千四十三生目 死壊
ふたりで突っ走ってバカみたいに真っ直ぐに振り抜く。
ほんのわずかな1瞬で全員がありったけの妨害と抵抗と偶然の積み重ねで生まれたあまりにも時間的猶予のない一瞬のきらめき。
それを今……ものにした!
「莫迦な……!」
「「"次元斬"!」」
右大動脈を勇者の剣にある根本ナイフ部分ごと縦に斬り裂く。
エネルギーの流れを断ち切る!
斬り裂いた傷跡から光が溢れ出す!
同時に外部魔王から魔王の椅子へのエネルギー供給が途絶える。
よし。2本目撃破!
残りは中央下部1本!
「なんと……なんとなんとなんと……!!」
「さあ、のこりは1つ! そしてお前だ! 魔王ラキョウ!!」
魔王ラキョウは明確に怒りを顕にし拳を椅子の肘掛けに叩きつける。
グレンくんが啖呵をきりながら私と同時に追撃を避けるために下がったのだが……来なかった。
ずいぶんと様子がおかしい……というか完全に怒り心頭。
こうなったら何が来るかわからない。
「全員、敵の動きに備えて! 何か来る!」
「例え何が来ようと避けきるだけだぜ!」
「所詮は怨念と過去の存在が生み出した存在。時代に取り残され消えろ」
「……」
イタ吉たちが煽りダカシは勝利宣言。
しかしインカだけは低くうなるように警戒していた。
手負いの獣の凶気を1番理解しているゆえか。
グレンくんも感じる気迫に圧されてかすばやく勇者の剣"次元斬"再展開を急いでいる。
私もマントを"鷹目"で見る。
残りの神力は半分とちょっとか……
まだ行け――
「え?」「「げ」」「うわ」「ッ!?」「あっ」
――なんだ。
今何が起きた。
普段のように空間の裂け目が起きて刃が飛び出てくる。
それが起こっただけだから避けただけ。
なのにその避ける先がなかった。
ありえないほどに……空間の裂け目が全てに展開した。
複雑な枝分かれした大きすぎる刃たちがそれぞれ組み合わさるように同時展開し。
その隙間がなくなるまで埋め尽くされ。
私達はあらゆる守りすらも突破され。
全員貫かれた……!?
「カハッ……!?」
「……はぁ、ここまでの力は、使いたくなかったのだがな。我の送られてきた力がやっとここまで来られて放てたほどに摩耗するというのに。そしてそれ以上に……この力は興醒めになる。まさか生きているとは驚きだがな」
私達は生命力という命の値すらほぼ全部削られ物理的腹を貫かれあまりにも重要な臓器を破壊されている。
あんまりにもあんまりなら痛みで逆に意識がはっきりしている。
全員意識がはっきりしている……尾刃イタ吉は別だが。
なぜこの状態でも生きていられるのか。
それは死をハックの加護が身代わりしてくれたからだ。
私の場合はまだスキルもあるが……ただこれは。
このままだとせっかく生き残ったチャンスが活かせずに死ぬ。
「ぐぅ……うう……!」
「魔王……め……!」
「見えなかった……修行が……まだ……」
「ま、まずいぜ……!」
「は、早く回復を……!」
「ありもしないわずかな希望にすがり、勝てそうだなどと思ったところをじわじわと絶望に落とすのが良いのだが……2本もわけのわからん力で絶たれては、我の生存意義から遠ざかる。さすがに阻止させてもらった。ハァ、つまらん」
魔王ラキョウの生存意義。
勇者たちの殲滅。そして地球への帰還。
達成困難にさせられるまえにさすがにかなり疲労した様子を見せる程度には全力で私達を攻撃してきた。
あまりに早くあまりに無慈悲に。
そしてひどくその自身の行為に落胆していた。
魔王ラキョウの生存意義とは別に享楽を自分で潰してしまったのがイヤだったらしい。
こっちは血を吐いているってのに……!
どうする……"ヒーリング"では回復値が届かない。
いくらなんでも臓器の破壊させられたみんなの死を避けさせる力はない。
やるとしたら聖魔法"リターンライフ"。
それと同時に刃からの脱出に空魔法"ミニワープ"。
「認めよう。貴様らは勇者だった。だからなんだ、という力の差があるだけでな。そこを特等席として見ているがいい、地球へ向かうさまをな」
魔王ラキョウが片腕を上げると急に景色が変わる。
コレは……外の景色?
もしや魔王が今いる?
クッ! 身体が刃たちに食い込み挟まれ動かせない……!
暴れようとするとより身体が痛む。
もう四肢のうちどれが無事なのかすらよくわからない。
それまで……それまで私の意識が持てば!
「おお」
「ガ、ンッ……!」
「余計なことをしないで貰いたいな。まだ生きているのか……」
魔法が隠蔽していたのにバレた……!?
なんという探知能力……!
さらに追加で槍を刺されしかも魔法が封印された……!
魔力がつくるたびに槍に吸われる……!
ラキョウは頭痛でも耐えるかのような表情で顔を手で覆う。
私は"頑張る"でギリギリの生存。
これが最後の命綱。




