしめる脚は今にも私達に飛びかかってきそうで。
彼の背中に大きな円の光と燃える炎のような光がうまれた。
く……"観察"!




