千四十七生目 繋道
ひとしきり蒼竜のどや顔が脳裏に浮かんだ。
優先順位をつけただけで死にたいわけではなかったし生きて帰ったら蒼竜に拳を叩き込もうそうしよう。
なんか互いに損しないように伏せたカードで調整しつつ堂々と恩だけ売るかのような態度に腹がたったのでそうしよう。
次の光点と重なる。
『あの子たちが元気でありますように』
『ただ息災であれ。それだけで良い』
[ママだ! パパの声も!]
[母さんか、それに父さんも……こうなると今息災とは真逆の状態なのが申し訳なくなるな]
母や父の声も……これってやっぱり絆なんかのつながりなのか?
次の光点また現れる。
おそらく次もつながり……重なってと。
『姐さん、俺様たちのために働きすぎてないと良いが……』
『『姐さん……!!』』
これは……"無敵"の可能性をしっかり見出した相手だ。
[ガラハたちだな。ガラハ大工頭領で元ゴロツキ、もう18になったんだっけか]
[アノニマルースですっごくはたらいてくれているよね!]
最初の出会いは最悪だったがその後しっかりとしたつながりを育み今ではアノニマルースを支える土木建築をしている。
やはりこの光……そして声はつながりだ。
私に流れ込んでくるみんなの力そのものなんだ!
[次の光だ!]
[つぎはダレだろ〜!?]
私は次から次へと光へと触れて重なる。
声が私の中に流れ込むように……
『アノニマルースででら働いて、故郷んみんなに仕送りせんと!』
『彼らをしっかり鍛えて、死なずに帰ってこられるようにしないとね、この場所に』
『またお祭りってやつするのかなあ、楽しみ』
『ここに来て良かったねえ』
『鍛冶もとりあえず終わったしモフらせてほ』『離れたままあの山に帰ってないが、そろそろ帰ろうかな……もうニンゲンはいないだろ』
『ローズさんにこの研究結果みせたいなあ……』
『あやつら、わしより先にくたばらんといいがな』
『やっぱり巣……じゃなかった家が1番』
『もらった武器、そろそろ変えどきかな……? いや、鍛え直せば……』
『ああ、久々にまたあの森の迷宮にいってみようかな……白い先生はもういないらしいけれど、最近は違う先生もいるって聞くし』
『あの時、死なずに良かった。今でも鉄を打てるのは、喜びだ』
『アノニマルース……良い土地を作りになられた。これには光神様も思わぬ喜びを……いや……むしろこの変化も、光神様の導き手……?』
『うわっ、勇ましい像だなあ、ダレの像なんだろう?』
『っイテテ……ローズ、ありがとう、私達の代わりに今も戦っていてくれて……私は少し傷を治さないと……』
[アノニマルースの奴らや……そうじゃないのもいるし……もっと、もっと広い範囲でどんどん光と声が!]
これが……つながり……!
[ただつながってるだけじゃないんだね! チョッキューのも、そうじゃないのも、たぶんわたしがしらないあいても! いままでのみんなが、このせかいのみんなが! 声になってわたしたちに!!]
なんだか移動する速度も駆け足になる。
力がこもり次々と光へと飛び回って。
私自身に明確な変化があるのを自覚しだした。
熱い。心しかないがとても熱い。
力の熱さ。声の熱さ。それに……命の熱さ。
[2度も落とした命……もう1度拾えてもおかしくはないよな?]
[ゴーゴーつきすすめー!]
『また、あの強敵と戦いたい……』
『我が軍の戦力は再び整いつつあるしプリンセスたちも育ってきた、彼の英傑殿にも見てもらいたい』
『戦ってわたしは生きていた、だからまだ負けてないんだから!』
『嵐のような敵だった。もう会いたくはないが……生かされたのだろうな』
『我が心、1度の折り目で砕けるほど脆くはない。例え再び目から毒素を流し込まれようとも、再戦の時が愉しみだ』
『アノニマルースよりも外の方が性に合ってらあ、けど、また次に行くときまでには腕を磨いてないとな』
『くそっ、とっ捕まったのはアイツのせいだ……! カエリラスは今どうなっているんだ!?』
『私たちは。気に入ったのだ。久方ぶりに。あの子にも。気に入られるのは。そうないだろう』
『我らの、母、我らの、神のつがい、日々、祈り、捧げる……!』
[これが……繋がりの力なのか! なんて力だ、うっかりすると飲み込まれそうな……戦意や殺意それに怒りすらもあるのはなんとなくわかってはいたが……!]
[ネガネガにおしつぶされないようにしないと!]
呪いと呪いは紙一重。
それは強烈な力に違いはない。
良さも悪さも熱に変わっていかないといけないのか。
例え良いと思った繋がりですらそういう風に変わって行く可能性が神にはある。
まだ神ですらないのに心だけの私にはそれを変換して熱に……力に変える作業が大変だ。
衝突するネガティブとポジティブで押しつぶされないようにしつつ互いにぶつける!




