千四十六生目 真意
死霊術師見習いとしての技術はこの異質空間でも活かせる。
ならやることは1つ。
この感じる光に向かって移動するだけだ。
感じる光のポイントは私の魂が必要と求める先。
何かあるはずだ。
[勇者の剣に神の力を異常なほどに満たせたねえ……死に際の行いとは言え何だったんだろうか?]
[まだしにきってはないかもよ! たぶん!]
ドライが話すことももっとも。
というより理論は組み立てることは出来る。
ただ答えがおかしいというだけで。
[んん? そうなのか?]
蒼竜から借りていた力は使い果たした。
なのに勇者の剣は神の力を凄まじく受けていた。
だとしたら私は神の力を元々扱えた……ということになる。
[ええー!? おかしいよー!? わたしは神さまじゃないよー?]
[……ま、でもだとしたら説明がつく原理もあるな]
うん?
なにかあったっけ。
[まずは蒼竜の神格に関するヒント。器でしかない神格は空でその時を待たねば意味がない。けれど同時に世界に認められた証で、それを持ち奇跡を起こすことでなんとかなると。もうひとつは少し前に神力をほぼ使い切ったさい、少ししてから蒼竜へ神力を受け取りに来たらなぜかやや増えていた。ここらへんだ]
あ……そうか。
そんな単純な話なのか。
神格は……神の力の器……だったのか!
[え? どゆこと?]
["私"は神使としてなかば勝手に……そして必要として蒼竜に認められ成った。もうその時点で神の見習いみたいな扱いだったんだ。黙っていやがったな!]
そして溢れ出た神の力がマントのほうに勝手に補充されたと……
私が無自覚だったとして最後に神の力神格1つぶん一気にぶん投げた。
今まで節約して使っていた借り物とは比べ物にならない純正品。
それを受けたらさすがの勇者の剣も一時的にきちんと目を覚ますわけだ。
どれほどの差があるかだなんてちゃんと調べてはいないけれど。
[なーるほどねえー、でもなんでいきなりつかえるよーになったんだろ? 今までそーいう感覚ぜーんぜんなかったじゃん?]
[やっぱあの時強く思ったからじゃねぇかな。自身の神力に感覚はなくても、蒼竜の神力を引き出す感覚の延長で出来た。それをやれたのは間違いなく、"私"が多少壊れようともこの世界で生きる奴らを生かそうと、そう願ったからに違いはない]
望み……か。
そしてその望みが結果的に奇跡を導き出した(
奇跡は望みを積み重ねた先に実るもの。か。
神力とは……なんなんだ。
神様の力というのは間違いないだろうけれど。
概念の力として使えるのはわかるが……もともとどこから来る何の力なんだ。
……いやこれもそういえば今までの話をまとめればなんとなくは推測できるかな?
とりあえず光点があるところまで移動し終えた。
この場所に私の意思の位置を重なり合わせる。
『戦士たちよ、無事に帰ってきますように』
今のは……?
[皇帝の声っぽかったな]
[つぎのひかりがあるよー!]
ふうむ。とりあえず次々移動しつつまた考えを巡らそう。
神力に関しては……神というものを構成する力に多くの他者が関わっているということをホルヴィロスから聞いた。
そして信仰……つまりその相手を様々な形で思うはずの心や願いが多くの変化で肉体にすら変化があったのがグルシムだ。
神は生まれつき存在として成るものもいれば……
ナブシウのように誰かからの強い影響で変化するものもいる。
そして畏れられて成り上がる災厄みたいなものや……
世界を形作る生きる地となり無意識の下に想いを募らせられる者もいる。
そしてそのたくさんのつながりが交差する先こそ神。
存在を変質させかねないほどに強くそしてひとつひとつはあまりに小さく脆いそれ。
神とは概念。
そして概念とは織りなす多数の想い。
ならば神力は束ねられた繋がりの力。
[それは信仰とか畏怖とか感情とか、形は多数あれど要は生きているだけで何らかの形であるそれだよな?]
[……あれ? それじゃあもしかして、わたしがそーりゅーのつかいになったときには、もうそーりゅーにたくさんパワーをわたしていた……?]
う……そうか。
蒼竜がやたら蒼竜神力に関しては気前よく渡してくれると思っていた。
私が蒼竜のことを善悪関係なく思ったりなんなら帝国の土を踏んでいるだけで。
それはほぼ自動で蒼竜の力になるうえ……
しかも私が蒼竜から借りた力で活躍すればするほど自覚や知識なんて関係なく私を通して……
全部蒼竜の力として送り込まれていたのか!
私を通し私と関わる多くのつながりは……
ほぼそのまま上前としてほぼ持っていかれていたんだ!
まあ私には使えなかったら問題ないんだけれど!
そうか……それが神使なのか!
言えばいいのに細かいこと全部!!




