千三十八生目 波線
魔王ラキョウとみずから名乗ったその敵。
当然もとのラキョウとは似ても似つかない。
そもそもラキョウの口調とも変わっていてまさに新しい意思なのだろう。
ただ純粋に目的を果たすだけための意識。
破壊の権化。
間違いなくあのサイズで魔王の力を得ている……!
「どう攻めたものか……正直先ほどと比べるまでもなく威圧感があるな……」
「こういうのの定番は、あの繋がったラインを破壊すれば!」
「魔王の力が送られてきているあれを断ち切れば……たしかに」
「それならそうするか!」
作戦会議。
ダカシの話にグレンくんが明らかに前世の知識をかじった感覚で答え私が補足。
そしてイタ吉は早速動き出す。
「グハハハァー!! 足掻け、足掻けェェ!!」
魔王ラキョウが椅子の上で笑うと共に一気に多数の空間裂け目が!
動きがアクティブ的なのはともかく数が私達を一気に襲ってきた!?
当然1番理解が遅れたのは私で。
ワンテンポ早くみんなは回避をしようとしている。
私もすぐに"防御"を!
「「うわあぁっ!?」」
全員のところに飛び出る回転するノコギリ刃。
あらゆる方向から切り刻みが来る!
鎧! イバラ! "防御"!
刃が飛び出してきて全身が斬られる!
「ウググッ……!」
当然全てが刃ではない。
身をそらし無理やり脱出。
防いだ……のにこの身体から走る痛み!
「どうした! 勇者の力があってもその程度なのか!? まあ勇者の剣にいたっては使い手がまだまだ未熟、前の主の2の舞よ!」
「な、なにおーっ!」
周りを見渡せばみんながみんな大きく怪我を負いながら立っている。
イタ吉たちは大きなイタ吉を犠牲にして他は無傷なため復活させ中。
グレンくんは勇者の剣で必死に切り払ったのか肩で息しているが1番傷は浅い。
ダカシは身体のあちこちがザックリいっているものの悪魔の紋様が伸びて修復中。
インカは身体から生やしている鎧が切り裂かれていて意外に中のインカは体力使っただけで傷が浅い。
なのでグレンくんがみんなの言葉を代弁するように叫んでいた。
「貴様のような人では存在を握れても真意を理解できぬ。剣として打たれ剣として使うことしかできぬ。理解可能なほどに導く手もない。故にここに尽きる、前時代勇者同じように」
「だったら、お前は前の勇者と同じく斃される運命だ!」
「グァハ、ガゥハハ!! 無知なる者、魔王の……そして勇者の記憶を知らぬ故の蛮勇か」
グレンくんが話を引き伸ばしてくれればくれるほど全員に"ヒーリング"が回せる。
斬られた面々はさきほどまでとは明らかに威力の違う攻撃で生命力が吹き飛んでいる……
光魔法"ヒーリング"を全体化しつつかけて……
まだ話が伸びてくれよ……!
「なんだと……!? 魔王ラキョウ、お前、前魔王の記憶になにを見た……!」
「教えてやってもよいが、それではつまらん。その身で味わえ!」
魔王が片腕を上げるとグレンくんの上空に空間の裂け目が。
本人が先に気づき刃を避けようと転がる……
しかし顔を見せたのは刃ではなかった。
大きめの丸い暗い赤の光球体が宙に浮き現れる。
今までとは違う質のものだ……!
おそらく今までの会話から察するに……
「グレンくん!」
「これは、もしや……うわっ! 鎧が錆びた!?」
グレンくんに向かって球体が突如ウェーブビームを放つ。
グレンくんは直撃を避けたものの軽鎧の1部にかする。
だが……その鎧部分が急激に腐食……つまりサビたのだ。
「そうか、これのせいで勇者の剣が錆ついていたんだ……!」
「うわっ、えっ、なん……あ、把握した、俺の刃も気をつけないと……」
尾刃イタ吉が目を覚ました。
周りの小イタ吉と情報共有を受けさっと自身の尾刃を隠す。
確かにあれは危険だが……
「さあ! その忌々しきブレイカーを錆びつかせてやろう!」
「ブレイカー……? 勇者の剣のことか? ってうわわっ!?」
「させない!」
魔王の言葉は気になるがゼロエネミーをとばす!
ウェーブビームとグレンくんの間に降り立ち大盾モード!
ゼロエネミーでグレンくんを守る!
「えっ!? そんなことしたらローズの剣が!」
「大丈夫! だって……」
ウェーブビームを浴びきり球体がエネルギーを使い果たしたのか消滅する。
しかしゼロエネミーはまったくもって平気。
威力としてそこまで強くなくさらに効果が腐食ならば……ゼロエネミーには効かない。
「ほう」
「別に見た目だけが水っぽいだけじゃないんだ。ゼロエネミーはいろんな性質を同時に得ているみたいだからね」
「すごい……これなら!」
魔王ラキョウは余裕を崩さない。
詳しい理屈はわからないがゼロエネミーから行けるという意思が伝わってきたのでそのまま行使しただけだ。
本当に信頼できる相棒だ。




