千三十九生目 次元
ゼロエネミーなら勇者の剣すら腐食させる攻撃に耐える。
それを利用していけばいける!
「ただ、前世代の勇者の剣がなぜ錆びついていたか、それはわかったな……」
「そうだ。勇者は魔王を滅せれてなどいない……! 多少の事故はあったが……命を使い果たした」
「多少の事故……力が別れてとんでいったっていうアレかな」
宝石剣。
その正体は魔王の力らしい。
昔勇者たちにより力を分散させられた。
勇者の剣が錆びついた勇者たちはかわりに命を賭す次策をうった。
そのおかげで魔王は今まで復活していなかったわけだが……
「だが、我は違う。我は魔王ラキョウ……貴様らの時間稼ぎにこうして付き合ってやったのも、もはや勝つ必要などないからだ」
「なっ!? どういうこと!?」
光魔法"ヒーリング"でみんなをある程度治すことはできた……が魔王ラキョウはそれも見越していたか。
なんという余裕の態度……!
「もう勝っている。そのうえで遊んでいるにすぎん。なにせ散々面倒かけられた相手だ、次元の違い、格の違いを見せつけたうえで踏み潰さねばな」
「ケッ、いけすかねえ。本当にもう勝った気でいやがる」
なんなのだろうこの胸のざわめきは。
単なる力の差がある……というだけではない。
最初攻撃したときの奇妙な感覚がいまだ頭の内に残っている。
イタ吉たち含め全員が再行動。
また球体が出てくればウェーブビームをゼロエネミーで受けて……
3つの大きな動脈へ駆ける。
道を阻むようにあらゆる刃が飛び出してきてもはやみなある程度受けるのを覚悟で歩みを止めない。
大量の刃たちはもはや私達に避けさせる気はないからだ。
防ぎしのぎ競り合って確実に当てに来ている攻撃たちを抜け……
「「そうらっ!」」
まずイタ吉たちが左動脈に斬りかかる!
太いパイプのようにつながるそれに爪と尾刃の連続斬り裂き!
「「……んあっ!?」」
イタ吉たちは斬った。
確かに切り刻んだはずでまだまだ破壊にはいたらないはずとはいえ……
何故かそこに傷は残っていなかった。
「今の感覚……さっきと似たような……?」
「なんだ、浅いのか!? なら!」
かわりにインカが突撃接近。
インカの身体にある針変化鎧もウェーブビームの餌食になりかねないので……
ゼロエネミーがちゃんと大盾モードで塞ぎつつ。
無理やり次元の刃ごと突破し左動脈に飛びかかりそのまま空中縦回転。
勢いをつけて……尾で大きく斬りつけた!
重い刃での1撃!
「……なっ!? おかしい、手応えが変だ!」
凄まじい光が走りしっかりと入ったのを見た。
部位の生命力問題で切れなくてもおかしくはない。
しかしなんというか……
見ただけの部分ではそもそも斬ったかどうかすらあやしいレベルで傷が残っていない。
それどころかにおいや音も何かを断ったときのものの感じはしない。
1番実感しているのはインカやイタ吉たちだろう。
「いくらなんでもおかしいぞ!」
「グゥハハ、ゲゥハアハ!! どうだ? 分かったか、これが我とお前達の差そのものだ!」
「グワッ!?」
ダメ押しと言わんばかりに空間からの飛び出すドリルで突き飛ばされインカが吹き飛び下がらせられる。
重装甲の中にいるインカごと傷を負わしている……
やはり威力がさきほどと段違い……すぐ"ヒーリング"!
「理由はわからないがとにかくヤバイ!」
「何度斬っても変わらないんじゃあ、悪魔の力も意味がないぞ……」
「対魔王の力を使っているのに……なんで!?」
「確かに勇者の力は厄介よ。唯一下賤の輩が我に刃が通りうる可能性……だが、前の勇者も、貴様らも、その程度の力では本体である我に届かせるには、遠い」
本体……! やはり何かラキョウが憑依した元がありそれこそが魔王の本性……?
もはや当然のように空間から連続して刃で切り裂いてくる!
話を聞いている間も連続バク転し迫りくる刃たちから逃れていた。
私がしっかり耐えないとここのメンバーは崩壊しかねないから生き残り重視!
「刃が届くのは遠い……次元違い……まさか本当の意味で!?」
「ほう、思ったよりも今回の勇者はそういう思考が働くようだな。まあ、だからといってなんだ、という話でもあるがな!」
ひっそりグレンくん背後から出ていた球体からのウェーブビーム!
それを大盾ゼロエネミーで防ぐ!
私が"鷹目"だのなんだのとで常にチェックしているのを甘く見てもらうのは困る!
「あ、危なかった!」
「ふん、勇者の剣と言う希望を完全に潰してやろうと思ったが……まだ足掻くか」
「絶対に、諦めるか!」
そう。突破口を見つけねばどちらにせよ私達は大変なことになる。
ならばあがくまでだ!




