千四十九生目 鼓動
大きな光点に近づいて見えたのは私の死後。
みんなの致命的な傷はしっかり塞がっている。
よかった。
景色の時は止まっており先程聞こえた叫びの時らしい。
みなが敵の方を見つつも私に目線をよこしている。
私を斬り裂いた刃は消えていてグレンくんが私を支えている。
私はまあ……死んでいる。
魔王ラキョウは疲れのあまりに倒れそうだ。
本当にもうひと押しなんだが……
私がいかなくともすでに勇者の剣に力はある。
もしかしたら勝てるかもしれない。
けれど私は……
あそこに戻りたい。
そしてみんなと戦いたい。
みんなにこんなつながっているのも嬉しいし……
私自身の願いをみんなのつながりによって後押しされて。
まだこの世界にいてもいいと言ってくれるのなら。
これほど幸せなことはない……
[行くぞ! 覚悟を決めろ!!]
[どうなっちゃうかな? わたしがなりたいのは……]
そう。アインスが思う通り私がなりたいのは。
みんなと共に生きること。
世界に生きる意味を答えにいきたい。
私が神になる覚悟を。
概念としてこの星のみんなとつながる覚悟を。
みんなを助け共に生きる覚悟を!
光へと一気に飛び込む!
最後に流れ込んできたのは今の映像からほんの少し進んだ光景。
そして声。
私の身体を抱えたグレンくんが流した顔からの血。
それは水滴のように私へと……落ちた。
『もう……大事な相手がいなくなるのは嫌なのに……!!』
……見えた!
少し恥ずかしいが強烈なつながりの力。
彼の望み。
私の3つ目以外に存在する心にある目で視えた。
グレンくんの声は私に鼓動を感じさせる。
強い生命の波動。
グレンくんだけじゃない……
この場にいるみんなも。
さっき聞こえたみんなからも。
熱い鼓動を感じる。
突入だ!!
意識はこの現実世界に吸い込まれた。
再び時は動き出す。
しかし私誰時点なんだ。
第3者視点でみんなのことを見ているからこれ"鷹目"か?
私本体はまだ目覚めていない。
意識はあるのに。
ならばやることは1つ!
やああぁぁッ!!
(ウオオオォッ!!)
(イヤッホーォッ!!)
「え?」
グレンくんが真っ先に気づく。
私の身体に起こった変化に。
私が遅かったがゆえにありえない変化に。
ドクン。
「うん? 今の音……?」
「な、まさか妹!?」
ドクン!
鼓動が私の身体を揺らし強く景色にすら一瞬の揺れが起きる。
「なんだ……! 生きていたのか……?」
「ウグッ……止めを刺したはず……なぜ!」
(ほら、もっと気合入れろ!)
ウググ……! やってるって!
やったことなんてないから難しいんだ!
(いけるよ! みえたんだもの! このじょうたいからの……)
うん。わかっている。
私の身体が鼓動を打つたびにどんどん身体が浮かび上がる。
不可思議な身体の起き上がりをしている……
身体を動かせるわけじゃないから制御できないのだ。
グレンくんから少し離れたところで……
目覚める時。
「転生……トランス!!」
光が発せられ私の全身は覆われる。
覆われる形は……四角形。
内側から見たらまるでさっきまでいた異質世界。
そして……どこからともなく来た力が熱く全身を焼き払う!
熱いのに辛さや苦しみなどはなく全身に力がみなぎる。
その全身は今なくなったのに。
それでもまだ見える。
感覚はある。
私の焼き払われた中から出てきたのは……神格。
先程中身は使ったはずだが急速にチャージされていく。
私が見つけたつながりの力たちだ。
光がたくさん集まって今神格は器として満たされる。
それが1つの大きな宝石のように形を変える。
まるで濃縮された姿。
そしてその宝石中心に繋がりの力が……概念の力が形作っていく。
私が望み望まれる。
そのための姿に……
今トランス!
私は漲る力をそのままに再び着地する。
少し視線がネオハリー時より上がった?
鬣が長いせいで長髪っぽくなっている他関節が多少ニンゲン寄り……
他はホリハリーと似ているような……むしろシンプルになっているような?
私の胸には先程の宝石……神格が形づいた赤いものがしっかり埋まっている。
細かいことは後回し。[ログ]のチェックをしている余裕もない。
"観察"!
[魔王ラキョウ Lv.65 比較:とてもとても強い 異常化攻撃:不可逆の即死 危険行動:絶対支配王剣]
良し。データが見えた。
ならば勝てる。
行こう!




