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千三十四生目 粘体

 ドラーグから"以心伝心"を通し視界共有。

 ……これは!?


 見る景色はかなりの上空。

 帝都周囲の地獄山たちが下に見える。

 だが大事なのはそこじゃない。


 地獄の黒きエリアが次々と平原を飲み込んで行っているのだ。

 つ……ついに地獄が帝国を完全に飲み込みだした!


『これは……魔王の力!?』

『魔王、さらに上昇中! どこまで行くのでしょうか……?』


 ドラーグが見上げればそこに魔王の巨躯。

 あんなに大きな身体がすでに天空に……!

 このまま飛び続けるとしたら……本当に行く気か!?


 宇宙へ!?


『ありがとう、視察を続けていて!』

『はい!』


 念話と視界共有を切って……ひと呼吸。


「みんな、魔王が高くなるたびに地獄が地上で広がっているみたい」

「うわマジか、それ後で直るんだろうな……」

「それともうひとつ……おそらく魔王は宇宙へ向かっている」

「えっ!?」


 イタ吉は地獄の光景を思い浮かべ苦い顔をしつつ自慢の速度と3体攻撃で迫りくる大きな微生物たちを引き裂く。

 そして宇宙に対して強く反応したのはグレンくん。

 そりゃまあそうだろうね。


 他の面々はいまいちなんなのか把握できていない様子。


「ウチュウ……ってなんだ? さっき飛んでいけばジ・アースというところにつくっつのは聞いたんだが」

「空の向こうにあると言われる漆黒の世界……だよな」

「ん? 夜空のことなのか?」


 イタ吉は回転する刃の(エフェクト)を飛ばして斬り裂く。

 ダカシがかじった知識を披露しつつ微生物たちの攻撃を的確に弾き……

 インカはそこに文字通り横槍を入れ微生物を突き刺す。


 私も剣ゼロエネミーを念じて回転旋回せつつイバラ叩き電気魔法"エレキシュート"を放ち感電させていく。


「正確にはその夜空の向こう……あらゆる意味で生物の生存が出来ない世界。魔王なら平気かも知れないけれど」

「問題は、その向こうに僕たちの転生前に生きていた星が……地球があるかもしれない。もしこんなのが地球に降り立ったら……!」


 私の話にグレンくんが細く。

 ……間違いなくひどいことになる。

 特に勇者の力がないあの世界では……

 おぞましい兵器を使ってももしかしたら太刀打ちできないかもしれない。


「飛び立てばこっちの世界は地獄に飲まれ、向こうの世界は魔王の力が行使されるから……2つの世界がピンチ……」


 私は思わず苦笑い。

 こんなの笑うしか無い。

 地獄は含めていいのなら3つになる。


 さすがに全員何らかを悟れたらしい。

 というより私の苦笑いがよほどアレだったのか。


「そうか……漆黒の世界の向こう側にお前達の住んでいた場所があるのか……そしてそれに向かおうとしていると。厄介極まりないな」

「なんだかいつの間にか、この戦いが2つの世界を守らなきゃって代物になってんのはわかったぜ……」

「星の向こうにまた別の世界……! なんだか壮大な話になってきたなあ……!」


 ダカシとイタ吉たちそしてインカが合わせて前方へと切り拓くよう突撃していく。 

 合わせて私達も進んでいく。

 みんな心なしかかなり気が引き締まっていた。


 今までも引き締まっていたし少し固まり過ぎかもしれない。


「みんな、気負うことを言っちゃった後で遅いだろうけれど、視野が狭くならない程度にね!」

「ああ、それはもちろん!」

「ローズの言うとおり、どちらにせよ俺たちがやることは変わらない。この勇者の力で、魔王を倒すよ! やあっ!」 


 インカが同意しグレンくんが続けながら勇者の力を振るう。

 すると広がる(エフェクト)に押されるように微生物たちが道をあけた。

 まともに相手していたらキリが無いからこのスキに突撃だ!






 さらに管を通る。

 狭い空間だし私達の知る生物の構造とは結構違う気がする。

 3つ頭の魔王にまともな生物感覚を求めるのが間違いだが。


 タイムリミットはおそらく魔王が大気圏突破するまで。

 それまでになんとかここを抜ける。

 人間大程度しかない通路もそこそこありジャグナーやドラーグは置いてきて正解だ。


「そらっ! わざわざ狭い道を塞ぐなよ!」


 先頭のグレンくんが勇者の剣で粘液生物を斬り裂く。

 普通は無理そうだがそこは勇者の力。

 魔王の力を帯びている敵なら問題なく裂ける。


「気を付けてね。おそらく予想通りなら……」

「うん、勇者の剣を錆びさせるような、そんな敵もいるはず……」


 昔もそういうスライムと会ったが。

 ここでも勇者の剣が使えなくなった原因らしき敵がいるはずなのだ。

 なぜなら勇者の剣は見つかったとき完全に錆びていた……


 実際魔王が勇者の攻撃に無策だと考えるのはあまりに考慮不足。

 向こうもこちらがそれらを考慮しているのも織り込み済みだからこそ前回勇者の剣を破壊されたのだろう。

 気をつけるに越したことはない。 

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